作成日
:2022.02.04
2023.03.16 15:54
2022年1月31日、人気仮想通貨(暗号資産)のライトコイン(LTC)を支援するライトコイン財団は、次期大型アップグレードで「ミンブルウィンブル拡張ブロック」(Mimblewimble Extension Block、MWEB)を正式にリリース予定であることを発表しました。
ライトコイン財団は、Twitter(ツイッター)上でミンブルウィンブル拡張ブロックをアップグレードに盛り込む計画だと伝えましたが、この投稿は多くの仮想通貨ユーザーによって拡散されています。日本では取引所での取り扱いもあることから、複数の仮想通貨メディアがライトコインのアップグレードに関して報じています。
ミンブルウィンブル拡張ブロックの実装は、ライトコインの今後を占う重要な資金石となる可能性がありますが、具体的にどのような変化があるでしょうか。
ミンブルウィンブル拡張ブロックは、匿名の開発者であるTom Elvis Judesor氏とビットコイン開発者のジョンソン・ラウ氏によって考案された技術で、ライトコインの匿名性やセキュリティ性能などの向上を目的としています。ミンブルウィンブル拡張ブロックは、約2年間の開発期間の後にQuarkslabの監査を経ており、クライアントソフトウェア(ネットワークを構成するために必要な専用ソフトウェア)であるライトコインコアのバージョン0.21.2に盛り込まれる見通しです。
ライトコインのブロックチェーン上でミンブルウィンブル拡張ブロックが有効化されるには、マイナー(ブロックチェーン上でブロックを検証するユーザー)による投票で一定数以上の賛成を得る必要がありますが、順調にいけば、今後数ヶ月以内にメインネット(本番環境のブロックチェーン)に実装されることになります。
元々、ライトコインはビットコイン(BTC)の技術を応用して開発されたブロックチェーンであり、ビットコインよりも処理性能に優れていることから決済利用に適した仮想通貨だといわれています。ミンブルウィンブル拡張ブロックの開発者であるデイビッド・バケット氏は、「ミンブルウィンブル拡張ブロックが、ユーザーの給料受け取りや日用品・家の購入などにおける機密性保持を可能にする」と評価し、これによりライトコインが世界で最も健全な通貨のひとつになるとコメントしています。
ビットコインから派生したライトコインは、技術的に類似していますが、異なるマイニングアルゴリズム(ブロック生成のルール)を採用しています。結果的にライトコインは、ビットコインがブロック生成に約10分間の時間を要するのに対して、約2.5分間でブロックを生成することが可能となっています。従って、ライトコインはビットコインと比較して、より実用的な仮想通貨だといえるでしょう。
ミンブルウィンブル拡張ブロックは、「ミンブルウィンブル」と「拡張ブロック」の2つのアイディアから成り立つアップグレードで、複数の機能をライトコインに実装します。
ミンブルウィンブルは、ライトコインの匿名性を強化してプライバシーを守る役割を担っています。具体的には、取引金額を公開しない「機密取引」や仮想通貨のミキシングを行う「CoinJoin」などをライトコインで利用できるようにします。特にCoinJoinは、複数のユーザーの取引を混ぜ合わせて、入出金の紐付けを断ちながら仮想通貨を送金するので、ユーザーのプライバシーを守る上で強力な機能になります。CoinJoinを利用するユーザーは、例えば1BTCを送金すると、他のユーザーが送金した同額分のビットコインをランダムに受け取ることができます。
ビットコインやライトコインなどのパブリックブロックチェーンでは、取引額やウォレットアドレスなどの取引情報が台帳に記録・公開されています。これらの情報だけで個人を特定することは難しいですが、仮想通貨を決済利用する上ではプライバシーを侵害する可能性があると懸念されています。
一方、拡張ブロックは、ライトコインブロックチェーンの負荷を軽減します。拡張ブロックは、メインチェーンと互換性のあるブロックチェーンとして機能し、必要に応じてライトコインにおける取引処理を引き受けることができます。これが現実のものとなれば、ライトコインは、より決済能力に長けたブロックチェーンとなる可能性があります。
匿名通貨とは、プライバシー性能に強みを持つ仮想通貨を指します。有名なものとしては、モネロ(XMR)、ジーキャッシュ(ZEC)、ダッシュ(DASH)などが挙げられますが、世界各国で仮想通貨規制が高まっていることを受けて、その普及が危ぶまれている状況です。実際に2021年以降は、多くの取引所が規制違反となることを懸念して、これら匿名通貨の取り扱いを停止しています。
このような背景から仮想通貨市場では、ライトコインがミンブルウィンブル拡張ブロックによるアップグレードを通じて、匿名通貨としての色を強めることを不安視する声も上がっています。これに対してライトコイン財団は、ミンブルウィンブル拡張ブロックが完全な匿名性を与えるわけではなく、その利用も規制への配慮からユーザーが選択する形で行うようになっていると説明しました。
ライトコイン財団が「規制準拠が求められる取引所などでも問題視していない」と言及しているのに加え、今の所、主要な取引所での取引停止なども報告されていないので、ひとまず匿名性の強化に関して大きな問題はないと考えられます。
現時点でライトコインは、100ドル付近で推移しています。直近では、仮想通貨市場全体の低迷による影響を受けて、2021年4月に記録した史上最高値の270ドルから約60%の下落を記録しました。多くの場合、ブロックチェーンの大型アップグレードは、仮想通貨価格にとってポジティブな材料となるため、ライトコインもミンブルウィンブル拡張ブロックをきっかけに再浮上することが期待されています。
画像引用:TradingView
ライトコイン(LTC)は日本国内の取引所でも購入できます。しかし無期限取引が可能で、資産の運用先も豊富であるBinance(バイナンス)やBybit(バイビット)などの海外取引所の利用がおすすめです。
日本語対応の海外取引所でのライトコインの取り扱い状況(USDT建て現物・デリバティブ)は下記の通りです。
取引所 | 現物 | デリバティブ |
Binance(バイナンス) | 〇 | 〇 |
Bybit(バイビット) | 〇 | 〇 |
Gate.io(ゲート) | 〇 | 〇 |
CoinEX(コインイーエックス) | 〇 | 〇 |
MEXC(メクシー) | 〇 | 〇 |
BingX(ビンエックス) | 〇 | 〇 |
Bitget(ビットゲット) | 〇 | 〇 |
Binance(バイナンス)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
Bybit(バイビット)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
Gate.io(ゲート)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
CoinEX(コインイーエックス)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
MEXC(メクシー)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
BingX(ビンエックス)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
Bitget(ビットゲット)
現物 | デリバティブ |
〇 | 〇 |
海外取引所は日本語対応が充実しているBybit(バイビット)がおすすめです。
当記事執筆時点で、まだミンブルウィンブル拡張ブロックの実装が決定したわけではないものの、ライトコインは新たな仮想通貨として生まれ変わろうとしています。最終的にライトコインは、日常的に決済利用可能なシステムを構築することを目標としていますが、仮想通貨市場で真価を発揮することはできるでしょうか。今後の推移を見守りましょう。
作成日
:2022.02.04
最終更新
:2023.03.16
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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