作成日
:2022.07.25
2023.03.16 15:54
仮想通貨(暗号資産)市場では、NFTやメタバースなど、新しい技術や概念が次々と登場しています。そして一般的に、その内容を正確に理解するのは難しいです。
このような背景から、仮想通貨やブロックチェーンを解説する本も登場しています。田上智裕氏の『いちばんやさしいWeb3の教本』は、次世代のインターネット環境であるWeb3.0に焦点を当てて、一般のビジネスパーソンにもわかりやすく解説する書籍です。しかし、期待とは裏腹に、Twitter(ツイッター)やアマゾンの書籍レビューで炎上してしまいました。
『いちばんやさしいWeb3の教本』は、株式会社techtecのCEO田上智裕氏が書き下ろした書籍です。田上氏は、Web3.0分野の若手起業家です。
画像引用:amazon
「いちばんやさしく」「いちばんくわしく」をコンセプトに、Web3.0の特徴や仕組み、歴史、開発手法、収益構造、関連サービス、日本における課題と将来性などが解説されています。
Web3.0とは、次世代のインターネット環境を指します。ブロックチェーンは、分散型のネットワークによって構成されており、Web3.0の基礎になると考えられています。
『いちばんやさしいWeb3の教本』は、2022年7月20日に株式会社インプレスから出版されました。
田上智裕氏は、株式会社リクルートホールディングスに在籍した経歴を持ちます。2018年に独立して株式会社techtecを立ち上げ、現在は同社のCEOを務めています。株式会社techtecは、ブロックチェーン分野で様々な事業を展開しています。例えば、Play to Earnの派生系であるLearn to Earn(学んで稼ぐ)関連のサービス、Web3.0の教育サービス、ブロックチェーン分野用の英語教育サービスなどです。
その他、田上氏は、一般社団法人DeFi協会の代表理事として活動しています。また、日本政府の仮想通貨やブロックチェーン関連の会合にも出席した経歴を持っています。
画像引用:株式会社techtec
なお、一般ユーザーが書いた本だったら、間違いがあってもこれほど炎上することはなかったでしょう。ブロックチェーンやWeb3.0のプロと見なされる著者であったことが、炎上の一因だと予想できます。
『いちばんやさしいWeb3の教本』は、その内容から各所で炎上しています。当記事執筆時点(2022年7月)では、以下のような批判が確認されています。
アマゾンでは、購入者のカスタマーレビューが好ましくない状況になっています。星1つの評価が最も多く、総合評価で1.9となっています。
画像引用:amazon
Amazonにおいて、同書籍は「ビジネスとIT」や「暗号理論」などの分野で売れ筋となっていますが、その内容が正確ではないことに批判が集まっています。
特に、第一章の「Web3がインターネットの世界を変える」において、歴史や関連技術の認識が間違っていると指摘されています。例えば、既存のインターネット環境で利用されるTCP/IP、SMTP、HTTPなどは、自由に利用できるプロトコルです。しかし、あたかも大手IT企業によって独占されているような表現があり、これらが批判の対象となっています。
プロトコルとは、コンピュータで情報をやり取りするために定められた規格です。身近なものとしては、インターネット接続に用いるTCP/IPやメールの送受信に利用するSMTPなどのプロトコルが存在します。これらのプロトコルを定めることで、様々なデバイスで情報通信が可能となります。
ちなみに、Web3.0の書籍として網羅的に情報が説明されているとの評価もあります。しかし、技術的な正確さに欠けるとのレビューが多数です。
Twitter上でも、『いちばんやさしいWeb3の教本』や田上智裕氏に対する批判が出ており、内容の酷さを強調するようなツイートが数多く投稿されています。
例えば、東京大学大学院の情報学環教授を務める暦本純一氏は、「GPT3が書いた本ってこれですか?」と、痛烈に批判しています。GPT3とは、人間のような文章を生成する文章生成言語モデルです。すなわち、世の中に流布する言説を適当に組み合わせた文章なのか、との皮肉を込めています。
GPT3が書いた本ってこれですか? https://t.co/OactrggFxA
— Jun Rekimoto : 暦本純一 (@rkmt) July 21, 2022
その他、ウェブ界隈で有名な堀正岳氏は、編集者が本の内容を精査しなかった可能性に言及し、出版会社の株式会社インプレスにも非があると意見しています。加えて、多くのツイッターユーザーが、田上氏が政府主催の会合などに参加していることを不安視する声を挙げています。
この炎上を受けて、出版元の株式会社インプレスは、書籍の内容の見直しを発表するとともに、以下の文章を掲載しました。「今後の対応につきましては、修正文の掲載、書籍の回収なども含めて検討しておりますので、方針が決まり次第発表させていただきます。」
最終的に、出版停止と書籍の回収が視野に入っていることが分かります。
『いちばんやさしいWeb3の教本』が炎上したことは、日本における仮想通貨の課題を表しているかもしれません。
同書籍は、アマゾンの試し読み機能を使って、序盤の章を読むことが可能でした。それが多くの人の目に留まり、炎上するに至りました。すなわち、無料公開されていない解説本の中には、誤解を招く解説が数多く含まれている可能性があります。
日本国内における仮想通貨市場の課題としては、以下のようなものがあるでしょう。
仮想通貨やブロックチェーン、Web3.0、メタバースなどは、バズワードとして一気に普及しました。しかし、これらの概念を理解するには、高いITリテラシーを必要とします。
エンジニアや業界関係者、有識者などであれば、理解することは容易かもしれません。しかし、一般的には難しい内容です。多くの人々が、難しい話を抜きにしたわかりやすい解説を必要としているでしょう。
解説本は、一般層に向けて作られるものも多く、正確性よりもわかりやすさを重視することが多々あります。『いちばんやさしいWeb3の教本』も、少なからずそういった要素を含んでいることでしょう。
結果的に、歴史の紹介やIT用語の利用が的確ではないとの批判が集中しました。その批判の多くは、業界に従事する人や高い関心を持つ人からのものです。書籍の内容が、エンジニアや有識者などに受け入れ難いものとなったのは、本の特質を踏まえると、ある意味やむを得なかったのかもしれません。
正確だけれども理解しやすい、そのような教育ソースは乏しいと言わざるを得ません。
仮想通貨の情報は、基本的に英語で発信されます。日本語に対応している、日本でマーケティングを行なっている、日本発のプロジェクトなども存在しますが、ごく少数です。
このため、日本語で流通している情報の多くは、英語を翻訳したものが軸となるでしょう。しかし、正確性に欠けることが珍しくありません。『いちばんやさしいWeb3の教本』に限らず、他の書籍やちょっとしたプレスリリースなどでも、誤解を生む表現が見受けられることがあります。
現状、正確な情報を得るためには、英語でのリサーチが必須です。
仮想通貨市場では、様々な媒体を通じて毎日新しい情報が流れています。中には間違ったものも存在するので、その取捨選択には注意が必要です。可能であれば、公式の発表やホワイトペーパーなどの一次ソースを参照するのが確実です。また、まとまった情報が欲しい場合、書籍も選択肢としてあります。その際、どれを選択するかについて、精査する必要があります。
確実な情報を得るには、英語での情報収集が必須です。英語での情報収集が困難な場合は、情報の正確性について、通常よりも慎重に判断する必要があります。
作成日
:2022.07.25
最終更新
:2023.03.16
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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