作成日
:2023.01.17
2024.06.12 23:29
大手取引所Bybit(バイビット)は、独自の仮想通貨(暗号資産)ウォレット「Bybit Wallet」をリリースしました。このウォレットは、BybitユーザーのDApp利用に必要な機能を備えています。
本記事ではBybit Walletの機能解説に加えて、メタマスクなどと比較した際のメリット・デメリットを解説します。
Bybit Wallet(バイビットウォレット)は大手取引所Bybitが提供する仮想通貨ウォレットで、Bybitのホームページから簡単に作れます。通常のウォレットと同様にBybit Walletにもアドレスが割り当てられており、仮想通貨の送受金ができます。
従来のBybitのアカウントでもアドレスが付与されますので、従来のアカウントとBybit Walletは機能が一部重複しています。この2つの違いは下の図のとおりです。
従来のアカウントはBybit内の各種サービスを利用するための機能です。このため、分散型アプリ(Dapp)などBybit以外のサービスを利用するには、外部ウォレットへの送金が必要です。しかしBybit Walletを使えば、外部ウォレットに送金しなくてもDapp等にアクセスできますので、送金の手間を省けます。
なお、Bybit Wallet自体はBybit内のサービスですので、ウォレットの管理方法は従来のアカウントと同様になります。これに対して、メタマスクなど分散型ウォレットの場合は、ユーザーがウォレットに関する全ての権限を持っており、管理も自分自身で行います。
Bybit Web3はBybitユーザーがWeb3.0環境に接続するためのサービスであり、そこで中心的な役割を果たすのがBybit Walletです。
Web3.0とは分権化された次世代のインターネット環境を指します。現代の中央集権型インターネット環境(Web2.0)は、大手IT企業が強い影響力を持っています。その一方、Web3.0では個々のユーザーが重要な役割を担います。
Bybit WalletをDAppに接続すると、DeFi(分散型金融)など様々なサービスを利用できます。なお、Bybit WalletやBybit Web3はBybitの管理下にありますので、Web3.0ではありません。「Web3.0環境に直接接続できるサービス」という意味です。
Bybit Walletでは秘密鍵を自分で管理する必要がありません。Bybitがユーザーの代わりに管理しており、最高クラスの信頼性とセキュリティの提供を約束しています。
秘密鍵とはウォレットの所有者が管理する文字列で、仮想通貨の送金の際に必要となります。秘密鍵を他人に漏らすと、仮想通貨が不正に流出する可能性があります。
ウォレットには秘密鍵を自分で管理するタイプもあり、代表的な例はメタマスクです。
Bybit Wallet(バイビットウォレット)を使うと、以下のような機能を利用できます。すなわち、Web3.0世界のサービスを幅広く利用できるイメージです。
クロスチェーンブリッジとは、複数のブロックチェーンをつないで規格の異なる仮想通貨を相互に利用可能にする技術です。この技術が普及すれば、ブロックチェーンを跨いで仮想通貨をやり取りできます。ブロックチェーンが乱立している現在、クロスチェーンブリッジは重要な存在です。
このうち、分散型アイデンティティ管理は2023年第1四半期中に公開される予定で、その詳細は不明です。
画像引用:Bybit
Bybit Walletはイーサリアム(ETH)とBNBチェーンに対応しており、接続可能なプロジェクトの例は以下の通りです。
名称 | 内容 |
---|---|
ApeX Protocol | デリバティブ取引が可能なDEX |
MakerDAO | ステーブルコインDAIを発行するDeFiプロトコル |
Bored Ape Yacht Club | デジタルアートの人気NFTコレクション |
Stepn | Move to Earnの代表格 |
Decentraland | メタバースを舞台としたブロックチェーンゲーム |
メタマスク等を使って自分でWeb3.0サービスに接続する場合、詐欺の問題が常に付きまといます。ブロックチェーン上のサービスの中には、開発チームが開発を放棄して事実上捨てられているものや、初めから詐欺を目的として開発されたものが多数存在します。このため、注意していても一定のリスクがあります。
そこで、Btbit Web3でその種のDappを検索してみたところ、検索結果一覧に表示されませんでした。すなわち、Bybit Web3はDappに無条件に接続できるのではなく、一定の条件を設定しています。
正当なプロジェクトに資金を投じても、損することは往々にしてあります。しかし、詐欺プロジェクト等に接続できないように工夫されており、安全性に配慮しています。
下の一覧表を見ますと、全部で3ページしかありません。Bybitが安全性等を確認したのち、Dappが徐々に追加されると期待できます。
画像引用:Bybit
Bybit Web3でIDOが実施されます。IDOとはイニシャルDEXオファリングの略称で、各種プロジェクトが新規に仮想通貨を上場させる手続きです。上場前に安く買うことができますので、上場直後に売り抜けて利益を狙ったり、長期的に保有して価格上昇を狙ったりできます。
画像引用:Bybit Web3
第1回のIDOは仮想通貨「3P」で、2023年1月11日から開始されています。
Bybit WalletはBybitユーザーにとって使いやすい仮想通貨ウォレットです。
Dappを使うために資金を外部ウォレットに移動する必要がなく、各種Dappに容易にアクセスできます。また、本物をコピーした詐欺プロジェクトに接続するリスクも大きく減りますので、多くのユーザーにとって魅力的でしょう。
NFTの売買においても、Bybitのマーケットプレイスを使うと、購入者は取引手数料が0%でクリエイターは手数料をもらえます。このため、詐欺プロジェクトを回避できる魅力も手伝って多くのユーザーが集まると予想できます。
Bybitの信用力を背景にして、今後もBybit Walletの利便性は高まっていくと予想できます。
Bybit Walletを使うと、ユーザーは仮想通貨をBybitに預けて管理します。このタイプのウォレットをカストディアルウォレットと呼びます。一方、メタマスクのように全てを自分で管理するタイプをノンカストディアルウォレットと呼びます。
カストディアルウォレットは管理者が管理責任を負うので、ユーザーは難しい知識を勉強する必要がありません。一方、ノンカストディアルウォレットは全てが自己責任となるため、知識が必要です。
Bybit Walletはユーザーネームとパスワード等で利用可能で、秘密鍵の管理も不要です。
カストディアルウォレットは運営管理者が管理していますので、パスワードを忘れても運営管理者に申請するだけで回復できます。
一方、ノンカストディアルウォレットの場合、パスワードを忘れてもシードフレーズで復元可能ですが、シードフレーズを紛失するとウォレット内の仮想通貨を永遠に使えなくなります。
シードフレーズとはランダムに生成された複数の単語の羅列で、リカバリーフレーズとも呼ばれます。ひとたび発行されると変更されることはなく、ウォレットを復元したり、異なるデバイスのウォレットと同期したりする際に利用します。
下の画像はメタマスクのシードフレーズ入力画面で、ウォレットを復活させるにはシーフードフレーズを入力します。アルファベット1文字でも間違えると、永遠に回復できません。
画像引用:メタマスク
カストディアルウォレットの管理者は法令に沿って行動しますので、アカウント作成時に個人情報の提出が求められます。手間がかかりますが、法的に安全な環境でサービスを利用できます。
一方、ノンカストディアルウォレットは誰でも自由にアカウントを作れます。
カストディアルウォレットの多くは、管理者がカスタマーサポートを提供しています。Bybit WalletもBybitが24時間体制でカスタマーサポートを提供しており、困ったことがあれば、カスタマーサポートに連絡すれば対応してもらえます。
ノンカストディアルウォレットの場合は、問題が発生したら自力で解決します。
カストディアルウォレットのデメリットは次の通りです
カストディアルウォレットは、ノンカストディアルウォレットに比べてハッキングに遭う可能性が高いとされています。中央集権型のシステムはハッキング攻撃の対象となりやすく、過去には多数の企業が大規模な被害を受けています。
ハッキングが発生した場合、ウォレット内の資金は返ってこない可能性があります。
一方、ノンカストディアルウォレットにもリスクがあり、フィッシング詐欺等で情報が漏れると、ウォレット内の仮想通貨を全て盗まれる可能性があります。
フィッシング詐欺とは、インターネットにおける詐欺のひとつです。信頼できる企業や団体になりすまして、クレジットカード情報や仮想通貨に関する情報、個人情報を盗みます。仮想通貨市場では様々な詐欺が横行しており、フィッシング詐欺は最も一般的な詐欺手法の一つです。
カストディアルウォレットの場合、仮想通貨を送金するには管理者の承認が必要です。ノンカストディアルウォレットは自分の意思だけで全て行動できますから、カストディアルウォレットは自由度がやや低いといえます。
Bybit WalletはBybitユーザーが気軽に利用できる仮想通貨ウォレットで、将来的に機能が強化されると見込まれています。Bybitの手厚いサポートを受けることができるので、Web3.0やDAppに関心があるBybitユーザーにおすすめです。
作成日
:2023.01.17
最終更新
:2024.06.12
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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