作成日
:2023.04.10
2023.04.10 18:27
MT4やMT5は4種類の移動平均線を標準搭載しています。また、MT5ではさらに4つの特殊な移動平均線が追加されました。そこで、これらの移動平均線の意味や人気などを紹介します。
MT4やMT5に移動平均線を適用すると、設定画面で4種類から選択できます。Simpleは単純移動平均線(SMA)、Exponentialは指数平滑移動平均線(EMA)、Smoothedは平滑移動平均線(SMMA)、そしてLinear Weightedは線形加重移動平均線(LWMA)です。
画像引用:MT4
画像引用:MT5
SMAは最も基本的な移動平均線で、計算も分かりやすいのが特徴です。例えば、5日SMAならば、直近5日間の終値の合計を5で割ってグラフを作ります。
しかし、分かりやすく便利な一方で、いくつかの問題点が指摘されてきました。例えば、直近足の終値と古い足の終値を全く同じ価値として計算している点です。直感的には、古い足よりも直近の足のほうが、現在の値動きに大きな影響を与えると予想できます。
また、SMAは計算期間よりも古いデータを計算に含めません。為替レートは過去から現在、そして未来へと続きます。すなわち、古いデータの重要性は次第に小さくなりますが、ゼロではないでしょう。このため、古いデータを計算に含めないと正確性に劣る可能性があります。
これらを克服するために、様々な移動平均線が開発されました。その中でも代表的なのがEMAです。EMAはSMAと比べて2点の違いがあります。
1つ目は、古いデータも計算に含まれることです。例えば、5日SMAの場合、過去6日目以前の古いデータは計算に含まれませんが、EMAは古いデータも計算に含まれ続けます。
2つ目は、直近の終値の大きさを2倍にしていることで、直近データを重視していることがわかります。
SMAとEMAの計算方法は、以下の通りです。なお、数学的な正確さよりも理解しやすさを重視しています。
n日間のSMAを計算するには、過去n日間の日足終値を合計し、n日で割り算します。一方、EMAの計算はSMAに比べてやや複雑になります。n日間のEMAを計算する際、初日に関しては、EMAとSMAは同じ計算をします。しかし2日目以降の計算方法が異なります。
前日のEMAの値に(n-1)を掛け、最新足の値を2倍し、これらの合計を(n+1)で割ります。例えば、5日EMAの場合、前日のEMAの値に4を掛け、最新足の値を2倍し、これを合計して6で割ります。
5日SMAと5日EMAを例にして計算しますと、以下の通りです。
日数 | 終値 | SMA | EMA |
---|---|---|---|
初日 | 103 | ||
2日目 | 102 | ||
3日目 | 103 | ||
4日目 | 100 | ||
5日目 | 102 | 102.00 | 102.00 |
6日目 | 101 | 101.60 | 101.67 |
7日目 | 200 | 121.20 | 134.44 |
5日SMAも5日EMAも、計算するには5日分のデータが必要です。そこで、4日目までの欄は空欄です。5日目の計算方法は両方とも同じなので同じ値が入り、6日目以降に差が出ます。差が分かりやすいよう、7日目の終値を異常値(200)にしました。EMAはSMAより数字が大きくなっており、最新足を敏感に反映しています。
SMAもEMAも為替レートの動きに応じて変化します。EMAは直近の値動きに大きく反応するので上下動が大きくなり、いわゆるダマシが多くなります。そこで、平滑移動平均線(SMMA)は短期的なボラティリティを小さくして、線の動きをスムーズにします。
計算方法はEMAと似ており、前日のSMMAの値に(n-1)を掛け、これに最新足の値を加えてnで割ります。EMAは最新足の値を2倍したのに対し、SMMAは2倍にしません。例えば、5日SMMAの場合、前日のSMMAの値を4倍し、最新足の終値を足してから5で割ります。
最新足の値動きを重視しつつも、EMAほど敏感に反応しないようにして線を滑らかにしています。
また、線形加重移動平均線(LWMA)は、EMAのように直近足だけを重視する方法で良いのだろうか?という疑問を解決する移動平均線です。
例えば、5日LWMAならば、直近足の値を5倍し、その前の値を4倍し、以下同様に3倍、2倍、1倍して合計し、5+4+3+2+1の値である15で割ります。LWMAは計算期間よりも古い為替レートを計算に含めず、また、直近データを過度に重視しない特徴があります。
先ほどと同じ数値例を使用して、SMMAとLWMAも比較します。
終値 | SMA | EMA | SMMA | LWMA |
---|---|---|---|---|
103 | ||||
102 | ||||
103 | ||||
100 | ||||
102 | 102.00 | 102.00 | 102.00 | 101.73 |
101 | 101.60 | 101.67 | 101.80 | 101.40 |
200 | 121.20 | 134.44 | 121.44 | 134.20 |
4つの移動平均線を同時にチャートに表示すると、以下の通りになります。
画像引用:MT5
SMAやEMAは多くの人に利用されています。新規にチャートを開けると、デフォルトで表示されるインジケーターはSMAが多いですし、EMAはそのまま使われているだけでなく、MACD生成のために使用されるなど数多くの用途があります。
では、SMMAやLWMAはどうでしょうか。MT4/MT5に標準搭載されているということは、世界的に見て広く普及していると言えるでしょうか。
これを確認するために、TradingView(トレードビュー)のコミュニティ・スクリプトの投稿数を紹介します。コミュニティ・スクリプトとは、TradingViewのユーザーが自作のインジケーターやストラテジーを自由に投稿できる仕組みです。人気のインジケーターならば、多くの自作ストラテジー等に採用されているでしょう。
結果は以下の通りです。EMAを検索するとエラーになったので「-」にしています。
移動平均線 | スクリプト数 |
---|---|
SMA | 881 |
EMA | - |
SMMA | 35 |
LWMA | 4 |
移動平均線 | スクリプト数 |
---|---|
SMA | 881 |
EMA | - |
SMMA | 35 |
LWMA | 4 |
(*)調査日:2023年3月30日
投稿された創作ストラテジー等のうち、SMAを使用したものは881件ありました。それに比べて、SMMAやLWMAは投稿数がとても少ないことが分かります。このコミュニティは、ストラテジー等を自作できる世界中のユーザーで成り立っています。すなわち、トレード初心者でなく、経験値が高い人の集団です。それでもこれだけ少ないので、SMMAやLWMAは一般的に知られていないといえそうです。
さらに、MT5では4つの移動平均線が新規に採用されました。適応型移動平均線(AMA)・二重指数移動平均線(DEMA)、三重指数移動平均線(TEMA)、フラクタル適応型移動平均(FRAMA)です。
適応型移動平均線(AMA)は、突発的な値動きなどのノイズを排除しつつ、同時にトレンドの変化に適切に対応できるように作られています。
二重指数移動平均線(DEMA)はEMAを改良しており、直近の値動きに対してEMAよりも敏感に反応するように作られています。
三重指数移動平均線(TEMA)はEMAを改良しており、直近の値動きに対してDEMAよりもさらに敏感に反応するように作られています。
フラクタル適応型移動平均(FRAMA)は適応型移動平均線(AMA)を改良しており、強いトレンド発生時はレートに沿うように推移し、レンジ相場では動きがなだらかになります。
4つの移動平均線を同時にチャートに表示すると、以下の通りになります。
画像引用:MT5
これら4種類の特殊な移動平均線についても、TradingView(トレードビュー)のコミュニティ・スクリプト投稿数を確認しましょう。
移動平均線 | スクリプト数 |
---|---|
適応型移動平均線 (AMA) |
34 |
二重指数移動平均線 (DEMA) |
66 |
三重指数移動平均線 (TEMA) |
95 |
フラクタル適応型 移動平均(FRAMA) |
12 |
(*)調査日:2023年3月30日
SMAと比較して概ね10分の1以下という結果になりました。その一方、DEMAやTEMAはSMMAやLWMAより投稿数が多く、EMAよりも反応速度が早いインジケーターの需要があることが分かります。
MT4とMT5では、メニュー名こそ違いはありますが、同じ方法で移動平均線を設定できます。ここでは、MT5を例に移動平均線を設定し、チャート上に適用する方法を紹介します。
メニューバーの「挿入」から「インディケータ」を選択します。MT5で利用できるインディケータのカテゴリーが表示されるため、「トレンド系」、「MovingAverage」の順に選択します。
MT5で新たに追加された以下の4つの移動平均線は、移動平均線と同じくインディケータの「トレンド系」カテゴリーから選択可能です。
移動平均線の設定画面が表示されるため、期間やシフトなどのパラメータや移動平均線の種類、スタイルなどを選択し、「OK」をクリックします。
移動平均線の各種パラメータに関する解説や、詳細な設定方法については以下の記事で詳しく紹介しています。
パラメータの設定が完了すると、チャート上に移動平均線が表示されます。
またナビゲータ内の「指標」にある「トレンド系」カテゴリーから、「Moving Average」をドラッグ&ドロップすることでも移動平均線の表示が可能です。
作成日
:2023.04.10
最終更新
:2023.04.10
短期が中心のトレーダーや中長期が中心のトレーダー、元プロップトレーダー、インジケーターやEAの自作を行うエンジニアなどが在籍。資金を溶かした失敗や専業トレーダーに転身した経験など、実体験も踏まえてコンテンツを制作している。
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