作成日
:2019.01.30
2021.09.21 10:21
米国のボストンに拠点を置く大手投資運用会社Fidelity Investments【以下、フィデリティ投信と称す】が、今年3月にも仮想通貨資産を対象とした新しいカストディ(資産管理)サービスを開始する可能性があることが明らかになった。
フィデリティ投信は、昨年10月、Fidelity Digital Asset Services LLC【以下、FDASと称す】というデジタル資産ソリューションを提供する会社を立ち上げている。関係者によると、カストディサービスに必要となる仮想通貨向けのストレージシステムは、既にFDASが実運用を開始しているという。これについてフィデリティ投信は、ソリューションの立ち上げを目的に、現時点では限定したクライアントにのみサービスを提供しているとしており、今後数ヶ月間で優先順位の高い企業のニーズや意見を積極的に汲み取り、サービスを完成させる方針であることを示している。
なお、フィデリティ投信は、昨年秋、仮想通貨取引とストレージのプラットフォームを構築していたことを明らかにしている。また、FDASとの事業連携を任されるフィデリティ投信の経営幹部のTom Jessop氏は、仮想通貨分野への進出に興味を示す複数のクライアント企業が、信頼できるパートナー選定に課題を抱えていることを明かしている。そしてJessop氏は、クライアント企業が株や債券取引と同様の洗練されたサービスやセキュリティが必要になるとの見解を示し、昨年12月には、企業向けの仮想通貨関連サービスを2019年第1四半期を目処に開始する可能性があるとコメントしている。
今回の発表にあるカストディサービスが、まさにJessop氏が予告したソリューションのひとつだと考えられるが、これとは別に、FDASはクライアント企業とマーケットメーカー(値付け業者)の仲介取引サービスの開発を進めているという。カストディサービスに関して、FDASは当初、ビットコイン(Bitcoin)のみを対象にするとしていたが、後にJessop氏は、イーサリアム(Ethereum)やその他、時価総額上位5番目以内の仮想通貨の対応を検討すると述べている。
これに加えて、FDASは、セキュリティトークンの開発も視野に入れており、Jessop氏は、他社の動向を見てその実効性を確認する意向のようだ。仮想通貨市場の拡大に合わせて、新しい分野での事業展開に舵を切るフィデリティ投信だが、今後はどのような動きを見せていくのか、注目される。
release date 2019.01.30
フィデリティ投信が開始するカストディサービスとは、主に機関投資家向けのサービスで、投資家に代わって有価証券を管理することである。内容としては、取引の決済、元利金や配当金の代理受領、運用資産の受渡し決済、運用成績の管理などがあるが、大口投資家を呼び込むサービスとして期待されている。また、FDASが開発を検討するセキュリティトークンとは、証券としての機能を持つトークンのことである。一般的なトークンがICO(イニシャルコインオファリング)により配布されるのに対して、セキュリティトークンの配布はSTO(セキュリティトークンオファリング)を通して行われる。セキュリティトークンの発行に際しては、米国では、証券取引委員会(Securities and Exchange Commission)への登録が義務付けられており、監査や当局の審査が実施されることから、通常のトークンオファリングよりも投資家保護の観点で優れていると言われている。また、米国以外では、アジアの仮想通貨先進国であるシンガポールでもその有用性が注目されており、シンガポール金融管理局がセキュリティトークンを規制する必要性を示しているようだ。既存の金融商品のように仮想通貨を扱うことが可能となるセキュリティトークンのメリットは大きく、多くの企業が開発を進めている。市場のニーズを先取りするフィデリティ投信の今後の展開にも期待したい。
作成日
:2019.01.30
最終更新
:2021.09.21
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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