作成日
:2021.05.19
2022.04.20 12:27
米大手仮想通貨(暗号資産)取引所であるCoinbase, Inc.【以下、コインベースと称す】は、資金調達のために12億5,000万ドル相当の社債を私募発行することを検討していると発表した。
コインベースは2026年6月1日を満期に適格機関投資家から出資を募ることを計画しており、米証券法に基づいて転換シニア債(Convertible Senior Note)と呼ばれる社債を発行する方針だ。この転換シニア債は他の種類の債券よりも高い優先度で償還を受ける権利を有すると同時に、ある一定の条件下で対象企業の普通株と交換することが可能だという。
今回、コインベースは転換社債を発行することで投資家の権限や経営の自由度を維持しながら低コストでの資金調達を実現し、同社のバランスシートを健全化することを目的としているようだ。具体的に、コインベースはこの資金を運転資金および設備投資を含む一般的な企業活動に利用すると説明している。コインベースは先月ナスダック(Nasdaq)に上場したばかりでキャッシュフローがプラスであることを考慮すると、転換社債の発行は異例だと言えるが、これに対してあるアナリストは金利が低い時期に資金調達を行うことは賢明な選択だと評価した。
コインベースの株価は軟調な値動きを続けており、初値から3分の2となる所まで下落している。コインベース経営陣が株式を大量売却するなど、経営面での不安を予感させる動きも生じているが、この資金調達計画がどのような影響を及ぼすのか、今後も同社の取り組みを見守っていきたい。
release date 2021.05.19
出典元:
ニュースコメント
転換社債による資金調達を拡大する企業
転換社債は主にアーリーステージのスタートアップ企業が用いる資金調達手段として認識されてきたが、最近では様々な企業に利用され始めている。昨年は新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大で資金難に直面した多くの企業が転換社債を発行しており、その発行数が記録的な水準に達したという。今年に入ってからは約10億ドル相当のビットコインを購入したMicroStrategyや、大量のビットコインを保有するSquare(スクエア)を始めとする主要な仮想通貨関連企業が転換社債を発行して大規模な資金調達に成功している。このような状況下で、投資家側も転換社債への投資を拡大しており、債券市場に大量の資金が流入してきているようだ。一方で過去には、FXブローカーであるForex.comを運営するGainが転換社債発行の発表後に株価下落に見舞われるなど、転換社債は株価を希薄化させるリスクも持ち合わせているといえる。この資金調達におけるトレンドがどのような変化をもたらすのか、今後もこれら企業の動向に注目していきたい。
作成日
:2021.05.19
最終更新
:2022.04.20
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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