作成日
:2023.10.17
2023.10.17 17:48
USDR(Real USD)は、トークン化された不動産を裏付けとするステーブルコインです。
2023年10月12日、USDRはデペッグに見舞われ、安定性を失って価格を大幅に下げています。これを受け、損失を被るユーザーも出てきており、仮想通貨(暗号資産)コミュニティで大きな話題となっています。
当記事では、USDRの特徴や仕組み、今回のデペッグが発生した理由、今後の補償計画などについて解説します。
2023年10月12日、USDRのデペッグが発生しました。
画像引用:CoinMarketCap
デペッグとは、特定の法定通貨等と固定的な価格関係(ペッグ)にある仮想通貨において、価格が基準値から大きく逸脱することです。デペッグが発生する原因は様々ですが、売り圧力の上昇や担保資産不足などの噂が流れることで、デペッグが起こる可能性があります。
USDRは、1USDR=1ドルの価値を維持するように設計されています。しかし、USDRは突如としてドルとの価格乖離が発生し、50%に近い暴落に見舞われました。
当記事執筆現在(2023年10月17日)、USDRは0.60ドル台の価格を推移しています。
USDRがデペッグした事実は、大手メディアを通じて、大々的に報じられています。それを受けて、Twitter(ツイッター)でもUSDRのデペッグに関するニュースが拡散されており、注目のトピックとなっています。
Twitter上では、USDRのデペッグで損失を被ったユーザーが確認されています。また、デペッグのパニックにより、13万ドル以上のUSDRを0USDCと交換してしまったトレーダーについて、多くのユーザーが言及しています。
USDRは、Real USDと呼ばれるステーブルコインです。トークン化された不動産を裏付けとしており、1USDR=1ドルとなるように設計されています。
画像引用:Tangible
USDRは、Tangibleによって運用されているステーブルコインです。Tangibleは、RWA(Real World Asset)をトークン化して、マーケットプレイスで売買できるエコシステムを構築しています。
RWA(Real World Asset)とは、現実世界に存在する資産全般を指す言葉です。具体的には、不動産や国債、ゴールド、美術品などが挙げられます。仮想通貨市場では、RWAをトークン化して活用するのが、ひとつのトレンドとなっています。
USDRは、「より良いお金」をコンセプトに、価値の保存と安定的な会計単位、交換媒体という3つの機能を満たす通貨になることを目標にすると記載されています。
USDRは、基本的にステーブルコインDAIとの交換で発行されます。また、発行されたUSDRは、DAIと1:1の比率でいつでも交換できます。
DAIは、MakerDAOと呼ばれるDAO(自律分散型組織)によって管理されている分散型のステーブルコインです。法定通貨ではなく、イーサリアム(ETH)などの仮想通貨を裏付けとして発行されています。
特定の条件下では、仮想通貨(暗号資産)TNGBLとの交換で、USDRを発行することもできます。仮想通貨TNGBLは、Tangibleのネイティブトークンです。
USDRは、保有するだけで受動的な収入が発生します。
USDRは、トークン化された不動産を担保にしているので、家賃収入や不動産価格の上昇によるリターンが期待できます。これらのリターンは、トークン保有者にUSDRの形で毎日分配されるようになっています。
報酬分配の仕組みとしては、Lido(ライド)が発行するstETHとよく似ているといえるでしょう。
USDRの価値は、トークン化された不動産を始めとする資産に裏付けられています。
その内訳は、トークン化不動産が50〜80%、DAIが10〜50%、TNGBLが0〜10%、プロトコルが所有する仮想通貨が10〜20%、保険基金が5〜10%となっています。
USDRは、「USDR Smart Contract」と呼ばれるスマートコントラクトによって、発行・償還されます。
スマートコントラクトは契約を自動履行するプログラムです。自動販売機でたとえると、「利用者が必要なお金を投入する」「特定の飲料のボタンを押す」という二つの契約条件が満たされた場合に、自動的に「その飲料を利用者に提供する」という契約が実行されます。
ユーザーがスマートコントラクトを介して、DAIを入金すると、同等のUSDRが付与されます。USDRを償還する際には、その逆のプロセスでDAIが返金されます。
また、USDRの保有者には、スマートコントラクトから毎日利回りが分配されます。ユーザーは、取引所でUSDRを購入したり、他のトークンと交換することも可能です。
Tangibleは、デペッグが発生した理由について、Twitter(ツイッター)アカウントを通じて説明しました。
As we've all seen, USDR has suffered a serious depeg.
— Tangible (@tangibleDAO) October 11, 2023
Over a short period of time, all of the liquid DAI from the treasury was redeemed.
This led to an accelerated drawdown in the market cap.
Combined with the lack of DAI for redemptions, and liquidation timeline on real... pic.twitter.com/1sgRPfpIT0
USDRのデペッグは、準備金のDAIが短期間で大量に引き出されたのが原因です。償還のためのDAIが不足したことに加え、不動産の精算スケジュールが相まって、パニック売りが発生したと説明しています。
USDRは、急激な売り圧力の高まりに耐えられず、1ドルから大きくデペッグしてしまったと考えられるでしょう。
Tangibleは、デペッグによって影響を受けた方に補償するとしており、次のような計画を発表しています。
Tangibleは、保有する仮想通貨TNGBLと保険基金を抜いても、84%の担保を確保していると説明しています。今後、保険基金はできる限り精算し、保有する流動性資産も売却して、顧客の返済資金を確保する方針を示しています。
Tangibleは、新トークンであるBasketの発行を計画しています。Basketは、トークン化された不動産によって、100%の価値が裏付けられたトークンです。
Basketは、ユーザーに対する補償の一部として配布される見通しです。ユーザーは、トークンを保有して利回りを獲得するか、DEX(分散型取引所)で運用、または市場で売却する選択肢があります。
分散型取引所とはブロックチェーン上で仮想通貨を売買できる取引所であり、中央管理者が存在しません。分散型取引所を意味する「Decentralized Exchange」の頭文字をとってDEXとも呼ばれます。
また、Basketトークンの需要不足に備え、バックアッププランとして不動産の売却準備も開始しています。
Basketの発行が済んだ後、USDRの償還が開始されます。
ユーザーには、基本的にステーブルコインとBasketによって補償されます。補償額が足りなければ、TNGBL 3,3+ NFTによって補填される予定だとしています。
TNGBL 3,3+ NFTは、TNGBLEをロックアップするのと引き換えに手に入るトークンです。TNGBL 3,3+ NFTを保有していれば、Tangibleのプラットフォームから報酬を獲得できます。保有するTNGBL 3,3+ NFTは、マーケットプレイスで売買することも可能です。
Tangibleは、上記のプロセスで償還が済んだ後、USDRを廃止する方針です。
USDRは、新しい試みでしたが、システムに多くの脆弱性がありました。現在の規模だとユーザーを保護できますが、このまま拡大を続けると、それが難しくなる可能性があると説明しています。
Tangibleは、USDRの廃止を予定していますが、RWA分野での取り組みは継続するとしています。
Tangibleは、今後の補償計画を発表しましたが、スケジュールなどの詳細は明らかになっていません。新トークンBasketが発行されれば、補償のプロセスが進むと考えられます。
Tangibleがコミュニティを保護する姿勢を見せているだけに、迅速な対応が望まれています。今後、毎週月曜日と木曜日に定期的なニュース更新を行うとしているので、これからの発表にも注目です。
作成日
:2023.10.17
最終更新
:2023.10.17
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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