作成日
:2019.05.03
2021.08.31 15:26
報道によると、大手ソーシャルネットワーキングサービスであるFacebook, Inc.(本社:1 Hacker Way, Menlo Park, California 94025
)【以下、Facebookと称す】は、ブロックチェーンベースの仮想通貨を利用した決済ネットワークを構築するために、数十社の金融会社やEコマース企業との連携を試みていることが明らかになった。Facebookは仮想通貨プロジェクト向けの資金調達を模索するなど、すでにProject Libraと名付けられた仮想通貨イニシアチブを始動しているが、現在、同社は、VisaやMastercard、First Dataといった大手金融会社と協議を進めているという。今回、Facebookは、プロジェクトへの出資を募ると共に、パートナー企業として決済ネットワークに参加するEコマース企業の獲得に動いているようだ。FacebookがWhatsAppで送金可能なステーブルコインを開発中であることが知られているが、この一連の流れから推測すると、Whatsappなどの自社アプリケーションだけでの利用に留まらず、パートナーとなるEコマース企業のプラットフォーム上で決済オプションとしての役割を果たす可能性がある。
10億人のユーザーを抱えるFacebookの構想が実現した場合、世界的な仮想通貨受け入れの流れを加速することが期待されている。ある統計では、現在の仮想通貨を取り巻くエコシステムが、約1億人のユーザーで構成されていることがわかっており、Facebookなどのソーシャルメディアの参入は、これを数十億単位の規模に拡大するポテンシャルがあると言えよう。また、Facebookは、決済での利用以外にも、仮想通貨をユーザーへのインセンティブとして活用することが考えられるが、Basic Attention Tokenのような広告と連動したモデルがお手本となるだろう。
このところ、Facebookは、ユーザーの個人情報流出事件が原因となりプライバシーポリシーに関する問題を抱えているが、仮想通貨コミュニティは、これを良しとせず、ネガティブな反応を示している。これに対して、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は、問題解決に向けて継続的に取り組んでいることをアピールしているものの、同氏がどの程度真剣に捉えているかは定かではない。仮想通貨市場への参入により、Facebookは、190億ドル規模の売上が計算できると言われているだけに、今後、同社が何らかの策を講じ、再発防止に取り組むことに期待したい。
release date 2019.05.03
Facebookのプライバシー問題は、2016年ごろから米国や英国を中心とした国々で大きな騒動となっており、前回のドナルド・トランプ大統領が当選した大統領選挙では、5,000万人分の個人情報が政治的な目的で不正利用されたと言われている。これらの個人情報は、Facebook上でよく見られる性格診断アプリなどを介して収集されていたが、当時、同社は、利用規約上でもこのような行為を禁止しておらず、現在、管理面での責任を問われているようだ。その他にも、Facebook上では、個人情報を不当に収集するアプリケーションが溢れており、危険を感じたユーザーや企業によるFacebook離れが進行している模様だ。近年の国際的な金融規制強化の流れにより、仮想通貨を始めとする金融サービスを提供する事業者にはKYCによる厳格な顧客の本人確認が求められるなど、収集した個人情報の取扱に細心の注意が要求されている。そのため、プライバシーや匿名性を重要視する仮想通貨コミュニティにとっては、Facebookの現在のプライバシーポリシーに対する姿勢が受け入れ難い内容となっており、イメージ低下につながったと予測されるが、ここからFacebookがどのように挽回するのか、今後の動向に注目していきたい。
作成日
:2019.05.03
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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