作成日
:2022.08.26
2023.03.16 15:30
2022年8月25日、人気お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣氏が、NFT「Poubelle(プベル)」の販売を発表しました。オークション形式で販売され、開始日は8月29日です。
西野氏は、絵本作家としても活動しています。新しいテクノロジーや仕組みをビジネスに取り入れることにも積極的で、この度、NFTコレクションの販売を決定しました。
以前から、西野氏はNFTに関心を持っており、過去にはプロジェクトを立ち上げたこともあります。
その際は「みにくいマルコ~約束の時計台~」という作品で、絵本のページオーナーになる権利をNFTとして販売しました。この作品は、自身で映画化も手がけた「えんとつ町のプペル」のサイドストーリーとして描かれているものです。西野氏は絵本の個展を国内外で行なっており、その中で、ページオーナーの名前も一緒に展示することを計画しています。
NFT販売から1年、西野氏はPoubelleという名称で新しいNFTコレクションを公開します。この試みに関して、「世の中が今よりも、もう少しだけ、明るく、建設的になったらイイなぁという願いを少しだけ込めた、ちょっとした悪フザケです」と説明しています。
Poubelleは、フランス語でゴミ箱という意味です。えんとつ町のプペルの「Poupelle(プペル)」がゴミ人間なのに対して、「Poubelle(プベル)」はゴミモンスターです。
Poubelleは「そのへんに落ちているゴミをモンスター化してみた」コレクションだと説明されています。毎週1体を目安にモンスターのイラストを公開し、5から6つのカラーバリエーションで、それぞれのNFTが発行される予定です。
毎日1体のモンスターが公開され、1年間で365体分のNFTが発行されます。西野氏はたとえプロジェクトが盛り上がりを見せたとしても、それ以上のNFTは発行しないと明言しています。
コレクションの第1弾として、空き缶をモチーフにしたモンスターの「KAN」、第2弾としてリンゴをモチーフにした「Taro」というNFTシリーズが公開されることが発表されています。色のバリエーションは、オレンジと緑、赤、青、黄色、紫となっています。
画像引用:CHIMNEY TOWN
Poubelleは「ゴミのNFTを売ると何が起こるのか?どんな価値がつくのか?」、「ゴミのNFTのコミュニティからどんな現象が起こるのか?」という実験の意味も込めて販売が計画されている模様です。
ちなみに、Poubelleは純粋なデジタルアートとしてのNFTで、アイコン画像などとして利用されることが想定されています。
大手SNSのTwitter(ツイッター)がNFT関連機能を強化してから、仮想通貨(暗号資産)コミュニティでNFTをプロフィールのアイコン画像として利用することが流行しています。NFTは所有権が明確な唯一無二の存在であることもあり、インターネット上で自身のアイデンティティを示す手段として広まりつつあります。
Poubelleは世界最大のNFTマーケットプレイスである「OpenSea」で2022年8月29日から販売されます。オークション形式で販売され、ひとつのNFTあたりの入札時間は24時間に設定されています。オークションの入札は0.01ETH(約2,200円)からスタートします。
西野氏は「当然、NFTの売り上げは僕は要らないので、CHIMNEYTOWN DAOの皆さんで話し合って、なんか、イイ感じに使ってください」とコメントしています。
西野氏は自身の公式Twitter(ツイッター)アカウントを通じて、Poubelleのコンセプトと販売スケジュールを告知しました。インターネット上のコミュニティに多くのファンを抱える西野氏の投稿は、広く拡散されており、仮想通貨界隈でも注目を集めています。
西野氏の試みに対して、仮想通貨コミュニティは、大方ポジティブな見方を示しています。中には、西野氏の実績やPoubelleが数に限りがあることから、NFTが高額化する可能性があると予想する者も出てきている状況です。
その他には、ZOZO創業者である前澤友作氏の「MZ DAO(エムズィーダオ)」を立ち上げたことや、YouTuberや講演家として活動する鴨頭嘉人氏がNFT市場に参入してきたことと合わせて、西野氏のようなインフルエンサーが業界全体を盛り上げることを歓迎する声が挙がっています。
西野氏はオンライサロン「西野亮廣エンタメ研究所」を運営しています。このオンラインサロンは、西野氏を中心とした「株式会社CHIMNEY TOWN」によって運営されており、数万人規模の会員を抱えています。
また、株式会社CHIMNEY TOWNは、CHIMNEYTOWN DAOを協力運営しており、仮想通貨関連の試みも積極的に取り組み始めています。オンラインでの勉強会がきっかけで発足したCHIMNEYTOWN DAOは、イーサリアム(ETH)のブロックチェーンを基盤とする「初心者に優しいDAO」として運営されています。
DAOは、Decentralized Autonomous Organizationの略で、日本語で「自立分散型組織」と訳されます。つまり、中央管理者が存在しなくとも、参加者の活動によって機能する組織を指します。中央集権型の組織と比較して、より民主的で透明性の高い存在と見なされており、ブロックチェーンの普及で広く採用され始めています。
今回のPoubelleの販売も、CHIMNEYTOWN DAOが主導しています。CHIMNEYTOWN DAOはこの機会に入会に必要なNFTを0.01ETHで販売することも計画しているので、それがメンバー増加につながると予想されています。
今後もCHIMNEYTOWN DAOは、西野氏の求心力もあり、日本国内の仮想通貨市場における存在感を高めていくと考えられます。
ビットコイン(BTC)や主要な仮想通貨が低迷していることや、NFT関連の詐欺が頻発していることを受け、NFT市場は下火になりつつあります。2022年初頭の好調が嘘のように、NFTの取引高が減少し始めているのです。
OpenSeaにおける取引高は、2022年1月から6月の間に50億ドルから7億ドルにまで激減しています。これまでのNFT市場がバブルだったとの見方もありますが、勢いを失っているのは明らかです。
西野氏はあくまでもPoubelleが、ビジネスではなく、社会実験だとの立場を取っています。自身で語るように「NFTが過度に加熱している時にはやりたくない」としていましたが、まさに今が西野氏が望むタイミングにあると考えられます。
本人の姿勢とは裏腹に仮想通貨コミュニティの期待は高まっていますが、PoubelleはNFT市場を盛り上げることはできるのでしょうか。今後も西野氏の取り組みから目が離せません。
作成日
:2022.08.26
最終更新
:2023.03.16
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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