作成日
:2017.05.16
2021.08.31 15:24
連日のビットコイン高値更新に伴い、最高の取引タイミングを経験しているビットコイン投資家が多い中、長期ビットコイン所有者にとっては懸念すべきトレンドが見えている。それは、仮想通貨市場におけるビットコイン占有率の低下だ。
現在、仮想通貨市場全体でのビットコイン占有率は、史上最低値の49.9%にまで落ち込んできている。市場2位のRipple XRP【以下、XRPと称す】時価総額が115億ドル、市場3位のEthereum 時価総額が85億ドルと軒並み伸張していることで、占有率の低下が進んでいる。
XRPは、4月初旬時点での市場評価額は15億ドルであったが、この1ヶ月で前月比約7.7倍もの時価総額を増やしていることになる。直近でXRPは1トークン0.4ドル近くまで高騰、現在は0.3ドル前半で推移している。
今回のXRP価格高騰の背景として、Ripple社が数日前に、現在のビットコインやEthereumでのマイニングプールが持つ問題点を指摘すると共に、XRPはビットコインよりもさらに分散型システムを生かしていくというプランが発表されたことにより、市場での期待が高まっていることが原因のようだ。
Ripple社 最高技術責任者のStefan Thomas氏は今回のプランについて、次のブログコメントを発表している。
私たちが実現しようとしている鍵となるベンチマークは、ビットコインよりも分散化されたネットワークにするということです。このブログを執筆時の現在、ビットコインはその51%がたった5つのマイニングプールによってコントロールされています。これは、5つの最大のマイニングプールが結託することで51%攻撃を実現できてしまい、二重支払いとなる取引の順番を任意に覆すことができてしまうということです。
イーサリアムについては、この数字はさらに低いものとなっています。たった3つのマイニングプールがネットワークの過半数を占めており、これらが結託することでネットワークの乗っ取りが可能となってしまうのです。ビットコインの分散化レベルに達するには、信頼されているバリデーターはたった16だけ必要となります。さらに数を増やせば増やすだけ許容できる失敗の数も増えます。言い方を変えると、リップル・コンセンサス・レッジャー(RCL)は他のパブリックなブロックチェーンの分散レベルに匹敵するだけでなく、それを超えることになるということができます。
Stefan Thomas, CTO of Ripple
- Ripple officialpage より引用
release date 2017.05.16
ビットコインとXRP、どちらも仮想通貨という同じカテゴリの競合通貨ではあるが、それぞれ特徴や仕組みは異なっている。
ビットコインは、ピア・トゥ・ピア(P2P)型といって、複数のネットワーク参加者(ピア)同士が対等な関係で通信を行う仕組みにより、取引が行われている。そして、各ピアが情報を共有し、参加者全員がブロックチェーンと呼ばれる取引記録を作成する。サーバーで全ての情報を管理する中央集権型のネットワークと異なり、情報が1箇所に集約されず、参加者全体で情報を共有することで、ブロックチェーンを保持している。参加者は、マイニングといって、ネットワーク内に存在するブロックチェーンを生成し取引を成立させることで、報酬を得ることが出来る。
一方、XRPとは、Ripple LABが中心となって開発された支払いシステムを利用した決済用仮想通貨のことで、RippleとはXRPを利用した決済システムのことを指している。ブロックチェーンの原理に基づいた分散型ネットワークを利用する点ではビットコインと同じだが、単一通貨として存在するビットコインとは異なり、XRP自体に資産価値はなく、ブリッジ通貨として、XRPを介して異なる通貨・資産のやり取りを行うことが出来る。例えば、マイナー通貨を利用した為替取引は多くの手間・時間を要するが、XRPを利用することで、例えばマイナー通貨をXRPに交換して金を購入したり、ビットコインをXRPに交換して他の仮想通貨へ両替する、といった取引が可能となる。つまり、XRPは通貨交換を行うために必要な引換券のようなものと考えられる。
外部通貨の取引は、銀行や取引所としての役割を持つ、ゲートウェイを介して行われるが、ゲートウェイ自体が破綻する可能性もあるため、選定の際は、信頼のおけるゲートウェイを選ぶ必要がある。
XRPもビットコインと同様にマイニングにより報酬を得ることが出来る。しかしマイニング方法はビットコインと大きく異なり、World Community Gridという難病や環境問題に関する研究開発機関に登録をし、プロジェクトに参加をすることで、報酬としてXRPが得られる仕組みになっている。プロジェクトの内容は、マラリアやガンといった難病治療、クリーンエネルギー、発展途上国支援、といったものがある。
ビットコインのマイニング作業は、競合が激しく難易度を極めるため、個人事業により利益を上げることは非常に難しい。そのため、マイニングプールとしてグループでマイニングを行うことにより、取引が成立されていく。
ビットコインは参加者全員で管理を行うという考え方に基づいているため、不適切なブロックが作成された場合、ネットワーク全体の計算量(採掘速度)の50%以上を支配することで承認を得ることができる。いうなれば多数決である。仮に、ネットワーク全体の採掘速度の50%以上を支配するグループが、ブロックの改ざんなどといった不正を働いた場合、その不正が認められることになってしまう。これを51%攻撃と呼んでおり、現時点で、51%攻撃を防ぐ手立てはないといわれている。具体的には、「二重支払い」といって、ビットコインを支払った様に見せかけ、その取引をキャンセルして支払ったビットコインを元のウォレットに戻してしまう、という方法である。
1つのマイニングプールでネットワーク全体の50%以上の採掘速度を保持することは非常に困難とされているが、複数グループが結託してシェアを50%以上にすることで、51%攻撃を実施出来る可能性がある、というのが今回の懸念点である。
直近でのマイニングプールのシェアによると、ビットコインにおいては、AntPool, BitFury, BTC. TOP, F2Pool, BTCC Poolの5社で、ネットワーク全体の51.5%のシェアを保有している。そして、Ethereumに至っては、ethermine, f2pool, ethfansの3社で58.1%のシェアを獲得しており、51%攻撃の可能性もないわけではない。
とはいえ、51%攻撃を行った場合、最終的にはその仮想通貨が暴落することとなり、マーケット全体が蒙る損害は計り知れないため、ネットワーク全体を破壊しようという意図がない限り、実際に51%攻撃を実施するグループは存在しないと考えられている。
今回、ビットコインの市場シェアが50%を割りはしたものの、仮想通貨全体の市場は大幅に拡大していることから、今後もビットコインを中心として仮想通貨市場は拡大していくであろう。そして、分散型ネットワークを利用して、責任やリスクを分散し、安心して取引が出来る仕組みは、今後仮想通貨市場でもより重要視されていくであろう。また、ビットコインのように匿名性の高い送金方式の場合、国際的なマネーロンダリングの温床になりうるため、不正送金の撲滅・被害者救済措置も望まれる。
作成日
:2017.05.16
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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