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プルーフ・オブ・リザーブ(PoR)でも安全ではない?その役割や各取引所の対応を解説

プルーフ・オブ・リザーブ(PoR)でも安全ではない?その役割や各取引所の対応を解説

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update 2023.03.16 15:30
プルーフ・オブ・リザーブ(PoR)でも安全ではない?その役割や各取引所の対応を解説

update 2023.03.16 15:30

大手取引所FTXが経営破綻して以降、仮想通貨(暗号資産)市場ではプルーフ・オブ・リザーブの重要性が増しています。

プルーフ・オブ・リザーブとは取引所による準備金残高の証明で、マークルツリーなど新しい技術も導入され始めています。しかし、これは安全性を保証する機能ではなく、過信できません。

プルーフ・オブ・リザーブとは

プルーフ・オブ・リザーブは日本語で「準備金の証明」と訳され、英語のProof of Reserveの頭文字を取ってPoRと表記されることもあります。

その目的は、取引所が十分な準備金を保有していることを証明することです。具体的には、取引所が第三者の監査機関に調査を依頼し、監査結果を公開します。取引所によっては、ウォレットアドレスの詳細などを開示しているところもあります。こうして、準備金の実態を客観的に証明します。

取引所と監査機関の関係

取引所の信頼性を表す

準備金は顧客資金の払い戻し能力に直結するので、それを証明するプルーフ・オブ・リザーブは取引所の信頼性維持のために重要です。ユーザーはCEX(中央集権型取引所)内の資金のやり取りなどを確認できませんので、CEXはプルーフ・オブ・リザーブでユーザーの信頼を得ます。

一方、DEX(分散型取引所)はスマートコントラクトで取引が自動化されていますので、知識があれば誰でも資金の動きを確認可能で、透明性が高いです。

point スマートコントラクト

スマートコントラクトは契約を自動履行するプログラムです。自動販売機でたとえると、「利用者が必要なお金を投入する」「特定の飲料のボタンを押す」という二つの契約条件が満たされた場合に、自動的に「その飲料を利用者に提供する」という契約が実行されます。

中央集権型取引所と分散型取引所の構造の違い

FTXの経営破綻で公開が進む

2022年に大手取引所FTXが経営破綻し、準備金不足で顧客に資金がほとんど戻ってこないと予想されています。その負債総額は100億ドルから500億ドルで、100万人を超えるユーザーが被害にあったと推定されています。

この件を契機として、取引所にプルーフ・オブ・リザーブの公開を求める動きが強まりました。海外取引所の多くはオフショア取引所であって監査は義務ではありませんが、自主的な公開を余儀なくされました。

point オフショア取引所とは

オフショア取引所とは、規制が緩い第三国で設立された取引所を指します。各国の規制当局の許可を得ずにグローバルに事業を展開できること、厳しい規制に縛られないこと、有利な税制を享受できることがメリットです。

プルーフ・オブ・リザーブの信頼度

多くの取引所がプルーフ・オブ・リザーブを公開し始めています。しかし、それで安全が確保されるわけではなく、以下の可能性があります。

取引所が監査機関と結託

取引所は任意の監査機関を選べますから、監査機関と結託して不正確な監査結果を出すかもしれません。

借入による準備金の水増し

プルーフ・オブ・リザーブは定期的に公開されます。リアルタイム情報へのアクセスを提供しているわけでなく、特定時点の準備金状況が公開されます。

このため、特定時点以外の期間については資金状況を確認できず、取引所はこの仕組みを悪用できます。例えば、短期的に資金を借りて準備金を水増しできます。よって、プルーフ・オブ・リザーブで準備金の額が顧客資産を上回っていたとしても、実態を表していない可能性があります。

スナップショットが公開されるプルーフ・オブ・リザーブ

取引所を規制しない

海外取引所の中には、規制が緩い国からサービスを提供している例があり、顧客資産の運用や準備金の管理などに関して規制がない場合もあります。FTXが無茶な経営をできたのは、規制が緩かったことが根本的な理由かもしれません。

プルーフ・オブ・リザーブは準備金の透明性を上げますが、取引所を規制することはできません。

監査機関がプルーフ・オブ・リザーブ業務を停止

監査機関のMazarsはBinance(バイナンス)等の調査をしていましたが、2022年12月にプルーフ・オブ・リザーブに関する業務を停止しました。プルーフ・オブ・リザーブは監査と呼べない内容ですが、Mazarsが関与していることであたかも監査と同様の効果があると誤認されたことが理由です。

プルーフ・オブ・リザーブは取引所の一面を確認できますが、信頼性は高くないことが改めて示されました。

各取引所の対応

FTXの経営破綻を受けて、取引所はプルーフ・オブ・リザーブを公開し始めました。主要な取引所の対応は以下のとおりです。

Binance

2022年11月末、Binanceは新しいプルーフ・オブ・リザーブのシステムを公開しました。いち早くマークルツリーを導入しており、ユーザーは自身のウォレット内の資産が存在するか確認できるようになりました。

BinanceのWebサイトで、メニュー「Wallet(ウォレット)」の下にある「Verification(検証)」というボタンをクリックすると確認できます。

Binanceにおけるプルーフ・オブ・リザーブのシステム Binanceにおけるプルーフ・オブ・リザーブのシステム

画像引用:Binance

Binanceは2022年12月22日付で最新のレポートを公開しており、各仮想通貨に対して100%以上の準備金を保有していると主張しています。しかし、ローンなどを除くと準備金比率は100%を割るとの批判もあります。

Bybit

Bybitは2022年12月10日付で準備金の詳細を公開しました。ビットコイン(BTC)など4通貨の準備金比率が100%を超えていることを報告しています。

Bybitのプルーフ・オブ・リザーブの報告

画像引用:Bybit

OKX

OKXは2022年12月20日付で公開しました。ビットコイン(BTC)などで100%以上の準備金を保有していることを証明しました。しかし、負債が除外されていないことが批判されています。

Gate.io

Gate.ioはプルーフ・オブ・リザーブの公開前にCrypto.comから32万ETHを受け取っていたこともあり、準備金の状況が良くないと噂されていました。これに対してGate.ioは、誤送金によるものでCrytpto.comに返却したとしていますが、真相は明らかではありません。

Gate.ioは顧客資産に対して100%以上の準備金を保有していると主張しています。しかし、最新のプルーフ・オブ・リザーブの公開は2022年10月19日となっており、その後の状況は不明です。

Huobi

Huobiも準備金の詳細を公開していますが、複数の取引所との間で大量のイーサリアム(ETH)をやり取りしていたことから、他から資金を借りて粉飾した可能性があるとの憶測があります。

業界標準となるプルーフ・オブ・リザーブ

取引所によるプルーフ・オブ・リザーブの公開は、当たり前になりつつあります。

マークルツリーの導入

プルーフ・オブ・リザーブの方法として、マークルツリーが導入され始めています。

マークルツリーとは、大規模な情報を暗号化しながら整理できる技術です。プルーフ・オブ・リザーブにマークルツリーを導入すると、取引所の準備金とユーザー全員のウォレット残高が一致するか検証できます。

point 暗号化とは

暗号化とは、情報を誰にも理解できない文字列に変換することです。仮想通貨送金などにも利用されており、暗号化された情報は秘密鍵で元に戻すことができます。

例えば、ある時点のウォレットのユーザーIDと残高を含むA、B、C、Dというデータがあったとすると、マークルツリーはそれを暗号化しながら合算していきます。最終的に全てのデータがひとつになるまで続けられます。

マークルツリーを使ったプルーフ・オブ・リザーブ例

つまり、取引所はマークルツリーを使って、ユーザー全員のウォレット残高の総計を求めています。その値よりも取引所の準備金が多いことを第三者の監査機関が承認すれば、プルーフ・オブ・リザーブが完了となります。

マークルツリーを導入する利点としては、プライバシーを守れることや、ユーザーが自分のユーザーIDを使って自分の資金がきちんと管理されているかを確認できることなどが挙げられます。

CoinMarketCapが対応

仮想通貨情報サイトであるCoinMarketCapでは、取引所のプルーフ・オブ・リザーブ情報を表示できます。取引所のランキング画面で名前の横に「取引所の準備金データあり」のマークがあり、それをクリックすると詳細情報を確認できます。

CoinMarketCapによるプルーフ・オブ・リザーブ情報

画像引用:CoinMarketCap

このマークは、取引所がプルーフ・オブ・リザーブに対応していることを意味します。取引所を選ぶ基準のひとつとして利用できます。

日本国内の取引所は安全か?

日本は取引所の規制が最も厳しい国のひとつとして知られています。取引所は金融庁に登録する義務があり、当局が定める規制に準拠する必要があります。

例えば、顧客資産をコールドウォレットで管理することや、顧客の円資産を信託銀行で保管することなどが義務化されています。

その結果、FTXは経営破綻で顧客資産の償還が難しくなっている中、日本法人のFTX Japanは顧客資産の100%以上の準備金を保有しています。日本国内の取引所は信頼性が高いので、プルーフ・オブ・リザーブを気にする必要はないかもしれません。

なお、これらの規制が完備される前の2018年に、コインチェックとザイフで大規模なハッキング事件が発生しました。しかし、最終的に資産は顧客に返金されています。

knowledge コインチェックとザイフのハッキング事件

2018年にコインチェックは約580億円、ザイフは約67億円のハッキング被害を受けました。両社とも顧客資産をホットウォレットに保管していたことが問題だったと考えられます。これらの件がきっかけとなり、日本国内の仮想通貨規制が進みました。

まとめ

取引所にとってプルーフ・オブ・リザーブは新しい試みです。プルーフ・オブ・リザーブが業界標準となりつつあるのは良い傾向ですが、不十分で改善の余地があります。海外取引所を利用する際には、プルーフ・オブ・リザーブを確認してみることをおすすめします。


Date

作成日

2023.01.26

Update

最終更新

2023.03.16

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。

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