作成日
:2018.09.21
2022.01.27 17:43
今年に入り監督当局が次々と繰り出す規制策により、コンプライアンス遵守のためのコストが増加し、ブローカー各社が経営存続に関し危機感を抱いていることが明らかとなった。
今年1月に、取引の透明性と投資家保護を目的をとした第二次金融商品市場指令(Markets in Financial Instruments Directive II, MiFID II)の施行以降、EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation, GDPR)やグローバル外為行動規範(FX Global Code of Conduct)、欧州証券市場監督局(The European Securities and Markets Authority, ESMA)による新たな規制枠組みが矢継ぎ早に導入されたことから、FX・CFD業界では多くの新規制策への対応に迫られている。
更には、これでは不十分とばかりに、世界最大の検索エンジンを運営する米国IT企業大手のGoogle LLC(本社:1600 Amphitheatre Parkway Mountain View, CA 94043 United StatesGoogleからの認証を必須とするプロセスの導入を決定している。業界全体で規制強化の流れとなる中、このGoogleによる広告掲載の認証プロセスの導入は、ブローカー各社にとって今後いかに新規顧客を獲得するか戦略を再考せざるを得ない状況を作り出している。ただしそのような環境下でも、既に広告掲載を希望するブローカーのなかには、Googleから認証を受けるための申請を行っているところもあれば、監督当局に最新の施策動向を探っている企業も出てきている。
)【以下、Googleと称す】は、企業に対しアドワーズ広告を利用する際に、事前に一方、Googleは、ブローカーが掲載する広告コンテンツに関し厳しい審査を適用しているようだ。具体的には、アドワーズ広告の全てのランディングページ(ユーザーが広告をクリックした際に表示されるウェブページ)はGoogleによって事前認証を受ける必要があるほか、掲載ブログやCRM(顧客関係管理)ページ、ウェブ上の様々なページ全てにおいて、厳格な審査基準を満たしている必要がある。また、ブローカーが金融商品サービスに関する広告掲載の認証を得るには、掲載されているコンテンツの文言を全て見直さなければならない。もし、Googleが許可していない文言があれば、認証プロセスに影響を与えることは明らかである。
なお、Googleは広告掲載の認証を与えるか否かについて明確な基準をブローカーへは明らかにしていない。規制当局へのライセンス申請であれば、ブローカーは明確な基準を把握しているが、このGoogleの広告掲載の認証プロセスに関しては不明瞭な部分が非常に多いと言わざるを得ない。また、認証プロセスが、とても厳格である一方、手続きのペースは極めて遅いことから、認証手続きをスムーズに進めるためには、Googleに対しブローカー側からの積極的な働きかけが必要となるようだ。今年はリテールブローカーにとって非常に厳しい年となっているが、この傾向は今後もしばらくは続くことが予想される。
release date 2018.9.21
Googleは、CFD、金融スプレッド、ローリングスポットFX など、投機商品関連の取引形態の金融商品を対象に、限定的な条件下で広告掲載を許可することを発表し、2018年4月から承認申請の受付を開始している。現在複雑な投機的金融商品の広告が許可されている国は、日本、米国、英国、香港、マルタ、ニュージーランドを含む38か国となり、一部の国にとどまっている。また、広告掲載が承認される要件として、現地の金融商品に対する監督当局からの承認を受けていることに加え、その他の法的要件(レバレッジ規制やリスク警告を含む)も満たしている必要があるとされているが、詳細については明確に記載されているわけではないため、現場は対応に混とんとしているようだ。なお、 Googleは2018年6月のポリシー更新で仮想通貨やICOに関する広告の一切の掲載禁止を発表しており、広告規制を強化している。CFDやFX、仮想通貨を提供するブローカーを取り巻く環境は、ますます厳しくなると予想される中、これに対しブローカー各社はどう対応していくのか、引き続き動向を注目したい。
作成日
:2018.09.21
最終更新
:2022.01.27
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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