作成日
:2022.06.10
2023.03.16 15:54
2022年6月7日、米大手仮想通貨(暗号資産)取引所のCoinbaseが、BIT/USDとBIT/USDTの取引サービスを開始すると発表しました。BITは大手取引所のBybitから支援を受けており、現時点でその将来性はどうなっているでしょうか。
BITは、BitDAOのガバナンストークンです。BitDAOはDAO(自律分散型組織)の一つであり、2021年6月に立ち上げられました。主に、DeFi(分散型金融)関連プロジェクトへの支援を目的としています。
BITの発行上限は100億BITに設定されている一方、当記事執筆時点(2022年6月)の供給量は6億BIT弱となっています。時価総額は250億ドル程度となっており、仮想通貨市場全体では300位以内にランクインしています。DAO関連の仮想通貨としては、主要な存在だといえるでしょう。
DAOは、Decentralized Autonomous Organizationの略で、日本語で「自立分散型組織」と訳されます。つまり、中央管理者が存在しなくとも、参加者の活動によって機能する組織を指します。DAOは、中央集権型の組織と比較して、より民主的で透明性の高い存在と見なされており、ブロックチェーンの普及で広く採用され始めています。
BITの使い道は様々ですが、主に以下のような使い方が可能です。
BIT保有者は、出資者としてBitDAOの運営に参加可能です。具体的には、BitDAOに対して提案が可能で、その提案はコミュニティ全体の投票を通じて採否が決められます。投票は1人1票でなく、BIT保有数が投票数となるので、より多く保有しているほど有利になります。小規模な個人などは「デリゲート」と呼ばれる手続きを通じて投票に参加可能です。
BitDAOは、Bybitから大きな支援を受けています。このため、BybitのサービスでもBITを利用可能です。例えば、ローンチパッドやローンチプールに参加するには、主にBITを使用します。ローンチパッドとは、新規上場直前にトークンを買えるサービスであり、ローンチプールとは、新規上場トークンを無償でもらえるサービスです。
その他、積立ステーキングや、デュアル資産投資などでも使用できます。
過去のBIT価格を振り返りますと、トークンが公開されてから順調に上昇しました。2021年10月から11月にかけて、史上最高値となる約3ドルの価格帯にまで一気に上昇しています。その後、ビットコイン(BTC)価格の下落に同調する形で、安値を切り下げながら下落しています。当記事執筆時点(2022年6月)では、0.4ドル前後で推移しています。
画像引用:CoinMarketCap
今回、Coinbaseに上場したことから、Coinbase効果による価格上昇が期待されました。しかし、大きな値動きは観測されていません。仮想通貨市場全体が低迷しており、マイナス要因を無効化するほどポジティブな材料にならなかった模様です。
Coinbase効果とは、Coinbaseへの上場を契機として価格が上昇する現象を指します。他の大手取引所でも、同様の現象が見られます。過去には、分散型のマーケットプレイス「District0x(DNT)」やID承認サービス「Civic(CVC)」などが、Coinbase効果で大幅上昇しました。
2021年8月、BitDAOはIDOで約4億ドルの資金調達に成功しました。これに加え、ヘッジファンド等から巨額の資金を獲得するだけでなく、Bybitからも継続的に支援を受けています。このような背景から、BitDAOは運用資産を拡大させており、その総額は10億ドルを超えています。
BIT価格の長期的な上昇は、BitDAOの運用成績にかかっています。BitDAOは、今後成長が期待されるDeFiやWeb3.0分野に投資する方針であり、投資先プロジェクトの成功に期待がかかります。
Web3.0とは、分権化された次世代のインターネット環境を指します。現代の中央集権型インターネット環境(Web2.0)は、大手IT企業が強い影響力を持っています。その一方、Web3.0では、個々のユーザーが重要な役割を担います。
これまで、BitDAOは様々なプロジェクトに大規模な投資を行なってきました。下の表は、例です。
プロジェクト名 | 内容 |
---|---|
zkDAO | イーサリアムにおけるレイヤー2の開発 |
EduDAO | 大学教育などの支援 |
Game7 | ブロックチェーンゲームの開発 |
PleasrDAO | NFTアートへの投資 |
その他、取引所FTXの独自仮想通貨「FTT」や、イーサリアムなどを保有しています。
メインとなるブロックチェーンであるレイヤー1に対して、それを基礎に構築され、情報処理を手助けする副次的なブロックチェーンをレイヤー2と呼びます。レイヤー2は、レイヤー1のスケーラビリティ問題を緩和します。すなわち、取引承認の遅延や手数料高騰などを回避します。イーサリアムにおけるレイヤー2は、それぞれが独立したプロジェクトとして存在しています。
BitDAOは、開発計画であるロードマップを公開しています。
その中で、ガバナンスや財政管理を優先するとしながらも、将来的に独自ブロックチェーン開発の可能性を示しています。加えて、イーサリアムを基盤とするBITを複数のブロックチェーンに対応させることも示されています。BitDAOは投資を主目的としていますが、これらの開発計画が現実になれば、BITへの好影響を期待できます。
日本国内の取引所はBITを取り扱っていません。そのため、BITを購入するなら、Bybit(バイビット)やGate.io(ゲート)などの海外取引所を利用することになります。
日本語対応の海外取引所における、BITの取り扱い状況(USDT建て現物・デリバティブ)は下記の通りです。
取引所 | 現物 | デリバティブ |
Binance(バイナンス) | × | × |
Bybit(バイビット) | 〇 | 〇 |
Gate.io(ゲート) | 〇 | 〇 |
CoinEX(コインイーエックス) | 〇 | × |
MEXC(メクシー) | 〇 | 〇 |
BingX(ビンエックス) | 〇 | × |
Bitget(ビットゲット) | × | × |
Binance(バイナンス)
現物 | デリバティブ |
× | × |
Bybit(バイビット)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
CoinEX(コインイーエックス)
現物 | デリバティブ |
〇 | × |
MEXC(メクシー)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
BingX(ビンエックス)
現物 | デリバティブ |
〇 | × |
Bitget(ビットゲット)
現物 | デリバティブ |
× | × |
海外取引所は日本語対応が充実しているBybit(バイビット)がおすすめです。
近年、仮想通貨市場ではDAOの運用が一種のトレンドとなっています。中央集権型の組織と比較して、DAOには様々な面で優れた点があるためです。この流れは拡大していくでしょうか。BitDAOは代表的なDAOであり、仮想通貨市場の期待を背負っているだけに、その成功例として真価を発揮することが望まれています。
作成日
:2022.06.10
最終更新
:2023.03.16
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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