作成日
:2022.08.30
2023.03.16 15:30
Web3.0は既存のインターネットにおける構造を大きく変えると考えられています。仮想通貨(暗号資産)市場では既にトークンエコノミー(仮想通貨を中心とした経済)を取り込んだブロックチェーンを基礎とする分散型のサービスが多数立ち上げられています。
Steem(STEEM)は、トークンエコノミーの力でSNSを作り替えるDApp(分散型アプリ)プラットフォームとして期待されています。最初のDAppとして「Steemit」が立ち上げられており、エコシステムが回り始めています。
今回はそんなSteemの概要やプラットフォーム上の主要なDApp、将来性などについて解説していきます。
Steemはコミュニティに焦点を当てたサービスを構築することを目的としたプラットフォームです。同プラットフォームにおけるサービスでは、クリエイターとユーザーの双方が仮想通貨による利益を獲得できることが特徴的です。
Web3.0関連プロジェクトであるSteemは、ブロックチェーンを活用することで、中央集権型の管理を排除しています。ブロックチェーンを利用してデータを保管しており、透明性の高いシステムを構築することを可能としています。
Web3.0とは、分権化された次世代のインターネット環境を指します。現代の中央集権型インターネット環境(Web2.0)は、大手IT企業が強い影響力を持っています。その一方、Web3.0では個々のユーザーが重要な役割を担います。
通常のSNSでは、運営する企業が個人情報などを含むデータを管理しているので、データ漏洩やプライバシーの侵害などが発生する可能性があります。しかし、分散型の構造を持つSteemは、このようなリスクに強いと考えられます。
Steemでは2016年にSteemitがリリースされてから、続々と新たなサービスを立ち上げられています。主要なサービスとしては、以下のようなものが存在します。
SteemitはSteem上で最初に立ち上げられたサービスです。Steemitでは、個人や企業がブログのように記事を提供することができます。
既存のサービスと異なり、Steemitには広告がなく、広告主の影響を受けずに各々が自由に情報を発信することが可能です。クリエイターとユーザーは貢献度に応じて報酬を獲得します。
Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)などのSNSでは、個人の投稿では収益化が難しいと考えられていますが、Steemitにおける収益化のハードルは比較的低いといえるでしょう。
DtubeはSteem上に構築されたYouTube(ユーチューブ)のような動画配信プラットフォームです。
Youtubeと異なるところは、Steemitと同じく、クリエイターとユーザーの双方に仮想通貨で報酬が配布されるところです。
具体的には、クリエイターはいいねやコメントなどのエンゲージメントを得ることで評価されて報酬が加算されます。一方、ユーザーはコメントなどのアクションを起こしてコミュニティを活性化することに貢献し、報酬を獲得することができます。
SteemはDAppの基盤となるブロックチェーンです。このようなサービスを提供する上で、同ブロックチェーンは、以下のような特徴を持っています。
Steemはブロックを検証して承認するコンセンサスアルゴリズムに、DPoS(デリゲート・プルーフ・オブ・ステーク)を採用しています。DPoSは、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)の派生系とされるコンセンサスアルゴリズムで、ガバナンストークンを用いた仕組みで全体を統制します。
仕組み自体はPoSと似ていますが、委任者であるウィットネス(Witness)を選定するところが異なります。仮想通貨の保有者は投票システムを通じて、ブロック承認の権限を持つウィットネス(Witness)を選定することができます。最も多くの票を獲得したウィットネスと投票した仮想通貨保有者は、ブロック生成に関与したことに対して報酬を受け取ることができます。
多くのブロックチェーンがスケーラビリティ問題に悩まされる中、Steemのブロックチェーンは、DAppをサポートする高速で安価なトランザクションを実現しています。
スケーラビリティ問題は、ブロックチェーンの処理能力に起因する障害です。ブロックチェーンにトランザクションが集中すると、取引の遅延や手数料の高騰などが発生します。ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などのブロックチェーンは、慢性的にスケーラビリティ問題に悩まされています。
Steemのブロック生成時間は、3秒でビットコインやイーサリアムよりも高速です。既に300以上のDAppと100万人のユーザーをサポートすることが可能となっています。また、Steemにおけるトランザクションは、手数料が無料です。
Steemは、3つの仮想通貨を発行しています。それぞれ異なる役割を持っており、エコシステムを成立させるために活用されています。
STEEMはプロジェクトの軸となる仮想通貨です。
通常の仮想通貨として取引所で現金化したり他の仮想通貨に交換することができます。STEEMはブロックチェーンを正常に稼働させるために、ウィットネスへの経済的なインセンティブとしても活用されています。
STEEMはSteem PowerやSteem Dollarに交換することも可能です。ちなみにSteemitにおけるクリエイターへの報酬は、Steem PowerとSteem Dollarの半々で支払われます。
STEEMの最大供給量は設定されておらず、年間9.5%の増加率で供給されます。この増加率は毎年0.5%ずつ減少し、最終的に0.95%に留まるようになっています。
すなわち、STEEMの供給量は無限ですが、急激にインフレが加速しない仕組みになっています。
新規発行されるSTEEMの分配は、75%がクリエイターへの配布用に「リワードプール」に送られ、15%が既存のトークンホルダーへの報酬、残りの10%がDPoSでブロックを検証するウィットネスに付与されます。
Steem Powerは、Steemitで利用される内部通貨です。Steem Powerを保有していると、同仮想通貨での利息収入を得ることができたり、投稿やコメントで与える影響が大きくなったりします。
外部の取引所などでは取引できず、現金化するには一度STEEMに両替する必要があります。しかし、Steem Powerには制限がかけられており、少しずつしかSTEEMに交換できないようになっています。
Steem Dollarは、1SD=1ドルとなるように設計されたステーブルコインです。Steem Powerと違い、外部で取引可能となっているので容易に現金化することができます。取引禁止期間などの制限も設けられていません。
Steem Dollarを保有するとSteem Powerと同様に利息収入を得ることができます。また、Steem Dollarは独自のマーケットプレイスで消費することも可能です。
取引所に上場された2016年当初、STEEM価格は、100円以下の価格帯で推移していました。その後、500円近くまで急騰することとなりましたが、直ぐに暴落して当時の最安値を記録しています。
画像引用:CoinMarketCap
それからSTEEM価格は、定期的に高騰と暴落を繰り返すようになります。2017年から2018年にかけては、大きく3回のサイクルで乱高下することになりました。特に2017年後半からのうねりは大きく、STEEM価格は史上最高値となる900円に達しています。
2019年以降は、小さな高騰はありつつも、横ばいな動きを見せています。2022年に入ってからは、30円から50円の価格帯でレンジ相場の様相を呈しています。当記事執筆時点(2022年8月)でSteem価格は、約30円程度となっています。
最大発行枚数が設定されていないことも相まって、STEEM価格は継続的に下落することとなるかもしれません。特にクリエイターがSteem Powerの現金化を急げば、制限がかけられているとはいえ、売り圧力が高まりやすいと考えられます。
Steemは革新的な存在であることは間違いありません。
報酬が魅力的なこともあり、そのエコシステムは拡大しています。仮想通貨界隈のエンジニアやインフルエンサーなどもSteemitに記事を投稿し始めており、この流れが続けば更なる飛躍も期待できます。
最近では、仮想通貨分野以外のコンテンツも増えているので、一般層へ波及するのは時間の問題かもしれません。
しかし、仮想通貨市場全体が低迷する中、STEEM価格も低迷しています。STEEMはクリエイターへの報酬として利用されているので、価格の低迷が続けば、質の高いコンテンツが出てこなくなる可能性があります。
これを懸念したSteemは、STEEM価格を上昇させるために、Steemitの報酬をバーン(焼却処理)する仕組みを導入しています。クリエイターは、コンテンツの報酬受け取り設定にバーンアドレスを追加することで、任意でSTEEMを部分的にバーンできます。
仮想通貨のバーン(Burn)とは、仮想通貨を永久に使えなくする行為を指します。仮想通貨を特定のウォレットに送ることで実行できます。そのウォレットの秘密鍵は、開発者を含めて誰も知りません。すなわち、送金したら最後、その中の仮想通貨は二度と使えなくなるため、あたかも紙幣が焼却(バーン)されたのと同様になります。なお、このウォレットのアドレスを「バーンアドレス」と呼びます。
一見、クリエイターにとってメリットがないように思えます。しかし、これに賛同するクリエイターは、「#burnsteem25」のハッシュタグを使用できます。STEEMの価格維持への貢献が可視化されるので、コミュニティからのエンゲージメント(好意的な反応)を獲得しやすくなります。
Steemitではコンテンツの質が重視されるので、「#burnsteem25」のハッシュタグをつけても、無条件でエンゲージメントが集まるわけではありません。それでも、エコシステムの改善に貢献する姿勢は、コミュニティ内で高く評価されるでしょう。
既に、多くのクリエイターが「#burnsteem25」のハッシュタグを利用しています。長期的に見て、STEEM価格の上昇に貢献するかもしれません。
なお、STEEMは一枚岩ではなく、分裂を経験しています。トロン(TRON)の創始者であるジャスティン・サン氏が、Steemitの開発会社を買収しました。これを受けて、システムの透明性が損なわれる懸念が生じ、コミュニティが分裂しました。
サン氏の行動に不信感を抱いたコミュニティは、敵対的ハードフォークを仕掛けることで、ブロックチェーンを分岐させることに成功しています。結果的にHive(HIVE)と呼ばれるプロジェクトが誕生しました。
HiveはSteemitを移植する形で「Hive Blog」を立ち上げています。Steemitのコンテンツも引き継ぎ、ほぼ同じ内容のサービスを提供しています。異なる点としては、独自仮想通貨のHIVEを発行することや、分散型の構造を重んじていることが挙げられます。
当記事執筆時点でSteemの時価総額は200位以下であるのに対して、Hiveは100位前後に位置しています。Steemは規模的にHiveに負ける形となっており、その立場を失いつつあります。
下は、Hiveのチャートです。2021年の高値は330円付近、直近価格は70円台です。一方、STEEMの2021年の最高値は150円台で、直近価格は30円付近です。HIVEはSTEEMより優勢です。
画像引用:CoinMarketCap
時価総額で見ても、HIVEの優勢は変わりません。HIVEの時価総額は320億円付近であるのに対し、STEEMは120億円ほどとなっています。
今後、両者の方針の違いがどのような結果を生むかは分かりませんが、コミュニティが分裂したことは、ひとまずSteemにとっては痛手となっています。
STEEMは、日本国内の取引所で取り扱いはありません。そのため、Binance(バイナンス)やBybit(バイビット)などの海外取引所で取引することになります。
日本語対応の海外取引所でのSTEEMの取り扱い状況(USDT建て現物・デリバティブ)は、下記の通りです。
取引所 | 現物 | デリバティブ |
Binance(バイナンス) | 〇 | × |
Bybit(バイビット) | × | × |
Gate.io(ゲート) | 〇 | × |
CoinEX(コインイーエックス) | 〇 | × |
MEXC(メクシー) | 〇 | × |
BingX(ビンエックス) | × | × |
Bitget(ビットゲット) | × | × |
Binance(バイナンス)
現物 | デリバティブ |
〇 | × |
Bybit(バイビット)
現物 | デリバティブ |
× | × |
Gate.io(ゲート)
現物 | デリバティブ |
〇 | × |
CoinEX(コインイーエックス)
現物 | デリバティブ |
〇 | × |
MEXC(メクシー)
現物 | デリバティブ |
〇 | × |
BingX(ビンエックス)
現物 | デリバティブ |
× | × |
Bitget(ビットゲット)
現物 | デリバティブ |
× | × |
Web3.0は新しいインターネットのコンセプトとして広がりつつあります。仮想通貨市場では、それを具現化するために、様々なサービスが立ち上げられています。しかし、従来の大手サービスを押し退けて、普及しているものはまだありません。
そこで鍵になるのが、トークンエコノミーによる持続可能な報酬システムの構築だと考えられます。Steemitでは個人でもひとつのコンテンツで数十ドルから数百ドル相当の報酬を獲得できるようになっていますが、それが持続できるかはまだ未知数だといえるでしょう。
Steemは果たしてWeb3.0分野のモデルケースとなるのでしょうか。今後もWeb3.0界隈での動きには注目です。
作成日
:2022.08.30
最終更新
:2023.03.16
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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