作成日
:2019.05.08
2021.08.31 15:26
中国最大のメッセージングアプリケーションであるWeChatが、同アプリケーション上での小売業者などによる仮想通貨決済を禁止することが明らかになった。
WeChatが発表した新ポリシーは、中国人民銀行が定めるオンラインバンキングやクレジットカード取引に関する規制に準拠し、違法な仮想通貨取引への関与を排除する目的で定められたという。今月31日から小売業者は、WeChat上での仮想通貨による決済機能の利用ができなくなるとされているが、ユーザー間送金などの個人利用には影響ない模様だ。
これまで中国政府は、人民元の切り下げを実施するなど、法定通貨の価値を特定の水準に保つことで貿易政策を進めてきたため、それを妨げる可能性がある仮想通貨に対しては、非常に厳しい姿勢を貫いてきた。実際に中国政府は、ICO(イニシャルコインオファリング)に加え仮想通貨取引所の運営も禁止し、中国は海外の仮想通貨取引所へのアクセスをブロックするなど、仮想通貨を排除する動きに出ている。そのため、仮想通貨決済ソリューションとして広く利用されるWeChatにも、政府からの圧力が掛かっている可能性があることは、想像に難くないと言えよう。
仮想通貨取引が認められていない中国では、WeChatのような決済ソリューションが、仮想通貨取引の場として利用されていたが、それも長くは続かないだろう。個人間のP2P(ピア・ツー・ピア)決済機能を活用すれば、理論的には継続可能であるものの、WeChatが中国政府の意向を無視して、その状況を黙認するとは考えられない。しかしながら、全世界に10億人以上のユーザーベースを抱えるWeChatも、多大な影響力を持っていることは間違いなく、今後、仮想通貨分野での事業展開があることに期待して注目していきたい。
release date 2019.05.08
反仮想通貨の方針を掲げる中国政府は、最近、国内から仮想通貨関連事業を徹底的に排除する構えを見せており、今年4月には、マイニング事業の禁止を検討しているとのニュースが報道されたばかりだ。今回のWeChatによる決定も、その流れを汲んだものだと言えるが、バイナンスのCEOであるChangpeng Zhao氏は、このことが長期的には、中国での仮想通貨普及を推し進める原動力になると、楽観的な見解を示している。確かに中国の仮想通貨需要は、年々高まりを見せており、抜け道となっている仮想通貨のOTC(店頭取引)サービスでは、ステーブルコインがプレミア価格をつけるなど、その兆候がよく見て取れる。WeChatPayやAliPayを中心とした電子マネーによる決済ソリューションが広く利用される中国では、仮想通貨との親和性も高いと考えられるため、一刻も早い仮想通貨市場の開放が望まれていると言えよう。
作成日
:2019.05.08
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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