作成日
:2023.02.08
2023.03.16 15:30
仮想通貨(暗号資産)のFUDは、FTXに対する債権を担保とするトークンで、大手取引所Huobiに上場しました。理論価格は0ドルから5ドルの範囲内と明示された上での上場でしたが、上場直後に高騰して約200ドルの高値をつけました。
当記事では、FUDトークンを説明した上で、リスクなどについて解説します。
FUD(FTX Users' Debt)トークンは、2022年に経営破綻した大手取引所FTXに対する債権と連動する仮想通貨(暗号資産)です。FTXの債権が償還されると、FUDトークンと交換で保有者に払い戻しがあります。
2022年、FTXはハイリスクな経営を行っており、手持ち資金が枯渇して顧客資産を払い出せない状況に陥りました。競合のBinance(バイナンス)が買収による救済を模索しましたが、結局失敗に終わっています。この影響は仮想通貨市場全体に波及しており、CEX(中央集権型取引所)の信頼が揺らいでいます。
このトークンはDebtDAOによって発行され、2023年2月5日に大手取引所Huobiに独占的に上場しました。
画像引用:Huobi公式ツイッター
FTXは破産法適用を申請して以降、清算のスペシャリストであるジョン・レイ氏をCEOに据えて手続きを進めています。
FTXの負債は合計100億ドルから500億ドルに達し、100万人の債権者がいると報道されています。また、ユーザーへの資産払い戻しやパートナー企業の支払いなどは停止しています。
DebtDAOはFTXに対する約1億ドルの債権を担保にFUDトークンを発行し、流動性を作り出しています。
流動性とは特定の資産が取引可能な状態にあるかどうかを指します。流動性があれば資産を売却したり買ったりできますし、流動性がなければ、売買できません。
FUDトークンは1FUD=1USDのレートで発行されました。しかし、FTXの財務状況が明らかでないことから、その価値は適宜変動する見込みです。
上場時、2,000万通貨分のFUDトークンが発行されました。その後、FTXの債務残高が正式に公開され、DebtDAOの債権額が2,000万ドルよりも多いことが確認できれば、その分が追加でFUDトークンとして発行されます。
追加発行されるFUDトークンは、既存のFUDトークン保有者にエアドロップで配布される見通しです。
エアドロップとは仮想通貨の無償配布を指します。知名度向上などを目的として新規プロジェクトが実施する例が多く、仮想通貨をもらうには公式ツイッターをフォローすることなど一定の条件がつく場合もあります。
例えば、DebtDAOの債権額が6,000万ドルだと判明した場合、最初の2,000万ドル分に加えて4,000万ドル分のFUDトークンが追加発行されます。FUDトークン保有者に対して、1FUDにつき2FUDがエアドロップされる仕組みです。
仮想通貨(暗号資産)FUDはHuobi上場直後に高騰し、約200ドルを付けました。その後下落して60ドル台で推移しています。
画像引用:Huobi
これに対して、Twitter(ツイッター)上ではインフルエンサーが警告を発しました。1FUD=1USDで発行されており、高値はその約200倍であると同時に、適正価格は1ドルから5ドルまでですので、60ドル台でも高すぎるということになります。
Huobiを率いるジャスティン・サン氏は、FUDトークンに関して「仮想通貨市場の全員に利益をもたらす」とコメントし、同仮想通貨を高く評価しています。
加えて、「これにより、FTX債権者が資産をより細かく管理でき、新たな投資機会が生まれる」と語っています。
ジャスティン・サン氏は仮想通貨トロン(TRON)の創設者として有名です。2023年1月、大手取引所Huobiはサン氏が同社を率いていることを認め、同氏によるHuobiトークンの大量保有が明らかになりました。
DebtDAOの投稿に対して、不満の声が上がっています。
「FUDトークンは詐欺で、直ぐに価値がゼロになる」や「他人の債権を売り捌いてお金儲けをしているだけだ」とのコメントが寄せられています。資金の取り扱いや払い戻しまでのタイムラインなどが公開されておらず、これが反発の要因の一つと考えられます。
一部では、FUDトークンはFTXに関するニュースを受けて価格が上下するだけであり、「ネタ通貨」にすぎないとの厳しい見方も出ています。
FUDトークンは従来の仮想通貨と異なり、FTXに対する債権に価値が紐づいています。FUDトークンのリスクとしては、以下のようなものが挙げられます。
DebtDAOについての情報はほとんど公開されておらず、彼らの正体は不明です。公式ホームページは存在しない模様で、公式ツイッターがあるものの投稿数はわずかです。ただし、FUDトークンがHuobiに上場していること、そしてジャスティン・サン氏のツイッターをフォローしていることから、DebtDAOとHuobiの深い関係が伺えます。
また、2023年2月7日、DebtDAOはトークン発行数を10分の1にすると発表しました。発表した媒体は公式ホームページや公式ツイッターでなく、Huobiの公式サイトです。この結果、当記事執筆時点(2023年2月)の取引価格(60ドル付近)は、適正価格(0ドル~50ドル)に近づきました。
さらに、この声明では「コミュニティと協議した結果」を受けて発行数を減らしたとしていますが、実際に協議した形跡は見当たりません。価格が高騰している事実をもって「コミュニティと協議」したとしている可能性があります。
DebtDAOの信用力はHuobiに依存しており、Huobiの出方次第で全てが崩壊する可能性があります。
FTXは未だ正確な財務状況を公開していません。最大500億ドルの負債があると考えられていますが、それも定かではなく、FTXが払い戻しに必要な現金を準備できない可能性もあります。
FUDトークンはFTXに対する債権が担保となって発行されています。もし、FTXに債務の支払い能力がなければ、FUDトークンは無価値になります。
FTXの債権者は一般ユーザーやFUDトークン保有者だけではありません。政府機関や大手企業なども債権者に含まれており、上位50位の合計残高だけでも約31億ドルに上ると報道されています。仮にFUDトークンの優先順位が低ければ、資金が返済されない可能性もあります。
FTXの債権を仮想通貨で売り出すと、証券法に違反する可能性があります。
証券法はその名の通り、株式や債券などの証券を取り締まる法律です。国によって定義は異なりますが、仮想通貨が証券に該当すると判断される可能性もあります。そうなれば、仮想通貨といえども、証券法による規制を受け入れなければなりません。
債権のトークン化は比較的新しい試みで判断が難しいですが、弁護士として活動するwassielawyer氏は、ツイッターで「これは100万%証券法違反です」と批判しています。FUDトークンが証券と判断されれば、廃止されるリスクもあります。
仮想通貨(暗号資産)FUDに本質的な価値があるか、見分けが難しい状況です。これを考える材料として、以下のイベントなどが期待されています。
FTXは財務諸表を公開していますが、正式なものではありません。FTX子会社のアラメダ・リサーチが監査を受けていないことが発覚するなど、グループ全体での財務記録がデタラメだったことが明らかになっています。
財務諸表は企業の経営や財務状況を示す書類です。とりわけ、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書は企業の状態を判断するために重要です。
これを受けて、CEOのレイ氏は財務諸表の準備を進めています。貸借対照表だけでも整理されれば、FTXの保有資産と負債の正確な額がわかるので、FUDトークンの価値がより明確になります。
前述した通り、DebtDAOは債権約1億ドルを担保にFUDトークンを発行しています。DebtDAOはFTXに対する債権を担保にしていると説明していますが、その証明はなされていません。HuobiはDebtDAO保有の債権を確認したと発表しているものの、詳細は謎のままです。
DebtDAOはDAOと名乗っていますが、Discord(ディスコード)上のコミュニティは招待制となっており、情報がほとんど開示されていません。今後、DebtDAOによる担保債権の開示が期待されています。
DAOは、Decentralized Autonomous Organizationの略で、日本語で「分散型自立組織」と訳されます。つまり、中央管理者が存在しなくとも、参加者の活動によって機能する組織を指します。中央集権型の組織と比較して民主的で透明性が高いと見なされており、ブロックチェーンの普及で広く採用されています。
FTXは返済計画を策定中です。返済がいつ頃になるか、どれぐらいの額になるか、誰が対象となるかなどを含めて不明です。最終的なFUDトークンの価値は、現実的な返済計画が発表されてからでなければ判断できません。
FUDトークンは債権をトークン化した「債権トークン」と呼ぶことができます。債権トークンは比較的新しい試みで、仮想通貨市場で様々な形で広がりを見せています。
Compoundはイーサリアム(ETH)ベースの仮想通貨レンディングプラットフォームです。
仮想通貨レンディングとは、保有する仮想通貨を貸し出して金利を得られるサービスです。仮想通貨を貸し出すだけでなく、金利を支払って借り入れることもできます。
Compoundでは預け入れた仮想通貨の債権トークンである「cToken」が発行されます。例えば、ETHを預け入れると、その債権として同額のcETHが付与されます。
レンディングが満了すれば、cTokenは元の仮想通貨に利息収入を加えた額と交換することができます。その他、cTokenは他のDeFi関連サービスで運用したり、早期に売却したりすることも可能です。
Celcius Network(セルシウス・ネットワーク)は中央集権型の仮想通貨レンディングプラットフォームです。FTXと同じく2022年に経営破綻しており、破産申請して清算手続きを進めています。
2023年1月末、Celcius Networkは債権者の救済目的で「AST(アセット・シェア・トークン)」の発行を検討していると明らかになりました。
ASTはCelcius Networkの債権に直接結びついていないので、正確には債権トークンではありません。Celcius NetworkはASTがIOUトークンに似た発想だと説明しています。
IOUは英語の「I Owe You(あなたに貸しがある)」を意味し、IOUトークンは上場前の仮想通貨を売買する手段として取引所が発行するトークンです。取引所は、上場後のIOUトークンと現物の交換を約束しています。すなわち、IOUトークンは上場前通貨を債権として取引しているともいえます。
ASTはCelcius Networkにある一定額以上の資産を預け入れた顧客に対して発行されます。Celcius Networkの貸借対照表に記載される全体の資産に対して、それぞれが預け入れた資産の割合で、付与されるASTのシェアが決定されます。
つまり、全体に占める預け入れる資産の割合が高ければ、より多くのASLが付与されます。ASTは債権トークンのように返済を約束するものではありません。資産の引き出しが叶わない状況でも、債権者に部分的な流動性を提供します。
Codefiは企業や金融機関向けのDeFi関連サービスを提供するプラットフォームです。ブロックチェーン開発などを行うConsenSysによって2020年に買収されました。
Codefiは米証券会社ヘリテージ・ファイナンシャル・システムズ(Heritage Financial Systems)との提携によって、地方債をトークン化してブロックチェーン上で管理可能な形にするシステムを構築しています。
仮想通貨には様々な特性を持つものが存在します。仮想通貨コミュニティでトレンドになっているからといって、投資してしまうのは危険です。どのような要因が価格に影響するのか、投資する価値のあるものなのかなどを判断する必要があります。
取引所のページ、Twitterの投稿、公式ホームページなどを見て、自身でリサーチする必要があります。
作成日
:2023.02.08
最終更新
:2023.03.16
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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