作成日
:2021.11.25
2022.04.20 12:08
2021年11月16日、国際機関であるFATFの勧告を受けて、日本はマネーロンダリング等に対応するために仮想通貨(暗号資産)規制を強化する方針であることが明らかになりました。
具体的には、規制対象者等が保有する仮想通貨の資産凍結や、仮想通貨交換業者の義務を新設するなどです。これに関して、仮想通貨関連メディアだけでなく報道機関も、更なる仮想通貨規制の可能性について報じています。また、SNS上では規制を心配する声が上がっていますが、現時点では一般的な仮想通貨取引にはほとんど影響がないと予想されています。
では、財務省の方針により、仮想通貨の規制はどのように変化していくでしょうか。
日本で仮想通貨が本格的に規制されたのは、2017年4月施行のいわゆる仮想通貨法からです。そこでは仮想通貨の定義など基本的な部分から規制されましたが、マネーロンダリング等の規制は2018年の財務省による発表から本格化しました。
これにより、仮想通貨は日本円などと同様に取り扱われるようになり、外国や非居住者への3,000万円を超える支払いや受け取りをした場合の報告が義務となりました。
3,000万円以下の取引は報告の義務がないので、外為法は個人投資家にとってあまり関係ないかもしれません。しかし、報告義務を怠ったり虚偽の申告をしたりすると、6ヶ月以下の懲役か50万円以下の罰金が課せられてしまうので、仮想通貨価格が高騰して取引額が予想外に大きくなってしまった際などに注意が必要です。
外為法とは、主に国内と外国の間の資金・財・サービスの移動について規制する法律です。なお、正式名称は「外国為替及び外国貿易法」です。
仮想通貨が登場して以降、仮想通貨の犯罪利用を抑止する取り組みが活発になっており、今年8月、FATFは第4次対日相互審査報告書と呼ばれる報告書を発行しました。この報告書で、日本は法整備状況と法律の運用状況について多数の項目で合格水準に達していないと結論付けられ、更なる規制環境の改善が求められる「重点フォローアップ国」に分類されています。
国際機関であるFATF(金融活動作業部会)は、欧米や日本、中国、韓国などの加盟国に対して統一的なルールを設けて、マネーロンダリング(犯罪組織などが資金の出所をわからなくする手段)やテロ資金供与(テロ組織などに資金を渡す行為)への対策に取り組んでいます。
これを受けて、財務省は外為法を見直す方針を打ち出しました。特に財務省は、仮想通貨やブロックチェーン技術の発展で違法な資金流出のリスクが高まっていることを懸念しており、仮想通貨関連の規制を強化する意向を示しています。
ちなみに、各国はFATFでの相互審査を経て3つのカテゴリーに分類されますが、結果は以下の通りです。
表はこちらからご覧ください。
分類 | 国名 |
---|---|
通常フォローアップ国 (3年後までに改善状況報告) |
スペイン、イギリス など8か国 |
重点フォローアップ国 (法令整備状況を毎年報告) |
アメリカ、日本 など19か国 |
観察対象国(1年以内に 顕著な進捗が必要) |
アイスランド、トルコ など3か国 |
また、FATF加盟国は下の地図の緑色部分です。加盟していない国も多数ありますが、FATFの勧告に基づいて地域ごとに相互審査する仕組みがあり、FATF勧告は世界200以上の国・地域で適用されています。
画像引用:財務省国際局「FATF第4次対⽇審査結果と外為法における対応」
今回、FATFの第4次対日相互審査報告書を受けて、財務省は大きく分けて3つの部分で外為法を見直すと発表しました。その変更点は以下の通りです。
外為法における資本取引規制とは、物やサービスの移転を伴わない対外的な金融取引を規制するものです。現在、資本取引規制では、テロ組織関係者や経済制裁国の団体や個人などの制裁対象者の資産を凍結し、資金供給を阻止する資産凍結措置が定められています。
今回、財務省は国連安保理事決議に基づく決定で、制裁対象者の仮想通貨を含むあらゆる資産の凍結に各国が対応していることから、仮想通貨を資本取引規制の対象に追加する考えを示しました。具体的には、銀行の預金取引と同様に、居住者と非居住者の間での仮想通貨取引を規制し、資産凍結措置を可能にすることを検討するとしています。
現在、銀行などの金融機関は、送金が制裁対象者に対するものでないことを確認する義務があります。しかし、仮想通貨交換業者は、仮想通貨の移転に際して同様の義務が課せられていません。
2019年6月に改訂されたFATFの勧告では、銀行に加えて仮想通貨交換業者も、制裁対象者への送金を遅延なく阻止できるよう求められています。これを受けて財務省は、仮想通貨交換業者にも銀行と同等の義務を課すことを検討するとしました。
ちなみに、FATFのレポートによると、仮想通貨関連の犯罪の大半がマネーロンダリングに集中していることがわかっており、国家が仮想通貨のマネーロンダリングに関与した例も報告されています。警視庁の報告によると、日本の取引所でも疑わしい取引の報告件数が増加しており、2020年にその数は2017年の10倍以上となる8,000件を超えているので、確認義務は仮想通貨関連の犯罪抑止に大きく貢献すると期待されています。
画像引用:財務省国際局「FATF第4次対⽇審査結果と外為法における対応」
現行の外為法では、条約その他の国際約束を履行するために必要などの場合に、資産凍結が可能です。
これに関して、FATFは国内銀行や取引所がFATFの基準に則って資産凍結できるよう国内規定を明確化すべき、と要請しています。また過去において、FATFは、大量破壊兵器の拡散に関与する者に対する資産凍結措置を事業者が適切に履行することを促すために、そのリスク評価やリスク低減措置を行うべきだと勧告しています。
財務省は見直しの方向性として、銀行や取引所がリスク評価やリスク低減措置を行うための基準を設けること、同基準の遵守状況を監視して指導や助言することを可能にすると発表しました。
今回、財務省は外為法を見直して、仮想通貨規制の強化方針を示しました。これにより仮想通貨市場の安全が確保される一方で、将来的に投資家が規制の影響を受ける可能性が危惧されています。
既に米国では、1万ドル以上の仮想通貨送金に報告義務が課せられるなど、一般投資家にも影響が及ぶ形で規制強化されています。日本でも、FATFと協調する形で仮想通貨規制が継続的に強化されていくと考えられているだけに、国内市場における規制環境の変化には注意を払う必要がありそうです。
出典元:
作成日
:2021.11.25
最終更新
:2022.04.20
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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