作成日
:2023.02.15
2023.03.16 15:30
Binance(バイナンス)のステーブルコインBUSDが新規発行停止となりました。発行元のパクソスが米ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)から発行停止命令を受けたためです。
今後、BUSDは新規発行されず米ドルの償還が進められるため、最終的に利用できなくなる見通しです。また、この事態を受けてBinanceに対する懸念が広がり、出金が加速しました。
BUSDはBinance(バイナンス)が手がけるステーブルコインです。USDTとUSDCに次ぎ、ステーブルコイン市場で第3位の規模を誇ります。
ステーブルコインとは、特定の資産と価値が連動するように設計された仮想通貨を指します。仮想通貨は価格の上下動が激しくて実用性が低いという課題があり、それを解決するために開発されました。
BUSDはBinanceだけでなくBNBチェーンでも利用されており、米ドルと同じ価値を持つため基軸通貨として重宝されています。なお、開発自体は米国のパクソス(Paxos)が行っており、Paxosは契約に基づいてBinanceのブランド名を使用しています。
2023年2月13日、米ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)は、パクソスに対してBUSDの新規発行停止を命じました。同時に、消費者に対してBUSDを償還するよう促しました。その理由に関して、NYDFSはBinance(バイナンス)とパクソスの関係に問題があったと説明しています。
NYDFSはパクソスにイーサリアム(ETH)上での発行を許可しただけであり、その他ブロックチェーンでは認めていないと主張しています。
BUSDはマルチチェーン対応しており、イーサリアムだけでなくBNBチェーンやアバランチ(AVAX)などで利用可能です。
仮想通貨市場ではブロックチェーンが乱立しています。利便性を確保するため、多くの仮想通貨が複数のブロックチェーンで利用可能となっています。
Binance(バイナンス)はイーサリアム上のBUSDを担保にして、他のブロックチェーンでBUSDを供給しています。NYFDSはその行為を承認しておらず、パクソスが発行したものでもないと指摘しています。その他、パクソスはBUSDに関する定期的なリスク評価を怠ったと主張しています。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米証券取引委員会(SEC)はBUSDが未登録証券に該当するとして、パクソスにウェルズ通知(Wells Notice)を発行しました。ウェルズ通知はSECが法的措置をとる可能性がある場合に、対象の個人や企業に発行する通知です。
証券法は株式や債券などの証券を取り締まる法律です。特定の仮想通貨が証券に該当すると判断された場合、その仮想通貨は証券法によって規制されます。
パクソスは通知の受領を認めていますが、「BUSDは連邦証券法に基づく証券ではないため、SECに同意できない」と反論しています。加えて、「我々はこの問題についてSECと協力し、必要に応じて訴訟する可能性もあります」と方針を示しています。
発行停止命令に対して、パクソスはBUSDの新規発行停止を決定しました。このため、BUSDは段階的に利用できなくなる見込みです。
なお、パクソスは少なくとも2024年2月までBUSDの償還に対応しますので、それまではステーブルコインとしての価値が保たれると考えられます。
Binance(バイナンス)のCEOであるチャンポン・ジャオ氏は、引き続きBinanceでBUSDの通貨ペアをサポートすると語っています。
しかし、同時に今後BUSDのユーザーが減少していくことを見込んで、製品やサービス、通貨ペアの見直しも視野に入れていることを示しています。
BUSDは本来ならば1ドル付近で安定しますが、NYFDSの措置が報道された際にわずかに下落しました。
画像引用:CoinMarketCap
当記事執筆時点(2023年2月14日)では、BUSD価格は1ドル付近に戻っています。パクソスやジャオ氏が顧客資産の安全性をアピールしたこともあり、取り付け騒ぎのような形で価格が崩壊することはありませんでした。
ステーブルコインは価値が安定するように設計されていますが、信用を失えば、価格が崩壊することもありえます。過去には、アルゴリズム型ステーブルコインのUSTが価格崩壊し、数兆円規模の被害が発生したこともあります。
BUSDの新規発行停止が発表された後、Bybit(バイビット)でBUSDが新規上場しました。これによりUSDT無期限契約が可能となり、BUSDが暴落する場合に積極的に利益を狙えるようになりました。BUSDの暴落に備えたい場合は、Bybitで準備できます。
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2023年2月13日、大手メディアのブルームバーグは、同じくステーブルコインを発行するCircle社がBUSDの準備金不足をNYFDSに訴えていたと報道しました。
Circle社はUSDCを発行する米企業で、大手取引所のコインベースと提携しています。USDCは仮想通貨市場で第2位のステーブルコインとして普及しています。
関係者は、ブロックチェーンデータでBUSDの準備金不足が明らかになったと発言しています。真相は明らかではありませんが、パクソス社は1対1の割合でBUSDの価値が担保されていると主張しています。
仮想通貨市場では規制が厳格化されており、オフショア取引所に逆風が吹いています。Binance(バイナンス)も例外ではありません。BUSDが発行停止となったことは、その一端かもしれません。
オフショア取引所とは、規制が緩い第三国で設立された取引所を指します。各国の規制当局の許可を得ずにグローバルに事業を展開できること、厳しい規制に縛られないこと、有利な税制を享受できることがメリットです。
大手取引所FTXが経営破綻して以降、取引所から資金を出金するユーザーが増えています。Binanceも同様の傾向にあり、さらに、BUSDの発行停止で不安が広がって出金が加速しました。ツイッターでもBinanceからの出金報告が投稿されています。
2022年、FTXはハイリスクな経営を行っており、手持ち資金が枯渇して顧客資産を払い出せない状況に陥りました。競合のBinance(バイナンス)が買収による救済を模索しましたが、結局失敗に終わっています。この影響は仮想通貨市場全体に波及しており、CEX(中央集権型取引所)の信頼が揺らいでいます。
各取引所は、顧客の信頼を取り戻すためにプルーフ・オブ・リザーブを公開しています。しかし、Binanceのプルーフ・オブ・リザーブ作成を担当していた監査企業Mazarsは業務を停止しており、Binanceは信頼性確保に苦労しています。
プルーフ・オブ・リザーブは日本語で「準備金の証明」と訳されます。取引所が第三者の監査機関に調査を依頼し、十分な準備金を保有していることを証明します。
当記事執筆時点(2023年2月)において、Binanceはプルーフ・オブ・リザーブを監査機関なしで行なっており、自己監査方式です。このため、Binanceにおける経営の透明性に疑問が残っています。
2022年頃から、Binanceがマネーロンダリングに関与している可能性について報道されています。米検察チームが刑事告発に向けて動いているとの情報も出ていますが、CEOのジャオ氏はこれを不安を煽る行為だと否定しています。
マネーロンダリングは日本語で資金洗浄と呼ばれる行為で、犯罪で得た資金を判別困難にすることを目的とします。仮想通貨は匿名性が高いこともあり、マネーロンダリングに利用されやすいと考えられています。
これが本当であれば、Binanceはサービスを停止する可能性もあり、仮想通貨市場の不安材料となっています。
日本では、USTが価格崩壊したことをきっかけに、世界に先駆けてステーブルコイン規制が改正資金決済法に盛り込まれました。ステーブルコインを扱う事業者を発行者と仲介者の2種類に分け、それぞれが金融庁の監督下で運営します。
そもそも日本国内の取引所は、仮想通貨を自由に上場できません。2023年始めの時点で取引可能なステーブルコインは、仮想通貨を担保にするDAI(ダイ)と金価格に連動するZPG(ジパングコイン)だけとなっています。
また、マネーロンダリングに悪用されないように、送金額の上限を設けることやアルゴリズム型ステーブルコインの規制強化なども検討されています。
アルゴリズム型ステーブルコインは、法定通貨の裏付けなしにアルゴリズムで価格が制御されるステーブルコインのことを指します。通常のステーブルコインと比べると、安定性を失いやすいというリスクがあります。
海外と比較して、日本国内におけるステーブルコインの取り扱いは厳格なものだといえでしょう。
日本国内では、Web3.0の拡大を見越してステーブルコイン利用促進の流れが起きています。ステーブルコインを利用するとDApp(分散型アプリ)で効率的に決済できるため、ステーブルコイン市場が拡大する可能性があります。
Web3.0とは分権化された次世代のインターネット環境を指します。現代の中央集権型インターネット環境(Web2.0)は、大手IT企業が強い影響力を持っています。その一方、Web3.0では個々のユーザーが重要な役割を担います。
Binance(バイナンス)やBNBチェーンのユーザーにとって、BUSDの発行停止は衝撃的な出来事でしょう。Binance側も、基軸通貨のBUSDを失うことは大きな痛手だと考えられます。
米政府機関は、仮想通貨市場に対して強硬な姿勢を見せ始めています。今回はBUSDがターゲットになりましたが、この影響がどのような形で仮想通貨市場全体に波及するでしょうか、今後も米国を中心とした動きに注目です。
作成日
:2023.02.15
最終更新
:2023.03.16
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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