作成日
:2023.06.28
2023.06.28 17:30
2023年6月17日、Ethscriptions(イースクリプション)と呼ばれるプロトコルが公開されました。
Ethscriptionsは、イーサリアム(ETH)の新しいプロトコルで、従来のNFTとは異なり、スマートコントラクトを介さずにNFTを発行できます。ビットコイン(BTC)のOrdinals(オーディナルズ)を参考にしており、現在の仮想通貨(暗号資産)市場で注目を集めています。
当記事では、Ethscriptionsの概要を説明した上で、人気のコレクションや取引方法、仕組みなどを解説します。
Ethscriptionsは、イーサリアムの新しいプロトコルです。総合音楽サイト「Genius.com」の共同創設者であるTom Lehman氏によって開発され、2023年6月17日に公開されました。
なお、Tom Lehman氏は、Twitter(ツイッター)上では「Middlemarch」のアカウント名で活動しています。
画像引用:Ethscriptions
Ethscriptionsは、ビットコイン上でNFTや独自トークンを発行できる「Ordinals Protocol」を参考に開発されました。
Ordinals Protocolは、BTCの最小単位Satoshiにシリアル番号を付与し、テキストや画像データなどを紐づけるプロトコルです。Inscriptionと呼ばれる短い命令文をブロックチェーンに直接書き込み、独自トークン(FT)やNFTの発行を可能にします。
Ethscriptionsを利用することで、画像データなどを全てブロックチェーン上に記録したNFTを発行できます。Ethscriptionsは、イーサリアム版のOrdinalsとなる未来が期待されています。
Lehman氏は、自身のTwitterアカウントを通じ、「プロトコルのローンチから18時間で約3万点のNFTが発行され、大きな成功を納めた」と報告しています。
With almost 30k Ethscriptions in <18 hours, the launch was a huge success!
— Middlemarch (@dumbnamenumbers) June 17, 2023
Thank you for seeing the massive potential here!
I am on Ethscriptions 24/7, but I need your help!
DM @proroketh to join our protocol Twitter chat. Ideas, bug reports, NO alpha, NO trading, NERDS ONLY! pic.twitter.com/udKdsVT0L8
ビットコインOrdinalsが大人気となった経緯から、Ethscriptionsに対する期待も高まっているようです。
Ethscriptionsの公式サイト「ethscriptions.com」では、誰でも簡単にNFTを発行できるツールが公開されています。
画像データを指定された形式に変更し、トランザクションを完結するだけで、NFTが発行できます。Ethscriptions公式サイトによると、指示に従って作業を進めれば、60秒程度でNFTを発行できるようです。
このツールの存在もあり、Ethscriptionsを利用したNFTの発行が拡大しています。
Ethscriptionsは、公開されたばかりのプロトコルです。それほど多くありませんが、すでにいくつかのNFTコレクションが登場しています。
画像引用:Ethereum Punks
Ethereum Punksは、CryptoPunksを模倣した作品です。当記事執筆時点(2023年6月23日)で、Ethscriptionsにおける最大のNFTコレクションとなっています。NFTの発行総数は、1万点に限定されています。
画像引用:OpenSea
Scribesは、TwitterユーザーのJon_HQ氏が手がけるジェネラティブNFTです。同氏がTwitterでリリースを告知したところ、大きな反響を呼びました。
ジェネラティブNFTとはデジタルアートの一種で、アルゴリズムや数学的な処理でランダムに生成される要素を含みます。それぞれ異なる背景や装飾品、表情などの要素を持っています。
画像引用:OpenSea
Ethereum Rocksは、岩のイラストのNFTコレクションです。イーサリアムの最初期のNFTであるEther Rocksを模倣した作品で、定番のNFTコレクションとなっています。
画像引用:OpenSea
0xEtherealsは、オリジナルピクセルアートのNFTコレクションです。Ethscriptionsが16進数のデータを取り扱っていることから、16種類のデジタルアートをリリースしています。
画像引用:OpenSea
CryptoApesは、猿をモチーフとしたNFTコレクションです。大人気NFTコレクションの「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」から派生したNFTのひとつと考えられます。
Ethscriptionsは従来のNFTと比べて、どのような違いがあるのでしょうか。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
従来のNFTの多くは、NFTのIDと外部データを紐づける仕組みになっています。つまり、画像などのデータは、イーサリアムとは異なる外部ストレージに保管されているということです。
従って、保管先のサーバーがダウンしたり、データが消えてしまえば、NFTは機能しなくなってしまいます。
一方、Ethscriptionsは、NFTのデータをブロックチェーン上に保管します。これは、ビットコインのOrdinals NFTも同じ仕組みです。
Ethscriptionsは従来のNFTと比較すると、より分散化された構造になっています。
従来のNFTは、スマートコントラクトが必要です。スマートコントラクトは、NFTにIDを割り当てて生成する役割を担います。
スマートコントラクトは契約を自動履行するプログラムです。自動販売機でたとえると、「利用者が必要なお金を投入する」「特定の飲料のボタンを押す」という二つの契約条件が満たされた場合に、自動的に「その飲料を利用者に提供する」という契約が実行されます。
対照的にEthscriptionsは、スマートコントラクトが不要です。Tom Lehman氏によると、スマートコントラクトを通じて生成されたNFTよりも、Ethscriptionsの方がより安価にNFTを生成できるとしています。
Ethscriptionsは、次のような仕組みで成り立っています。
Ethscriptionsは、イーサリアムのコールデータを活用した技術です。
コールデータとは、イーサリアムのトランザクションに付随するデータのことで、スマートコントラクトとやり取りする際などに利用されます。
このコールデータに画像などのデータを書き込み、取引可能としたのがEthscriptionsです。考え方としては、ビットコイン上で発行できるOrdinals NFTとよく似ています。
Ethscriptionsを成立させるには、画像データをブロックチェーンに保管できる形にしなければなりません。
Ethscriptionsは、全てのデータを16進数に変換して、ブロックチェーンに書き込むことを必要とします。難しいように聞こえますが、公開されているツールを使えば、簡単に変換が可能です。
16進数は、0から9の数字、AからFまでのアルファベットの組み合わせで数値を表現します。日常的に目にする10進数とは異なり、16で桁がひとつ繰り上がります。コンピュータが処理しやすい形となっています。
Ethscriptionsで使用するデータは、唯一性のあるユニークなデータである必要があります。そのため、重複するデータが使用された場合、NFTが発行されない(無視される)ようになっています。NFTの複製ができない仕組みが採用されており、NFTの唯一性を担保します。
Ethscriptionsは、ビットコインOrdinalsに続く存在だと期待されています。今後の将来性に関わるポイントを紹介します。
OpenSeaでのEthscriptionsの取引高は、570ETHを超えており、米ドル換算では100万ドルを突破しています。
今のところ、Ethereum Punksが主要なNFTコレクションとなっています。今後、さらに人気のNFTプロジェクトが登場すれば、よりEthscriptionsの需要が拡大すると考えられます。
当記事執筆現在(2023年6月23日)、Ethscriptionsは画像以外のデータファイルに対応していません。そのため、現状のEthscriptionsはドット絵のNFTコレクションが主流となっています
しかし、将来的には画像データ以外にも対応する計画となっており、より機能が拡張される見込みです。
Ethscriptionsは現在注目のトピックですが、いくつかの問題点が指摘されています。
イーサリアムブロックチェーンは、慢性的なスケーラビリティ問題に悩まされています。
スケーラビリティ問題とは、ブロックチェーンの処理能力に起因する障害です。ブロックチェーンにトランザクションが集中すると、取引の遅延や手数料の高騰などが発生します。ビットコインやイーサリアムなどのブロックチェーンは、慢性的にスケーラビリティ問題に悩まされています。
Ethscriptionsは、トランザクションと共に生成されるので、スケーラビリティ問題に影響する可能性があります。今後、Ethscriptionsの需要がさらに高まれば、イーサリアムの送金詰まりを引き起こし、ガス代を高騰させてしまうかもしれません。
実際、Ordinalsに関しても急激な需要の高まりにより、ビットコインの取引手数料の高騰を引き起こしました。
Ethscriptionsでブロックチェーンに書き込めるデータは、96KBに制限されています。
シンプルなドット絵であれば問題ないかもしれませんが、より高度なものはNFT化するのが難しいと考えられます。外部ストレージを利用する一般的なNFTと比較して、データ容量が少ないのは問題だといえるでしょう。
Ethscriptionsは、スマートコントラクトを必要としません。逆にいうと、コールデータを使って、シンプルな操作しかできないようになっています。
簡単に発行できる利点はありますが、技術的な制約はユースケースの拡大を妨げる可能性があります。
Ethscriptionsは、OpenSeaなどの既存のマーケットプレイスで取引されています。OpenSeaでは、次の手順でEthscriptionsを取引できます。
以下のリンクをクリックし、OpenSeaに対応するウォレットを接続します。MetaMask(メタマスク)など任意のウォレットを選択します。
OpenSeaのEthscriptions専用ページへアクセスします。
OpenSeaでは、Ethscriptions全体がひとつのコレクションとしてまとめられています。専用ページでは、リストされているEthscriptionsのNFTを確認できます。
画像引用:OpenSea
フィルターやソートを使って、NFTの絞り込みが可能です。条件を選択し、購入したいNFTを探します。
画像引用:OpenSea
欲しいNFTが見つかったら、NFTの購入手続きを進めます。ウォレット内に十分な資金を用意し、トランザクションを承認すれば購入完了です。
画像引用:OpenSea
Ethscriptionsは、ビットコインのOrdinalsを参考にした新しいプロトコルです。イーサリアムのコールデータを活用することで、画像データをブロックチェーン上に記録したNFTを発行できます。
Ethscriptionsは、発展途上にありますが、どのような可能性をもたらしてくれるのでしょうか。今後もその開発活動には注目です。
作成日
:2023.06.28
最終更新
:2023.06.28
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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