作成日
:2021.05.03
2021.06.08 12:37
米商品先物取引委員会(CFTC)は30日、27日火曜日時点の建玉報告を公表した。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)通貨先物市場における投機筋の通貨別ポジションは下記の通り。円、ネットポジションが大幅増
円は対ドルで4万8,509枚の売り越し(ネットショート)であった。先週比では11,310枚の大幅な増加となったが、3月16日時点で約1年ぶりに円ショートに転じて以降、円の売り越しが7週間続いている。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC JPY投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(円ロング)が前週比プラス11.5%、売り建玉(円ショート)はマイナス9.5%となり、積み上がっていた円ショートが取り崩される形となった。
【円ポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 26,617 | 29,673 | 11.5% |
---|---|---|---|
ショート | 86,436 | 78,182 | -9.5% |
ネット | -59,819 | -48,509 | - |
【円ポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
26,617 | 29,673 | 11.5% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
86,436 | 78,182 | -9.5% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-59,819 | -48,509 | - |
27日時点で投機筋は円ショートポジションを縮小しているが、ドル円相場は26日の週初からドル高円安の流れとなり、週末30日には4月13日以来の109円35銭まで値を戻している。背景としては、ドル円相場と強く連動している米10年債利回りが、30日までに1.626%まで上昇したことが挙げられる。また、米バイデン政権のインフラ投資や教育などを支援する「米国家族計画」がおおむね市場予想通りであったことが買い安心感に繋がった他、良好な米国経済指標が相次いだことも好感された模様だ。その他、27日に日銀による2021年度のコアCPI見通しの引き下げにより、金融緩和の長期化観測が浮上したことが、円売りに繋がったようである。
ユーロ、大きな変化は見られず
ユーロは対ドルで8万967枚の買い越し(ネットロング)となった。先週比では159枚増と、ほぼ変わらずであった。20日時点の建玉報告においては、それまで取り崩しが続いていたロングポジションが反転増加したが、27日時点では投機筋によるユーロの売買動向に明確なトレンドが表れていない状況だ。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC EUR投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比プラス1.7%、売り建玉(ショート)はプラス2.7%となり、ロング・ショートポジションともに増加したため、全体としては大きな変化が見られなかった。
【ユーロポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 197,137 | 200,415 | 1.7% |
---|---|---|---|
ショート | 116,309 | 119,448 | 2.7% |
ネット | 80,828 | 80,967 | - |
【ユーロポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
197,137 | 200,415 | 1.7% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
116,309 | 119,448 | 2.7% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
80,828 | 80,967 | - |
27日にラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁が欧州経済に対して前向きな発言をした他、28日にはパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がテーパリングは時期尚早と言及した。これらの発言を受け、27日のIMMポジション集計前後でユーロ高の流れが続き、29日にユーロは対ドルで約2ヶ月ぶりの高値水準とする1.2150まで上昇した。しかしながら、30日にはユーロ圏第1四半期GDPが軟調な結果になった。また、FRBが物価指標として注目するPCEデフレーターなどの米経済指標が好調であった他、月末特有のドル需要が高まった模様であり、ユーロは1.2000ドル近辺まで急落する展開となった。
ポンド、ショートポジションが大幅減少
ポンドは対ドルで2万9,218枚の買い越し(ネットロング)となった。先週比では4,040枚の増加となる。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC GBP投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比マイナス1.9%、売り建玉(ショート)はマイナス14.4%となった。ネットロングの増加とショートポジションの大幅減少に鑑みると、投機筋はポンドの先行きに強気の見通しを持っている模様だ。
【ポンドポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 61,053 | 59,917 | -1.9% |
---|---|---|---|
ショート | 35,875 | 30,699 | -14.4% |
ネット | 25,178 | 29,218 | - |
【ポンドポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
61,053 | 59,917 | -1.9% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
35,875 | 30,699 | -14.4% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
25,178 | 29,218 | - |
英国では新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチン接種が順調に進捗すると共に、ロックダウンの段階的解除が進み、他の欧州諸国よりも早期の景気回復期待が高まっていることが、ポンドのサポート要因となっている。また、FRBの金融緩和政策の長期化を意識したドル売りを受け、ポンドは対ドルで節目の1.4000ドルに向けて上昇する展開となった。しかしながら、週末30日には米ドル買い需要が高まったことを受け、ユーロと同様に大幅下落した。
主要7通貨でネットポジション増加
円(JPY)、ユーロ(EUR)、ポンド(GBP)、豪ドル(AUD)、スイスフラン(CHF)、カナダドル(CAD)、NZドル(NZD)の7通貨では、全般ドル安の影響を受け、全ての通貨でネットポジションが増加した。その他の通貨のポジションは下記の通り。
【その他通貨ポジション】
通貨 | 建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
AUD | ロング | 56,723 | 59,735 | 5.3% |
---|---|---|---|---|
ショート | 58,529 | 61,145 | 4.5% | |
ネット | -1,806 | -1,410 | - | |
CHF | ロング | 11,264 | 11,116 | -1.3% |
ショート | 12,906 | 11,802 | -8.6% | |
ネット | -1,642 | -686 | - | |
CAD | ロング | 53,824 | 56,675 | 5.3% |
ショート | 40,578 | 40,953 | 0.9% | |
ネット | 13,246 | 15,722 | - | |
NZD | ロング | 21,695 | 25,852 | 19.2% |
ショート | 17,373 | 18,873 | 8.6% | |
ネット | 4,322 | 6,979 | - |
【AUDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
56,723 | 59,735 | 5.3% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
58,529 | 61,145 | 4.5% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-1,806 | -1,410 | - |
【CHFポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
11,264 | 11,116 | -1.3% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
12,906 | 11,802 | -8.6% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-1,642 | -686 | - |
【CADポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
53,824 | 56,675 | 5.3% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
40,578 | 40,953 | 0.9% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
13,246 | 15,722 | - |
【NZDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
21,695 | 25,852 | 19.2% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
17,373 | 18,873 | 8.6% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
4,322 | 6,979 | - |
release date 2021.05.03
日本がゴールデンウィーク期間中の3日の週は、世界各国で重要指標の発表が相次ぐ。特に、米国では3日に4月のISM製造業景況指数が、7日には4月の雇用統計の発表を控えている。投機筋の円ポジションが依然としてショートに傾いている中、これらの経済イベントをきっかけにその反動が入るリスクには注意する必要がある。しかしながら、足元で良好な米経済指標がドル買いに繋がっているだけに、その動きが続くか注目したい。また、6日には英国の中央銀行であるイングランド銀行が金融政策委員会(MPC)を開催する。同国ではワクチン接種が進捗し、景気回復期待が高まる中、景況感も改善しており、当局の経済金融に対する見方によっては、投機筋による売買動向に変化が生じるかもしれない。その他、7日にはカナダで4月の新雇用者数が発表される。カナダ中銀は2021年の経済成長率見通しを引き上げる一方、完全雇用に達するまでにはかなりの時間を要すると言及しており、同指標をきっかけに投機筋によるカナダドル買いが続くか注目したい。
作成日
:2021.05.03
最終更新
:2021.06.08
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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