作成日
:2018.11.07
2021.08.31 15:22
中国の中央銀行である中国人民銀行は、ICO(イニシャルコインオファリング)など仮想通貨に関する規制を論じた最近の報告書で、エアドロップを厳しく取り締まる方針であることを明らかにした。
China Financial Stability Reports 2018と題された報告書では、昨年から詐欺的なICOが増加していることに触れており、無料で仮想通貨を配布するエアドロップもそれを助長する手段のひとつだとの主張が展開されている。中国人民銀行によると、仮想通貨を発行する企業は、エアドロップを利用して価格を釣り上げた後に、保有するリザーブを販売することで、間接的ではあるが不正に利益を上げていると指摘する。公式の統計では、中国内で2017年10月18日以降に実施されたICOは65件にのぼり、参加者は約105,000人、集まった資金は合計で26億元(約3億7,730万ドル)になることが明らかになっている。
この数値は、同時期に全世界でICOにより調達された資金額の20%を超える規模で、中国市場におけるICO投資の活発さが伺えるデータだと言えるだろう。これに対して、中国人民銀行は仮想通貨市場に対する圧力を強める考えだが、具体的には4つの政策を実施することを視野に入れているようだ。その4つの政策とは、1)法規制に対する違反を厳しく取り締まりながら、市場を規制する立場を強める、2)国内規制のための連携や他の機関との協力を図る、3)機能的な監督基準を策定する、4)積極的に国際協力を求め規制を促進することだという。
以前から国家主導の仮想通貨開発が噂されている中国人民銀行だが、報告書で「政府によって発行されていない仮想通貨は法定通貨と同等の法的扱いを受けない」と言及しており、国家主導による仮想通貨発行のための規制構築に向かっていることを仄めかしている。
release date 2018.11.07
昨年9月に中国でICOが禁止になるなど、中国政府は仮想通貨取引に対して強行策をとっているが、ブロックチェーンや暗号技術、仮想通貨といった先端テクノロジーに対して興味を持っていないわけではない。むしろ、国内企業は、積極的に投資を行っており、中国はアジアでも有数の仮想通貨先進国と言える立場にある。問題は、市場が管理されていないことであり、先日、香港が仮想通貨事業者のライセンス制度導入を検討していることが明らかになったように、中国でも事業者の包括的な統制を望んでおり、それに準じた管理体制を整えることに注力していると推測されている。現状では、主要な仮想通貨取引所やブロックチェーン企業は活動の場を求めて香港やシンガポールに拠点を移してしまっているが、法規制が整備され次第、中国政府の管理下で再び営業が許可されるだろう。巨大な仮想通貨市場を抱える中国だけに、テクノロジーの発展と安全性を両立させるような市場環境の構築が期待される。
作成日
:2018.11.07
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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