作成日
:2017.08.10
2021.08.31 15:23
8月10日、シンガポール金融管理局(Monetary Authority of Singapore)【以下、MASと称す】は、投資家に対して、イニシャル・コイン・オファリング(デジタル通貨やトークン発行による資金調達、ICO)への投資に関する注意喚起を促した。
MASは、1週間前に、ICOを規制する立場であることを表明している。
MASは、今回の声明で、投資家に対し、デジタルトークンのICOや投資スキームに関するリスクを十分に理解した上で、正しい知識を持ち判断するように勧告した。
ICOは、独自のデジタルトークンを売却することで資金調達が行われ、通常、デジタルトークンは、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を通して販売される。デジタルトークンの販売者は、オンライン上のホワイトペーパーにICOに関する情報を公開し、投資家は、このホワイトペーパーを通して、ICOの詳細についての情報を取得することができる。MASは、投資家に対し、投資を行おうとするICOに関する投資内容の詳細を認識することが重要であることを提唱した。
また、通常、デジタルトークンはICOを通じて提供されるものであるが、他の投資スキームも存在していることや、これらの投資スキームがシンガポール国外で行われる場合やオンライン上で行われているため、信ぴょう性の確認が難しく、詐欺に遭うリスクが高いこと、さらには、ICOが失敗した場合、販売者を追跡して資金を回収することは困難であることも指摘されている。
デジタルトークンの発行者の実績は不明なこともあり、このような場合はトラブルが起こりやすいリスクや、流通市場では取引可能であっても、流動性不足により、投資家がトークンを現金化できないリスク、さらに、デジタルトークンの取引所やプラットフォームがMASの規制の対象外となり、最悪の場合、デジタルトークンの市場自体が存在せず、トークンが無効になるリスクを保有していることについても注意を呼びかけた。
MASは、これらのリスク以外にも、非現実的な高利益を約束する他の投資スキームのような詐欺の可能性や、高額の手数料の請求、OneCoinのようなマルチ商法(マルチレベルマーケティング, MLM)詐欺に該当する恐れもあること等を指摘し、投資家に対し、ICOに関して慎重になるべきだと警告している。
さらに、トークンが悪用される可能性についても警告しており、MASは投資家自身が制度の規制や警告リストを確認し、疑わしい提案である場合は、警察に報告することを促している。
ICOに関する一連の問題は、なにもシンガポールだけで起こっている問題ではない。ICOトークンに関する規制は、今後日本国内でも、課題となるであろう。
release date 2017.08.10
作成日
:2017.08.10
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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