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仮想通貨コスモス(ATOM)、開発企業のIgniteが分裂の危機か?価格や開発計画への影響を解説

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update 2024.01.20 18:38
仮想通貨コスモス(ATOM)、開発企業のIgniteが分裂の危機か?価格や開発計画への影響を解説

update 2024.01.20 18:38

2022年7月初旬、仮想通貨コスモス(ATOM)の開発企業「Ignite」の分裂危機が話題となりました。コスモスは人気の仮想通貨であり、投資家の中には、プロジェクトに期待を寄せている人も少なくありません。

Igniteの分裂により、開発活動に影響が出る可能性があります。コスモスは、どのような状況に陥っているでしょうか。当記事ではその騒動の詳細と、コスモスに対する影響に関して解説していきます。

コスモス(ATOM)とは

コスモスは、他のブロックチェーンが抱える問題を解決するために立ち上げられました。ビットコインやイーサリアム(ETH)よりも大量の取引を処理できることから、次世代のブロックチェーンと位置付けられています。その効率性は高く、ブロックの承認時間は7秒、手数料は0.01ドルで取引可能です。

コスモスブロックチェーン上の仮想通貨は、「ATOM」と呼ばれます。ビットコインやイーサリアムなどは、ブロックチェーンの名称と、そのブロックチェーン上で使用される仮想通貨の名前が一致していますが、コスモスでは異なる名称になっています。

コスモスとアトム

また、自前のソフトウェア開発キットを構築しており、DApp(分散型アプリ)プラットフォームとしても機能します。高い性能を持つため、コスモスはイーサリアム・キラーの一角としても期待されています。

point イーサリアム・キラーとは

イーサリアム・キラーとは、DAppプラットフォームとしてイーサリアムの座を狙うブロックチェーンを指します。スマートコントラクトだけでなく、より効率的なコンセンサスアルゴリズムを採用して、高速な取引や安い手数料での利用を実現しています。すなわち、イーサリアムが抱えている課題をある程度克服しているのが特徴です。

開発企業が分裂

コスモスは、2014年に設立された開発会社「Tendermint」によって開発されました。しかし、幹部らの闘争などを背景に経営陣が総入れ替えとなるなど、内部分裂を経験しています。

その結果、新組織「NewTendermint」が設立され、プロトコルの開発が進められています。NewTendermintの代表者はKwon氏であり、彼は元々Tendermintを設立した一員です。残された開発チームは、2022年2月、新CEOであるPeng Zhong氏が中心となって「Ignite」にリブランディングしました。これは、Kwon氏が率いる組織と区別を付けることが目的です。

NewTendermintとIgniteの関係性を表す画像

Zhong氏は、リブランディングの際、Tendermintはコスモスのインフラ中心に開発していたことに触れました。その上で、Igniteではより広範囲のソリューション開発に移行するとコメントしました。今回、分裂騒動が起きているのは、このIgniteです。

CEO辞任で再び分裂の危機か?

2022年7月1日、IgniteのZhong氏は、自身のTwitter(ツイッター)で「今日がIgniteでの最後の日です」と発信し、退職を明らかにしました。続けて、エコシステムを構築できたことに関して、開発チームやコミュニティに感謝の意を述べています。

海外の仮想通貨メディアの報道では、Zhong氏だけでなく、約140人のスタッフの半数以上が離職したと報じています。これら退職した従業員は、Kwon氏のNewTendermintに引き抜かれた可能性がある模様です。その他、「Cosmos Cash」と呼ばれる新しいイニシアチブに勧誘されている例も報告されています。

開発者の分散が懸念される

コスモスの開発企業は、複数あります。このため、NewTendermintやIgnite以外にも、開発スタッフが選べる転籍先はいくつかあります。すなわち、コスモスの開発は今後も進められるでしょう。所属先は変わるとはいえ、開発スタッフは従来と同じくコスモスに取り組みます。

ただし、コスモスの開発リソースが再度分散してしまいます。その分だけ開発が停滞したり、事故が起きやすくなったりします。あるいは、スタッフの中には、コスモスを離れて別のブロックチェーンに取り組む例もあることでしょう。当記事執筆時点(2022年7月)でIgniteから正式な発表がなく、現状を正確に判断することは難しいです。

他の開発チームの発表なども併せて、情報収集が必要になるかもしれません。

仮想通貨コミュニティの反応

このIgniteの動きに対して、仮想通貨コミュニティはどのような反応を示しているでしょうか。Zhong氏による退職の報告には、突然のことに困惑するコメントや、退職の理由や次の進路を気にする声が寄せられています。

一方、「大きな影響はない」との見方も出ています。コスモス推しの有名Twitterユーザー「Zaki」氏は、「コスモス以外のエコシステムだったら、創設会社がスタッフの50%を失うとネットワークが壊滅的になる」とツイートして、特に大きな影響にならないことを予想しています。

続けて、「売り圧力を取り除き、才能ある開発者がより良い開発企業に配置され、核となる開発に影響が出ないことから、ATOM価格にとっては上昇の要因となる」と言及しました。この発言の背景には、先ほど説明したように、開発企業がIgnite以外にも存在することがあります。

point ステークホルダーのポジショントークに注意

仮想通貨業界で何かニュースがあった場合、発言者に占めるステークホルダー(利害関係者)の割合が高くなります。その仮想通貨の開発者や、価格が下がると損をする大口の保有者などが積極的に発言するためです。ステークホルダーは価格に悪影響を与えるネガティブな発言はしない場合がほとんどですので、こうした発言だけを参考にしていると、仮想通貨の将来性の判断を誤ってしまう可能性もあります。

ATOMの価格チャート

Igniteから大量の従業員が離職したことを受け、コスモスのネイティブトークン「ATOM」は以下の値動きを示しています。矢印部分で、Zhong氏がツイッターで退職を報告しました。

ATOMと米ドルの価格チャート

画像引用:CoinMarketCap

7月1日、Zhong氏が退職を発表しました。その日以降、ATOM価格は継続的な上昇を見せ、5日には9ドルの大台を突破しました。この価格上昇が何に起因するのか、明らかではありません。しかし少なくとも、Igniteに関するニュースが悪材料になっていないことが分かります。

今後の開発計画への影響は?

コスモスのインフラは、多数の開発会社によって維持されています。このため、Igniteの人員削減で決定的なダメージにならないと予想できますが、いくつかの開発計画に影響が出ているようです。

クロスチェーンDEX開発が保留に

Igniteは、DEX(分散型取引所)の「Emeris」を開発しており、2022年5月にはテスト版のDAppを公開していました。このDEXでは、異なるブロックチェーン間の取引ができる予定です。しかし、Igniteは7月1日付で、開発計画を保留にすると発表しています。

point クロスチェーンブリッジとは

クロスチェーンブリッジとは、複数のブロックチェーンを繋いで、規格の異なる仮想通貨を利用可能にする技術です。この技術が普及すれば、ブロックチェーンを跨いで仮想通貨をやり取りできます。ブロックチェーンが乱立している現在、クロスチェーンブリッジは仮想通貨市場で重要な存在になるでしょう。

Accelerator Programを取り止めか?

2022年4月、Igniteは「Accelerator Program」を発表しました。しかし、このプログラムに関する一部情報がホームページから削除されていると、SNS上で出ています。Igniteからは、情報削除の公式報告はありません。

Accelerator Programは、最大20のWeb3.0関連プロジェクトに対し、合計1億5,000万ドルを投資するプログラムです。開発支援を通じて、コスモスのエコシステム発展を目指しています。Igniteが投資を取り止めるのであれば、開発活動の停滞は免れないでしょう。

point Web3.0とは

Web3.0とは、分権化された次世代のインターネット環境を指します。現代の中央集権型インターネット環境(Web2.0)は、大手IT企業が強い影響力を持っています。その一方、Web3.0では個々のユーザーが重要な役割を担います。

仮想通貨市場に不況の波が

2022年に入ってから、仮想通貨市場は低迷を続けています。仮想通貨価格が低迷していることもあり、各プロジェクトや企業は、コストを削減するためにリストラを進めています。大手取引所のCoinbase、仮想通貨レンディングのBlockFiなどが、その例です。Igniteもこの流れに乗って、従業員を大量解雇した可能性があります。これが、どのような形で影響を及ぼすのでしょうか。

人気DEX「dYdX」の移植が進められるなど、コスモスでは期待のプロジェクトが稼働しています。Igniteからは詳細の発表はなく、今後も同社の動向を見守っていく必要がありそうです。


Date

作成日

2022.07.07

Update

最終更新

2024.01.20

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。

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