作成日
:2022.07.21
2023.03.16 15:54
みずほ銀行が、VRイベント「バーチャルマーケット2022 Summer」で、ブースを出展することを発表しました。メタバース関連事業における取り組みの一環です。日本の大手銀行のメタバース市場参入は、Twitter(ツイッター)やメディア上で大きな反響を呼んでいます。
今回は、みずほ銀行の発表や仮想通貨(暗号資産)コミュニティの反応、関連する取り組みなどを紹介していきます。
みずほ銀行は、将来的なメタバース関連事業の展開を見据えています。これを受けて、世界最大級のVR(仮想現実)イベント「バーチャルマーケット2022 Summer」に出展します。バーチャルマーケット2022 Summerは株式会社HIKKYが主催し、100万人以上の来場が見込まれています。
メタバースとは、インターネット上に構築された三次元の仮想空間を指します。仮想通貨市場では主にブロックチェーンゲームとして開発が進められており、メタバース関連銘柄と呼ばれる仮想通貨も数多く発行されています。将来的には、ゲーム以外にも様々な用途での利用が期待されています。
この出展は、「MIZUHO次世代金融推進プロジェクト」の取り組みの一環です。このプロジェクトは、みずほ銀行の社員がビジネスの創出や生産性の向上などを目的にアイデアを出し、実行するものです。金融業界でも、Web3.0やメタバースに注目が集まっており、その有効性の検証を念頭に出展します。
Web3.0とは、分権化された次世代のインターネット環境を指します。現代の中央集権型インターネット環境(Web2.0)は、大手IT企業が強い影響力を持っています。その一方、Web3.0では個々のユーザーが重要な役割を担います。
みずほ銀行は今回の発表を通じて、「本件を皮切りに、メタバースの特性を活かした今までにない顧客体験やビジネスチャンスを求めて、みずほでは様々な検討を行っていきます」としています。住宅ローンなど個人向けコンサルティング等について、アバターを介して実施できるか検証する見込みです。
バーチャルマーケット2022 Summerで展開されるメタバース世界は、「パラリアル大阪」と呼ばれます。みずほ銀行は、銀行をイメージしたブースをメタバース内に出展予定です。1階部分が交流スペースになっており、対面で接客が受けられるコンサルティングスペースなどが設けられています。
画像引用:みずほフィナンシャルグループ
2階以降のタワーは、金融クイズとボルダリングを組み合わせたアトラクションになっています。このタワーを登り切ると、パラリアル大阪の街並みが一望できるだけでなく、アンケートに答えて王冠のアイテムを獲得することができます。この王冠は、メタバース内でアバターに装着可能です。
2022年8月20日には、ゲストを招いて、みずほ銀行の社員による座談会が実施されます。座談会の参加者は、他の参加者やみずほ銀行の社員と交流できます。
Twitter上では、みずほ銀行の発表が拡散されています。
個人の投稿では、みずほ銀行のメタバース参入が注目されています。システムトラブルの歴史や、ATMなどの度重なるネットワーク障害などに触れて、みずほ銀行によるメタバース参入を不安視する声が多数挙がっています。
一方、賛同する声も少数ながら挙がっています。否定的な意見もありますが、話題となっていること自体が、ポジティブな要素だといえるでしょう。
ちなみに、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)の株価は、発表があった2022年7月19日からやや上昇し、1,600円台に差し迫っています。
画像引用:Yahoo!ファイナンス
メタバース以外にも、みずほ銀行は仮想通貨関連事業に取り組んでいます。直近では、以下の2件が挙げられます。
2018年、みずほFGは、デジタル通貨「J-Coin」を立ち上げました。J-Coinは、買い物などで手数料無料で利用できます。このデジタル通貨を中心に、エコシステムを構築しようとしています。これはJ-Coin構想と呼ばれ、傘下のみずほ銀行や地方銀行も参画しています。
具体的な製品としては、決済アプリ「J-Coin Pay」がiOSとAndroid向けにリリースされています。日本円での入出金や送金、決済などが可能です。
ただし、みずほFGは、J-Coinそのものを仮想通貨だと表現していません。下の画像にある通り、インフラ部分で仮想通貨関連技術を用いています。
画像引用:経済産業省
J-Coin Payは2019年に不正アクセスの被害を受けました。第三者が加盟店のデータを消去して、ビットコイン(BTC)の支払いを要求するに至っています。既に対策が講じられていますが、みずほFGの技術的な不安を露呈する結果となりました。
みずほFGは日立製作所とともに、サプライチェーンを管理するブロックチェーンプラットフォームの開発を進めています。
サプライチェーンとは、調達から製造、販売、消費までの一連の流れを指します。効率的な経営を行うには、サプライチェーンの効率化が重要です。ブロックチェーンはサプライチェーンの効率化に有効だと考えられており、国内外で複数の利用例が存在します。
このプラットフォームを利用すると、発注、納品、支払に関わるやり取りや、資金回収の時間を短縮できると考えられます。既に、企業向けのブロックチェーン「Hyperledger Fabric」を基盤にシステムが構築されており、物流企業の営業所や運送会社などが実証事件に参加しています。
これまで、メタバースは主にエンターテイメント分野で利用されてきました。そして、日本では主要政党がメタバースを活用して街頭演説を実施するなど、様々な分野での利用例が出てきています。
みずほFGの取締役兼執行役副社長である梅宮真氏は、メタバースに関して「今後現実の世界と仮想空間が融合していくとしたら、現実の世界の金融ビジネスだけでなく、メタバースの中で知見を生かしてビジネスを発展させていきたい」とコメントしています。
みずほ銀行にとって、バーチャルマーケット2022 Summerへの出展は、今後を占う重要な試金石となるかもしれません。金融業界では、仮想通貨を取り込む動きが活発になってきているだけに、みずほ銀行の動きには要注目です。
作成日
:2022.07.21
最終更新
:2023.03.16
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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