作成日
:2021.06.07
2021.06.07 16:49
米商品先物取引委員会(CFTC)は4日、1日火曜日時点の建玉報告を公表した。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)通貨先物市場における投機筋の通貨別ポジションは下記の通り。円、ネットポジションが増加
円は対ドルで4万7,115枚の売り越し(ネットショート)であった。先週比では3,041枚の増加となる。また、3月16日時点で約1年ぶりに円ショートに転じて以降、円の売り越しは12週間続いている。6月1日のIMMポジション集計時点では、円のネットショートポジションが減少したが、主要7通貨の中で唯一大幅にショートに傾いている。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC JPY投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(円ロング)が前週比プラス21.9%、売り建玉(円ショート)はプラス3.0%となった。
【円ポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 24,163 | 29,462 | 21.9% |
---|---|---|---|
ショート | 74,319 | 76,577 | 3.0% |
ネット | -50,156 | -47,115 | - |
【円ポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
24,163 | 29,462 | 21.9% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
74,319 | 76,577 | 3.0% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-50,156 | -47,115 | - |
米英市場が休場となった5月31日の週初から6月1日にかけて、ドル円は軟調な展開となり、週間安値となる109円33銭まで下落する場面が見られた。その後は、米各種経済指標が軒並み良好な結果であった他、ダラス連銀のカプラン総裁のテーパリングに関する発言を受け、早期テーパリング観測が再燃したことなどを支援材料に、ドル円は約2ヶ月ぶりの高値となる110円32銭まで上昇した。しかしながら、市場の注目度が高かった米5月雇用統計で雇用者数の伸びが市場予想を下回り、米長期金利が低下したことを受け、ドルは売りに押され109円50銭台で取引を終えた。
ユーロ、主要7通貨の中で最大のロングポジション
ユーロは対ドルで10万9,322枚の買い越し(ネットロング)となった。先週比では5,322枚の増加となる。主要7通貨の中では、最大のネットロングポジションを構築している。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC EUR投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比プラス0.5%、売り建玉(ショート)はマイナス3.1%となり、ロングポジションが増加する一方、ショートポジションは減少した。
【ユーロポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 236,103 | 237,360 | 0.5% |
---|---|---|---|
ショート | 132,103 | 128,038 | -3.1% |
ネット | 104,000 | 109,322 | - |
【ユーロポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
236,103 | 237,360 | 0.5% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
132,103 | 128,038 | -3.1% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
104,000 | 109,322 | - |
ユーロ圏5月消費者物価指数(CPI)などの堅調な経済指標や、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックからの景気回復期待を背景に、IMMポジション集計日となる1日にかけて、ユーロは買い優勢となった。その後は、ドイツ4月小売売上高が市場予想を下回った他、ラガルド総裁を始めとする欧州中央銀行(ECB)当局者によるユーロ高牽制の思惑が、ユーロの上値を抑えた。また、良好な米経済指標を受けたドル高圧力も強まり、週末4日にかけてユーロは対ドルで約3週間ぶり安値となる1.2104ドルまで急落した。但し、米雇用統計が冴えない結果となり、再びドル売りに振れたことで、1.2165ドルまで値を戻す展開となった。
ポンド、ネットポジションが約21%急減
ポンドは対ドルで2万4,125枚の買い越し(ネットロング)となった。先週比では6,534枚の大幅な減少となる。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC GBP投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比ほぼ変わらず、売り建玉(ショート)はプラス19.5%となった。ショートポジションが大幅に急増したことから、ネットポジションの急減に繋がった。
【ポンドポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 64,193 | 64,204 | 0.0% |
---|---|---|---|
ショート | 33,534 | 40,079 | 19.5% |
ネット | 30,659 | 24,125 | - |
【ポンドポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
64,193 | 64,204 | 0.0% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
33,534 | 40,079 | 19.5% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
30,659 | 24,125 | - |
英国では新型コロナウイルスからの経済・金融正常化が進むとの期待や、住宅価格指数が約7年ぶりの高い伸びを示したことなどが好感され、ポンドに買いが入った。1日にポンドは対ドルで3年2カ月ぶりの高値となる一時1.4249ドル近辺まで上昇した。尚、1.4300ドル近辺は、2014年7月から2020年3月までの下落幅に対して半値戻しの水準となる。その後は、英5月製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値が速報値から下方修正された他、強い米経済指標を受けてポンドは売りに押される展開となった。週末4日には、冴えない米雇用統計を受け、1.4162近辺まで値を戻して取引を終えた。
主要7通貨はまちまちの展開に
円(JPY)、ユーロ(EUR)、ポンド(GBP)、豪ドル(AUD)、スイスフラン(CHF)、カナダドル(CAD)、NZドル(NZD)の7通貨では、ネットポジションの増減が入り混じる、まちまちの展開となった。その他の通貨のポジションは下記の通り。
【その他通貨ポジション】
通貨 | 建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
AUD | ロング | 55,098 | 55,385 | 0.5% |
---|---|---|---|---|
ショート | 55,907 | 57,310 | 2.5% | |
ネット | -809 | -1,925 | - | |
CHF | ロング | 12,223 | 13,940 | 14.0% |
ショート | 13,426 | 13,616 | 1.4% | |
ネット | -1,203 | 324 | - | |
CAD | ロング | 84,183 | 89,467 | 6.3% |
ショート | 39,372 | 40,695 | 3.4% | |
ネット | 44,811 | 48,772 | - | |
NZD | ロング | 24,446 | 24,684 | 1.0% |
ショート | 15,861 | 18,757 | 18.3% | |
ネット | 8,585 | 5,927 | - |
【AUDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
55,098 | 55,385 | 0.5% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
55,907 | 57,310 | 2.5% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-809 | -1,925 | - |
【CHFポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
12,223 | 13,940 | 14.0% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
13,426 | 13,616 | 1.4% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-1,203 | 324 | - |
【CADポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
84,183 | 89,467 | 6.3% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
39,372 | 40,695 | 3.4% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
44,811 | 48,772 | - |
【NZDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
24,446 | 24,684 | 1.0% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
15,861 | 18,757 | 18.3% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
8,585 | 5,927 | - |
release date 2021.06.07
主要先進国の中で、カナダとニュージーランドの中央銀行が、2022年の利上げを示唆した。今まさに、世界各国で金融政策の潮目の変化が見られ始めている。足元で市場が特に注目しているのは、グローバル金融をリードする米国のテーパリングである。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がテーパリングの必要性に言及すると見られていたのが、8月26日から28日に開催が予定されているジャクソンホール会議だ。世界各国の中央銀行総裁などが一堂に会する同会議では、世界経済や金融政策をテーマに議論が交わされる。FRB議長が講演することが多く、2010年にはベン・バーナンキ議長(当時)が金融政策の方針変更を示唆したことから、市場関係者から高い注目を集める重要イベントである。もっとも、4日に発表された雇用統計が冴えなかったことから、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)までテーパリング開始に向けた議論は活発化しないとの声も聞こえる。他方で、FOMCで参考資料とされる地区連銀報告(ベージュブック)では、新型コロナウイルスのワクチン接種が普及して景気回復が進む一方、強まる物価上昇圧力に警戒感が示された。物価上昇基調にある米国では、6月10日にCPIが発表される予定だ。早期テーパリング観測の再燃もしくは後退を巡り、市場のボラティリティが高まることに期待したい。
作成日
:2021.06.07
最終更新
:2021.06.07
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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