作成日
:2023.04.03
2023.04.03 16:32
イーサリアム(ETH)には多くのレイヤー2があり、開発競争が加熱しています。また、複数のプロジェクトがzkEVM実装に踏み切っており、注目を集めています。
当記事では、zkEVMとは何か、各プロジェクトの最新開発状況やエアドロップなどをまとめて解説します。
イーサリアムでは数多くのDApp(分散型アプリ)が開発されており、ブロックチェーンの中で最大規模です。その一方で、慢性的なスケーラビリティ問題を抱えています。
スケーラビリティ問題とは、ブロックチェーンの処理能力に起因する障害です。ブロックチェーンにトランザクションが集中すると、取引の遅延や手数料の高騰などが発生します。ビットコインやイーサリアムなどのブロックチェーンは、慢性的にスケーラビリティ問題に悩まされています。
レイヤー2はスケーラビリティ問題を緩和する策のひとつです。ポリゴンやオプティミズム、アービトラムなど多数のプロジェクトがイーサリアムのレイヤー2開発に取り組んでいます。
イーサリアムは異なる役割を持つブロックチェーンが階層別に独立して相互通信する「レイヤー構造」になっています。イーサリアム本体はレイヤー1、そしてレイヤー2はスケーラビリティ層と呼ばれ、トランザクション処理を手助けします。
レイヤー2は、トランザクションをイーサリアムの外部で計算し、結果だけをイーサリアムに返すことで効率化します。この技術を使って、ユーザーは高速かつ安価な手数料で送金できます。
レイヤー2で使われている技術には、いくつかあります。
ステートチャネル(State Channel)は、初期のレイヤー2に採用された技術です。ビットコインのライトニングネットワークを応用して、イーサリアムでもペイメントチャネルを用いた仮想通貨取引ができます。
ライトニングネットワークとは、取引速度や手数料問題を解決するために開発された技術です。この技術を使うと、ごく少額の決済も可能です。
プラズマ(Plasma)は、イーサリアムの考案者であるヴィタリック・ブテリン氏によって提案された技術です。親チェーンとそれに接続する子チェーンの構造でイーサリアムの拡張性を高めます。
ロールアップ(Rollup)はプラズマから派生した技術です。プラズマの欠点であったデータ検証の問題を解決することで、安全かつ効率的なトランザクション処理を実現しています。
ロールアップは、イーサリアムのセキュリティ機能を活用しながら、イーサリアムの外部でトランザクションを処理できます。2023年時点で最も有効なレイヤー2の技術であり、イーサリアムのロードマップにも記載されています。
ロールアップには、オプティミスティック・ロールアップ(Optimistic Rollup)とzkロールアップ(Zero Knowledge Rolluup)の2種類があります。
オプティミスティック・ロールアップは、シンプルなロールアップです。EVMに対応しており、アービトラムやオプティミズムなどのレイヤー2で広く採用されています。
zkロールアップは、ゼロ知識証明を使ったロールアップです。
あるコンピュータが、情報を検証するコンピュータに対して、ある事柄は真実だという情報以外を公開しないで真実だと証明するメカニズムを指します。
これは高性能ですが複雑なのがデメリットでした。しかし、zkEVMの登場でEVMへの対応に目処がつき始めており、オプティミスティック・ロールアップの次の技術として期待されています。
2022年から2023年3月にかけて、イーサリアムのレイヤー2はこぞってzkEVMの実装を発表しました。zkEVMは、zkロールアップの機能を生かしたままイーサリアムのEVMを利用できる技術です。
EVMはEthereum Virtual Machineの略称で、日本語ではイーサリアム仮想マシンと訳すことができます。イーサリアムがスマートコントラクトの実行や管理を行うための技術です。EVMはイーサリアムと互換性を高める手段として、他のブロックチェーンにも実装されています。
当記事執筆時点(2023年3月29日)で、zkEVMを実装しているレイヤー2は、主に以下の通りです。ロードマップ(開発計画)やエアドロップなどと併せて解説します。
エアドロップとは仮想通貨の無償配布を指します。知名度向上などを目的として新規プロジェクトが実施する例が多く、仮想通貨をもらうには公式ツイッターをフォローすることなど一定の条件がつく場合もあります。
画像引用:polygon Burn Matic
ポリゴンは最も有力なレイヤー2ブロックチェーンのひとつで、独自仮想通貨MATICを発行しています。
2023年3月27日、ポリゴンはzkEVM対応のソリューション「Polygon zkEVM」のメインネットベータ版を公開しました。
ポリゴンは2022年7月にPolygon zkEVMを発表しました。その後、2022年末にPolygon zkEVMのテストネットを立ち上げ、2023年3月にメインネットのベータ版をリリースしました。
今後、ベータ版に問題がないことが確認されれば、Polygon zkEVMが正式にリリースされる見通しです。
画像引用:matter-labs
マター・ラボ(Matter Labs)は、イーサリアムのレイヤー2ソリューションを開発するプロジェクトです。ポリゴンと同時期に、zkEVM対応のzkSync Era(旧zkSync2.0)メインネットテスト版を公開しました。
メインネットのテスト版公開後、100日以内にzkSync Eraを正式リリースする見込みです。将来的に、zkSync Eraのパフォーマンス向上やzkロールアップを活かした機能の実装を計画しています。
マター・ラボのCEOであるAlex Gluchowski氏は、zkSync Eraの独自仮想通貨の発行計画はないとしています。しかし、Twitter(ツイッター)上では、zkSync Eraのエアドロップが近いとの憶測が一部で出回っています。
画像引用:Scroll
スクロール(Scroll)はイーサリアム向けのzkEVMを開発するプロジェクトで、レイヤー2開発競争の最有力候補ともいわれています。2023年2月27日、スクロールはGoerliテストネットにzkEVMを実装したと発表しました。
スクロールのzkEVMソリューションはテストネットで公開されているのみです。今後はzkEVMの検証やメインネットのリリース、zkEVMの機能強化などが段階的に行われていく予定です。
当記事執筆時点(2023年3月30日)でスクロールは独自仮想通貨を発行していません。今後の計画に関しても特に発表はありません。
しかし、アービトラムと同様に、エアドロップの噂が広がっています。5,000万ドルの資金調達に成功したことから、スクロールによる独自仮想通貨発行の期待が高まっています。
画像引用:STARKWARE
StarkNetはStarkwareが開発するzkロールアップソリューションです。独自プログラミング言語のCairoを採用しており、イーサリアムで利用されるSolidityに変換してStarkNet上で稼働できます。
2023年3月27日、StarkNetは「Starknet alpha v0.11.0」と呼ばれるアップグレードの実施を決定しました。このアップグレードにはCairoのバージョンアップなども含まれています。
StarkNetは完全に分散化された環境でのzkロールアップ実現を目指しています。また、DAOによって運営されており、今後も定期的にアップグレードに関する投票が行われると考えられます。
DAOは、Decentralized Autonomous Organizationの略で、日本語で「分散型自立組織」と訳されます。つまり、中央管理者が存在しなくとも、参加者の活動によって機能する組織を指します。中央集権型の組織と比較して民主的で透明性が高いと見なされており、ブロックチェーンの普及で広く採用されています。
StarkNetは独自仮想通貨STRKのエアドロップを計画しています。既にSTRKは発行されており、どのようにエアドロップされるかが模索されています。初期の投資家や開発者チームに配布されることが決定していますが、それ以外は未定となっています。
画像引用:Immutable X
Immutable Xはブロックチェーンゲームに特化したレイヤー2です。独自仮想通貨のIMXを発行しています。
2023年3月21日、Immutable Xは、ポリゴンを開発するポリゴンラボと協力して、ブロックチェーンゲーム向けのzkEVMを構築すると発表しました。このソリューションは「Immutable zkEVM」と呼ばれます。
Immutable zkEVMは2023年中にリリースされる予定です。開発者向けのドキュメントやソフトウェア開発キット(SDK)などは既に公開されています。
レイヤー2はイーサリアムエコシステムでの存在感を増しており、そのTVLは飛躍的に上昇しています。「l2beat.com」によると、2023年3月末時点でレイヤー2のTVLは過去最高を記録しています。
画像引用:l2beat
TVLはTotal Value Lockedの頭文字をつなげた言葉で、ブロックチェーンやDAppに預け入れられた仮想通貨の総額を示します。この金額は人気のバロメーターとしても使用されます。
今後もブロックチェーンゲームやNFT、DeFi(分散型金融)などの需要が拡大すると予想されているので、しばらくはレイヤー2の需要は拡大していくと考えられます。
また、コインベースがレイヤー2開発に参戦するなど、大手企業も注目しており、開発活動も活発になっていくと予想されます。
イーサリアムはDAppプラットフォームとしてNo1の地位を確立しています。しかし、有力なイーサリアム・キラーが台頭してきており、シェア獲得を狙っています。
イーサリアムキラーとは、将来的にイーサリアムに取って代わる可能性がある仮想通貨を指します。その特徴として、スケーラビリティ問題をある程度解決しており、また、新しい技術を取り入れていることが挙げられます。
例えば、ソラナ(SOL)はイーサリアム・キラーの筆頭として期待されています。将来的に、このような新世代のブロックチェーンが主流となれば、イーサリアムのレイヤー2はお役御免となってしまう可能性もあります。
イーサリアムの強みは、他に類を見ない強力なコミュニティを有していることです。これまで数々の問題に直面してきましたが、コミュニティの力でより良いシステムを実現し続けてきました。レイヤー2の開発も例外ではありません。
zkEVMの開発活動が佳境になってきていますが、これによりレイヤー2、ひいてはイーサリアムがDAppプラットフォームとして進化することに期待です。
作成日
:2023.04.03
最終更新
:2023.04.03
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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