作成日
:2018.07.12
2022.01.28 10:51
7月9日より、EUにて第5次マネーロンダリング対策指令が施行された。匿名性の高い仮想通貨やプリペイドカードを使用したテロ資金供与を防止し、取引の透明性を高めることに焦点が当てられている。
新指令では、アンチマネーロンダリング(Anti-Money Laundering)【以下、AMLと称す】 とテロ資金供与対策の適用が、仮想通貨を所有、保管、送金するサービスを提供する事業体へ拡大されている。仮想通貨のアドレスやIDなどの情報を各国の金融情報部門で共有することで、国境を越えたマネーロンダリングや不正送金に対応する。
EUの委員会はAMLの監視を高めるべく、多数の銀行監視機関を設立したが、EU中央銀行の監督委員長であるDanièle Nouy氏によると、規制当局には銀行のライセンスを取り消す権限がなく、金融情報機関との協力が不十分であるため、犯罪者は国外に不正資金を隠蔽することができるようだ。
一方、最近ラトビア、エストニア、マルタ島における銀行関係者のスキャンダルが続いている。仮想通貨事業に前向きなマルタ島へは、EU市場での取引を希望する仮想通貨ビジネス関係者が多く参入しているが、先日はPilatus Bankの会長がFBIに逮捕されており、AML当局とEU中央銀行との情報共有を主軸にした新しい規制は、すでに時代遅れではないかとの声も上がっている。また、仮想通貨市場の流れの速さに規制の制定が追い付いていないとの意見もある。
EU加盟国はこれより18カ月以内に新指令を遵守する必要があるが、加盟国の3分の2においては、2015年に施行された第4次AML対策指令が遵守されていないという。EU議員のSven Giegold氏らはより集中した権限制定に言及するなど、一部の関係者は早くも新指令の改正を求めているが、今後、新指令が仮想通貨市場にどのような影響を与えるのか注目していきたい。
release date 2018.7.12
作成日
:2018.07.12
最終更新
:2022.01.28
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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