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DAOのビジネスモデルを解説、民主的な仕組みを活かした利用例が拡大

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update 2023.03.16 15:30
DAOのビジネスモデルを解説、民主的な仕組みを活かした利用例が拡大

update 2023.03.16 15:30

仮想通貨(暗号資産)市場ではDAOが一般的となっており、多くのプロジェクトが取り入れています。また、DAOは投票での意思決定が特徴的で、Web3.0を実現する手段のひとつとして期待されています。

当記事では、DAOの概要や特徴を説明した上で、利用例や課題などを解説していきます。

DAOとは

DAOは、Decentralized Autonomous Organizationの略で、日本語で「分散型自立組織」と訳されます。仮想通貨やブロックチェーンの発達で利用されるようになり、今後もDAOの仕組みを取り入れるビジネスが増える可能性があります。

日本では、ZOZO創業者の前澤氏が主導する「MZ DAO」が立ち上げられて注目を集めました。ただし、現在のMZ DAOはDAOではなく、段階的に分散化を進める予定です。

中央管理者が存在しない組織

DAOは既存の企業などとは異なり、中央管理者が存在しません。企業などの中央集権組織では、一般的にトップダウンのアプローチで意思決定を行います。従って、代表など組織の上に立つ者に権力が集中します。

一方、DAOではコミュニティ参加者が投票し、組織全体で意思決定します。全員が完全に平等な権力を持っているわけではなく、コミュニティでの影響力や投票権の数に違いはありますが、民主的な組織運営を実現する手段のひとつです。

従来の組織とDAOにおける意思決定プロセスの違い

Web3.0の台頭で波に乗るDAO

仮想通貨分野ではWeb3.0が盛り上がりを見せており、DeFi(分散型金融)やブロックチェーンゲームなどのDApp(分散型アプリ)開発が活発になっています。

分散型の組織で意思決定すれば、一部の大手企業に依存しないサービス展開が可能となります。このため、DAOはWeb3.0の広がりを支援すると期待されています。

point Web3.0とは

Web3.0とは分権化された次世代のインターネット環境を指します。現代の中央集権型インターネット環境(Web2.0)は、大手IT企業が強い影響力を持っています。その一方、Web3.0では個々のユーザーが重要な役割を担います。

DAOの主な特徴

DAOの主な特徴は以下のとおりです。

ガバナンストークンによる投票

ガバナンストークンとは仮想通貨の一種でDAOごとに異なっており、このトークンの保有者が投票に参加できます。DAOの中には、一定数以上のガバナンストークンを持っていると提案もできるという例が多くあります。

DAOの意思決定は提案に対する投票によって行われ、提案に対して支持するか反対するかの意思表示を行います。多くの場合、ガバナンストークンが投票権の役割を担っており、保有者はガバナンストークンの保有数だけ投票可能です。

すなわち、ひとり1票ではなく、仮想通貨の保有数に応じて票を投じることができます。

スマートコントラクトによる自動化

DAOはスマートコントラクトによって運用が自動化されています。

point スマートコントラクトとは

スマートコントラクトは契約を自動履行するプログラムです。自動販売機でたとえると、「利用者が必要なお金を投入する」「特定の飲料のボタンを押す」という二つの契約条件が満たされた場合に、自動的に「その飲料を利用者に提供する」という契約が実行されます。

例えば、ウォレット内の資金の管理や払い出しなどに関して、特定の管理者が存在するのではなく、投票で合意された通りにスマートコントラクトで自動的に処理されます。

また、DAOにおける投票にもスマートコントラクトが活用されており、投票結果を改ざんできない仕組みになっています。

仮想通貨によるインセンティブ付与

DAOは独自仮想通貨によるトークンエコノミー(仮想通貨を中心とした経済)を形成しており、投票参加者にインセンティブを付与することがあります。

具体的には、DAOの参加者や開発者などのコミュニティメンバーに独自仮想通貨を付与する例があり、コミュニティを活発に保っています。

DAOのビジネスモデル

DAOは様々な分野で活用されています。DeFi普及をミッションとするものや、NFT投資を目的としたもの、社会活動を存在意義とするものなど、その用途は幅広いです。

従って、DAOのビジネスモデルも千差万別です。しかし、そのほとんどはエコシステムを拡大してガバナンストークンの価値を高め、トークン保有者に価値を還元することをひとつの目標としています。

例えば、クリエイター向けのコミュニティサービスを提供する「Friends With Benefits」は、ユーザー数が増加して活発になることでガバナンストークンの価値が高まるビジネスモデルを採用しています。

Friends With Benefitsのビジネスモデル

Friends With BenefitsはDiscord(ディスコード)上のチャットルームへのアクセス権を主なサービスとしています。ユーザーはチャットルームに参加することで、他のクリエイターとの関係を深めたり、最新の仮想通貨情報を得たり、イベントの招待を受けたりできます。

ガバナンストークンとしてFWBトークンを発行しており、新規ユーザーは入会に際してFWBの購入が求められます。コミュニティが盛り上がれば、新規ユーザー数が増えてFWBの需要が高まると考えられます。

DAOの利用例

仮想通貨市場では様々なアイディアでDAOが生まれています。

BitDAO

BitDAOは大手取引所Bybit(バイビット)が支援するDAOで、DeFi分野の発展を目的として各種プロジェクトに投資しています。

ガバナンストークンとしてBITトークンを発行しており、通常のガバナンストークンとしての役割に加えて、Bybitの取引所トークンとしての機能も持っています。また、BITトークン価格は、BitDAOの投資の成果やBybitの成長などによって変動すると考えられます。

point 取引所トークンとは

取引所トークンは各取引所が発行する独自仮想通貨を指します。保有者には取引手数料の割引やIEO(イニシャルエクスチェンジオファリング)への参加権などの特典が付与されます。有名なものとしては、BinanceのBNBがあります。

MakerDAO

MakerDAOはDeFi分野を代表するDAOで、ガバナンストークンとしてメイカー(MKR)を発行しています。主にステーブルコインのダイ(DAI)や仮想通貨レンディングなどのサービスを提供しています。

point 仮想通貨レンディングとは

仮想通貨レンディングとは、保有する仮想通貨を貸し出して金利を得られるサービスです。仮想通貨を貸し出すだけでなく、金利を支払って借り入れることもできます。

メイカーの需要は、ダイや仮想通貨レンディングサービスの利用者が増加することで高まっていくと考えられます。

PleasrDAO

PleasrDAOは投資家グループによって設立されたDAOです。ベンチャーキャピタルやBitDAOから出資を受けています。

幅広いNFTアートへの投資を目的としており、メンバーには仮想通貨コミュニティやデジタルアート分野のインフルエンサーなどがいます。保有するコレクションの中には、ドージコイン(DOGE)の柴犬や、米中央情報局(CIA)元局員エドワード・スノーデン氏の作品など、価値の高い作品が含まれています。

UkraineDAO

UkraineDAOは、ロシアと戦争状態にあるウクライナの市民を支援するDAOです。ウクライナ支援をコンセプトとしたNFTを売り上げるなどして資金を集めており、政府機関などへ寄付しています。その寄付は700万ドルを超える規模に達しています。

山古志DAO

山古志DAOは新潟県長岡市にある限界集落「山古志地域」の復興をテーマにしたDAOです。山古志は中越大地震の被害を受け、住民が800人程度に減少して消滅の危機を迎えています。

山古志DAOはNFTとDAOを駆使して、山古志の復興を目指しています。具体的には、デジタルアートと電子住民票の機能を持ち合わせたNFTを発行して、賛同する人々によるコミュニティを形成しています。

DAOのビジネスモデルの課題

DAOは新しい存在でビジネスモデルとして課題を抱えており、課題を克服するDAOの登場が望まれています。

本当の意味での分散化が難しい

分散型の組織の維持は簡単ではありません。特に、投票システムにおいてガバナンストークンが投票権代わりとなっていることから、実際には資金力のある個人や団体、トークンの割り当てを受けた創設者、開発者チームなどに権力が集中しがちです。

主要なDAOでも、DAOとは名ばかりで、ガバナンストークンが開発チームの身内で独占されていることも珍しくありません。また、ガバナンストークンの初期配布がうまくいったとしても、結局は資金力の違いが偏りを生んでしまうので、分散性の維持は大変難しいです。

この問題を解決するために、1ウォレット1票の投票システムや、貢献度による重み付けを考慮した投票システムなどが試されています。

法整備が追いつかない

DAOは新しい組織形態なので、世界的に法整備が追いついていません。企業のような実態がないので、どの国の法律が適用されるかなども明らかではありません。

米国の一部の州ではDAOを規制する法律が可決されていますが、少なくとも日本では、法的にDAOをどのように扱うか明確ではありません。

ハッキングのリスク

仮想通貨を取り扱う以上、ハッキングのリスクは付き物です。それはDAOも例外ではありません。

DAOはスマートコントラクトを利用しているので、コードのバグを攻撃されて仮想通貨が不正に盗み出される可能性があります。過去には「The DAO事件」と呼ばれる大規模なハッキング事件が発生しています。

point 脆弱性を突かれたThe DAO事件

スマートコントラクトの脆弱性を狙われて資金を流出させた事件として、The DAO事件があります。The DAOは分散型投資ファンドでありイーサリアム上で構築されたものの、大量のETHが盗まれました。これをきっかけとして、イーサリアムとイーサリアム・クラシックに分裂しました。

意思決定が遅れる

トップダウンのアプローチを取る企業などでは、比較的素早く意思決定できます。一方、DAOは提案と投票のプロセスが必要となり、意思決定が遅れがちです。

例えば、長期の開発計画などでは悪影響はないかもしれませんが、とっさの判断が必要な事項に関しては、弱さを見せる可能性があります。

特に意思決定の速度が重要になるのは、システムがハッキングされた場合です。中央集権型の場合は迅速に行動できるので被害を抑えやすい一方、DAO型は意見の集約に時間がかかるため被害が拡大する可能性があります。

持続できない可能性

DAOはガバナンストークンを軸としたトークンエコノミーに支えられています。すなわち、ガバナンストークンの価格に大きく依存することから、価格が低迷すると運営が厳しくなるかもしれません。ビジネスモデルとして不安定になりやすく、コミュニティを維持できるかわかりません。

また、ガバナンストークンの発行枚数が上限に達してインセンティブを付与できなくなった際にも、DAOが維持できなくなる可能性があります。

DAOの可能性

DAOはいくつかの課題を抱えているものの、これまでのビジネスモデルを覆す可能性を持っています。ブロックチェーンプロトコルやDAppの開発ではもちろんのこと、その他サービスや社会貢献などにも利用され始めています。

今後、DAOは更なる進化が期待されており、いずれはより効率的で公平な組織運用が可能になるかもしれません。ガバナンストークンを購入することで誰でもコミュニティに属することができるので、興味があれば体験してみるのも良いでしょう。


Date

作成日

2022.12.28

Update

最終更新

2023.03.16

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。

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