作成日
:2022.03.18
2024.03.12 20:07
2022年3月14日、日本の大手仮想通貨(暗号資産)取引所のZaifが、コスプレトークン(COT)の取り扱いを開始しました。
日本発の仮想通貨がZaifとSAKURA Exchange BitCoinに上場し、そしてZaifはキャンペーンをしているため、特に国内のTwitter(ツイッター)でコスプレトークンに関する投稿が増加しています。しかし、コスプレトークンの情報量の少なさから、一部では詐欺などの可能性を不安視する声があがっています。直近ではジャスミー(JASMY)の詐欺疑惑が浮上しており、国内の仮想通貨コミュニティは新規上場の仮想通貨に対する警戒心が高まっているようです。では、コスプレトークンはどのような評価を受けているでしょうか。
コスプレトークンは、コスプレイヤー向けウェブサイト「World Cosplay」を運営する株式会社キュアが発行する仮想通貨です。株式会社キュアは日本の企業で、World Cosplayを通じて180カ国で事業展開しており、100万人を超える会員を有しています。また、累計700万枚を超える写真がWorld Cosplayに投稿されており、世界最大級のコスプレコミュニティが形成されています。
コスプレ市場は国内外で成長を続けていますが、コスプレイヤーやカメラマン、衣装などを作る造形師、応援するファンなどを含めて、正当な報酬が付与されていないことやコスプレの認知度の低さなどの問題を抱えています。現在、コスプレトークンはWorld Cosplayにおける投げ銭として利用されていますが、最終的にはこれらの問題を解決することを目的にしています。
また、コスプレトークンは、コスプレイヤーが発行する独自仮想通貨にも利用されます。コスプレイヤーは、コスプレトークンを準備金として「プレイヤーコイン」と呼ばれる独自仮想通貨を発行し、それをファンなどに売り出すことも可能です。プレイヤーコインの使い道としては、限定コンテンツやイベント、ライブ配信等へのアクセス権付与によるファンとの交流、オリジナルショップでのグッズ購入、コスプレイヤーへの投げ銭として利用できます。
従って、コスプレトークンは基軸通貨的な存在であり、このエコシステム全体が大きくなるのに伴って価値が高まっていくと考えられます。World Cosplayは、国内外で人気となっているコスプレイヤーをアンバサダーとして起用し、プラットフォームの利用を拡大しようと試みており、将来的な成長の可能性もあるといえそうです。実際、World Cosplayは複数のSNS上で合計40万人を超えるフォロワーの獲得に成功しています。
コスプレトークンが日本に初上陸したことに対して、中には不安の声を挙げる投資家も存在します。Twitterでは、上場を告知するZaifのコマーシャル動画の質が悪く、コスプレトークンの失望売りが加速したと指摘をする人も出ています。
事実、コスプレトークン価格はZaifに上場した直後に急落しました(下のチャートの強調部分)。当記事執筆時点でコスプレトークン価格は落ち着きを取り戻しており、0.2ドル弱で横ばいになっています。
画像引用:CoinGecko
その他、ザ・サンドボックス(SAND)などの人気ブロックチェーンゲームの仮想通貨が多数あるのに、なぜZaifはコスプレトークンの取り扱いを先にしたのかとの苦言を呈する者も出ています。日本の仮想通貨業界は安全性が確認された仮想通貨しか上場を許可しない方針を示していますが、その選定基準に疑問が投げかけられています。
日本国内の取引所が新規に仮想通貨を上場するには、業界の自主規制団体である日本暗号資産取引業協会による審査を受ける必要があります。米大手取引所コインベースなどの日本参入で、審査の簡略化も検討されているようですが、このプロセスは国内市場の安全性を高めるために有効だと考えられています。
コスプレトークンは、2018年に海外でICO(イニシャルコインオファリング)が実施されており、その後、BITTREXに加えてDEX(分散型取引所)のUniswap(UNI)やQuickSwap(QUICK)に上場しました。しかし、コスプレトークンはマイナーな草コインとしての立ち位置から脱却できずにいます。
草コインとは、主要な仮想通貨を除いた仮想通貨全般を指します。特徴としては、「知名度が低い」「時価総額が小さい」「上場している取引所が少ない(または存在しない)」などが挙げられます。価格が大きく変動する可能性があることから、草コインへの投資はハイリスク・ハイリターンだといえるでしょう。
従って、海外市場でも、コスプレトークンの情報は、公式サイトやSNS、ホワイトペーパー以外あまり出回っていません。ポータルサイトのCoinGeckoでもコスプレトークンは限定的な情報しか開示されておらず、時価総額や仮想通貨市場全体のランキングなどは不明となっています。
ICOが実施された2018年には、世界的なビジネスメディアである「Forbs」やいくつかの仮想通貨メディアがコスプレトークンの特集を行っていますが、英語圏でのコスプレ人気が日本と比較して低いことなどから、同仮想通貨が大きな話題となることはありませんでした。今回、大手取引所に上場されるということでコスプレトークンは脚光を浴びたものの、その情報のほとんどは日本語で発信されています。
海外市場におけるコスプレトークンの知名度は高くありませんが、将来性に全く期待できないというわけではありません。例えば、開発活動に関していえば、コスプレトークンは2021年末にハードフォークを実施して、新しいバージョンのブロックチェーンと仮想通貨を公開しています。今後はDAO(自立分散型組織)に移行することなども計画しており、コスプレトークンの開発活動がより活発になってくる可能性もあるでしょう。
ハードフォークとは、仮想通貨の仕様変更の一種で、元の仮想通貨との互換性がなくなるものを指します。
その他には、運営がコスプレトークンの長期的な成長を促すために、マーケティング予算などで保有する約52%の仮想通貨を2年間ロックアップすることを決定したと発表しました。
これは運営が売り浴びせ行為(ダンプ)を行う意思がないことを示すと同時に、流通量を絞ることになるため、コスプレトークン価格にはプラスになると考えられます。ダンプとは、仮想通貨を売り浴びせて故意に価格を下落させることを指します。開発チームが大量にトークンを保有していた場合、市場価格が0にならない限り売り浴びせることによっていくらでも稼げるという特徴があります。
コスプレトークン(COT)は日本国内の取引所でも購入できますが、取引はあまり活発ではありません。また海外取引所に関しても、ほとんどの取引所がCOTを取り扱っておらず、Bybitのみで現物を取引できます。
日本語対応の海外取引所でのCOTの取り扱い状況(USDT建て現物・デリバティブ)は下記の通りです。
取引所 | 現物 | デリバティブ |
Binance(バイナンス) | × | × |
Bybit(バイビット) | 〇 | × |
Gate.io(ゲート) | × | × |
CoinEX(コインイーエックス) | × | × |
MEXC(メクシー) | × | × |
BingX(ビンエックス) | × | × |
Bitget(ビットゲット) | × | × |
Binance(バイナンス)
現物 | デリバティブ |
× | × |
Bybit(バイビット)
現物 | デリバティブ |
〇 | × |
Gate.io(ゲート)
現物 | デリバティブ |
× | × |
CoinEX(コインイーエックス)
現物 | デリバティブ |
× | × |
MEXC(メクシー)
現物 | デリバティブ |
× | × |
BingX(ビンエックス)
現物 | デリバティブ |
× | × |
Bitget(ビットゲット)
現物 | デリバティブ |
× | × |
Bybit(バイビット)は日本語対応が充実しているため安心して取引できます。
2018年のICOで誕生したコスプレトークンは、草コインとして存在感を示せずにいました。今回、コスプレトークンは、ZaifとSAKURA Exchange BitCoinで取り扱いが開始されたことで注目を集めていますが、これが転換点となるでしょうか。日本以外での知名度はまだ低いという現状がありますが、世界のコスプレ市場は将来的に成長が予想されているだけに、コスプレトークンの今後に期待です。
出典元:
作成日
:2022.03.18
最終更新
:2024.03.12
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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