作成日
:2022.08.12
2023.03.16 15:30
2022年8月9日、ブロックチェーンゲームDragomaで大規模な詐欺被害が発生しました。その被害総額は、350万ドルと推定されています。突然のサービス終了で、独自仮想通貨(暗号資産)DMAの価格は、99%以上暴落しました。
これは出口詐欺と呼ばれる詐欺の一種で、仮想通貨コミュニティでは「ラグプル(rug pull)」と呼ばれています。Twitter(ツイッター)上では、Dragomaでの被害報告があがっています。
Dragomaは、ポリゴン(MATIC)上に構築されたブロックチェーンゲームです。GameFiやSocialFiの要素を含んでおり、自身をWeb3.0の「ライフスタイルスポーツアプリ」と位置付けています。プレイヤーは、歩いてドラゴンの卵を孵化させ、トレーニングし、戦わせ、勝利を目指します。
画像引用:Medium
Move to Earnは、「運動して稼ぐ」をコンセプトにしたブロックチェーンゲームです。歩いたり走ったりすると、仮想通貨を得られます。専用のNFTを購入する必要があるものや、無料でできるものまで幅広くあります。STEPNの流行もあり、多数のMove to Earnゲームがリリースされています。
Dragomaは他のブロックチェーンゲームと同じく、NFTや独自仮想通貨を発行していました。独自仮想通貨DMAは、エコシステム全体のガバナンストークンです。
しかし、開発チームの出口詐欺により、Dragomaは突然終了しました。
仮想通貨における出口詐欺とは、開発チームが資金を集めた後に、プロジェクトを放棄したり、資金を持ち逃げしたりする行為です。DeFi(分散型金融)関連プロジェクトでも、度々発生しています。
Dragoma開発チームは、公式ホームページを閉鎖しただけでなく、Twitterの公式アカウントやホワイトペーパーなどを消去しました。また、ユーザーはアカウントへのログインもできなくなっている模様です。
ちなみに、出口詐欺は英語で Rug Pull(ラグプル)と呼ばれます。Rugは「じゅうたん」で、Pullは「引っ張る」です。絨毯の上を歩いていたら、後ろからいきなり絨毯をはがされて転んでしまう様子を示しています。
ブロックチェーン分析会社のPeckShieldは、Dragomaの出口詐欺による被害総額が350万ドルに達すると分析しています。別の報告では、42万USDT(42万ドル相当)と88万MATIC(78万ドル相当)の資金が、中央集権型の取引所に送金されたことが明らかになっています。
Dragomaの創設者は米国のKen Graesesi氏で、CTOはAustin Wilkie氏だとされていますが、詳細はわかっていません。
Twitter上では、ゲームへの期待が高まる一方、リリース前から疑いの目が向けられていました。その大きな理由は、報酬の大きさです。上手に遊べば1日で12.5MATIC(1,400円ほど)稼げるとの試算で、何かおかしいとの指摘が見受けられました。
その他、Dragomaが出口詐欺を謀ったことに対して、「早すぎる」や「2日で約4億円の売上があったことに驚いた」などの声が挙がっています。加えて、単純にMove to Earnのゲームとして期待していたユーザーは、サービス終了に失望したとの旨のコメントしています。
Dragomaのガバナンストークン「DMA」は、QuickSwapやOpenOceanで取引可能です。大手取引所のMEXCも、DMAとUSDTの通貨ペアの取り扱い開始を発表していましたが、この騒動をきっかけに取引を停止しています。
DMA価格は、2022年6月後半から7月半ばにかけて、10円前後の水準で低調な動きでした。その後、30円付近まで上昇すると、モバイルアプリのリリースなどを後押しに急騰しました。しかし、8月8日に99%以上暴落し、ほぼ無価値になっています。
画像引用:CoinMarketCap
日本人ユーザーも注目していたブロックチェーンゲームであることから、Dragomaの出口詐欺は大きなインパクトとなりました。しかし、仮想通貨市場では日常的に出口詐欺が発生しています。過去の例として、以下のケースが報告されています。
Teddy Doge(TEDDY)は、ドージコイン(DOGE)の流れを汲むミームコインで、BNBチェーン上で開発されました。開発チームが450万ドル相当のTEDDYをBNBに交換しており、出口詐欺を謀ったと考えられています。このケースは、プロジェクトを破棄したか明確ではないことから、「ソフト・ラグプル」と位置付けられています。
Teddy DogeはICO(イニシャルコインオファリング)で数十万ドル規模の資金調達に成功したプロジェクトでしたが、この騒動で、TEDDY価格はほぼ無価値になっています。
ミームコインとは、インターネットミーム(主にSNS経由でインターネット上で流行した考え方やネタなど)を使った名前で、ジョークや遊びとして作られた仮想通貨全般を指します。ミームコインには、ドージコインのほか柴犬コイン(SHIB)など多数の種類があります。
画像引用:CoinMarketCap
Squid Game(SQUID)は、韓国の人気ドラマ「イカゲーム」をモチーフにしたプロジェクトです。Squid Gameはその人気に便乗し、独自仮想通貨のSQUIDを1円で販売したところ、短期間で驚くべき急騰を記録しました。
急騰の理由に関しては、開発チームがSQUIDの売却をプログラムで禁止したからだといわれています。最終的に開発チームはホームページやTwitterの公式アカウントなどを消去した上で、手持ちのSQUIDを売り抜けています。
その結果、SQUIDの価格はほぼゼロになりました。被害額は2億円から3億円に達すると推定されています。
画像引用:CoinMarketCap
規制が緩い仮想通貨市場では、詐欺に遭うリスクが付き纏います。そのリスクを完全に排除することは難しいですが、事前のリサーチで軽減することは可能です。
例えば、出口詐欺を働くプロジェクトには、いくつか特徴があります。例えば、代表者や開発チームの顔写真などが掲載されていない、ホワイトペーパーの内容がでたらめ、ロードマップ(開発計画)が貧弱だったり公開されていなかったりなどです。これらに当てはまるプロジェクトが必ずしも、詐欺を働くというわけではありませんが、判断材料になります。
仮想通貨への投資を考えているのであれば、事前のリサーチが必須です。
作成日
:2022.08.12
最終更新
:2023.03.16
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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