作成日
:2018.12.18
2021.08.31 15:27
今月14日、金融庁(Japan Financial Services Agency, JFSA)は、第11回仮想通貨交換業等に関する研究会で、仮想通貨取引の新しいフレームワークの制定やICO(イニシャルコインオファリング)を管理するための規制原案について議論し、その報告書を提出している。今回の議論では、報告書にも記載されている過去10回に渡る研究会の勧告に大きな反論はなく、金融庁はこの草案を基に規制を進める見通しだ。
今年1月に発生したコインチェックのハッキング事件や、9月に発生したZaifのハッキング事件を受けて、ハッキング被害への対策が主な議題のひとつとして挙げられているが、報告書の中で金融庁は、仮想通貨取引所に秘密鍵の管理強化などを義務付ける方針であることを示した。また金融庁は、顧客保護の観点から、取引所が顧客資産と返還資金の合計額以上の純資産を保持することで、ハッキングのリスクに備える必要があると言及している。これに加えて、草案では、取引所の倒産リスクを考慮したアウトラインを制定することも考えられているという。
急激に変化するテクノロジーや自主規制団体と協力することの重要性を認識していることを説明した上で、金融庁は、関連事業者に対して、今年10月に正式に自主規制団体として認定した日本仮想通貨交換業協会への入会を求めている。このことによって、自主規制の要件に沿ったシステム開発を促す狙いがあるという。報告書では、事業者が自主規制に従わない場合、既存の登録事業者や新しい申請に対して、金融庁が認可の取り消しや申請を拒否する可能性があることが示唆されている。
報告書の中では、仮想通貨交換事業の継続を一時的に認められているみなし事業者についても触れられており、現在、コインチェック株式会社(本社:東京都渋谷区渋谷3-28-13 渋谷新南口ビル3F
)、株式会社LastRoots、みんなのビットコイン株式会社の3社がそれに該当するとの説明がある。みなし事業者は、積極的な広報活動で事業を拡大しているが、多くのユーザーが、これらの企業が登録事業者ではないことを認識していない問題を金融庁は指摘している。登録が済んでいない事業者に関しては、事業拡大やリスティングする仮想通貨を増やすことは禁止されており、また、新しい顧客を獲得したり、それを求める行為や宣伝活動は認められていない。ICOに関しては、有価証券と同様の規制対象となる可能性があり、金融庁は、行政官庁の対応を求めているという。その商品のストラクチャにもよるが、仮想通貨は、金融商品取引法または資金決済法の下、規制されることが有力だ。これに加えて、金融庁は、ICOの際には、第三者機関による事業・財務状況のスクリーニングが対象となる事業者に実施することを提案している。仮想通貨のカストディ事業については、現行の法律の管理下にないため、登録制のシステムや内部統制を維持するシステムの導入、取引所管理者と顧客資産の分離、ハッキング被害に対するポリシー発行、償還資金の保持など、新しい規制が草案に盛り込まれている。
報告書に記載されている他の案の中には、匿名通貨のリスティング規制、デリバティブ商品の取引、証拠金取引に関するものもあり、規制は仮想通貨市場全体に及ぶ網羅的なものとなりそうだ。
release date 2018.12.18
日本は、世界の仮想通貨市場の中でも、最も規制が進んだ市場と言われているが、その評価は金融庁や関係官庁の弛まぬ努力の成果だと言える。これまで金融庁は、有識者を集めて、仮想通貨交換業等に関する研究会を実施することで、実態の把握や有効な規制案の検討などを行ってきた。今年11月に開催された、第10回の研究会では、世界的なコンセンサスの形成と広い意味で定義付けを行う目的のため、仮想通貨から仮想通貨への名称変更などが提案されている。加えて、ハッキング被害への補填原資の準備として、顧客資産の仮想通貨をホットウォレットで保有する場合、それと同等以上の仮想通貨を別途保有することを義務付ける案も議論されている。この研究会は、今回の第11回を以って終了との決定が下されており、近々、金融庁は、規制の実施へと移行する。日本の仮想通貨規制は厳しすぎるとの見方もあるが、最終的に金融庁はどのような判断を下すのだろうか。引き続き動向に注目していきたい。
作成日
:2018.12.18
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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