作成日
:2022.06.17
2022.06.23 16:20
2022年6月、エルサルバドルの債務不履行の可能性に注目が集まっています。エルサルバドルは、ビットコイン(BTC)を法定通貨に採用し、その後、ビットコイン価格は暴落しました。それを受けて、エルサルバドルは国債の利払いができるかどうか、仮想通貨コミュニティで注目を集めつつあります。
エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は仮想通貨擁護派であり、ビットコインを法定通貨にして国内で普及させてきました。では、現在はどんな状況にあるでしょうか。当記事では、同国の現状と債務不履行の可能性について解説していきます。
2021年9月、エルサルバドルは、ビットコインを法定通貨として制定しました。それ以来、ビットコインを10回にわたって購入し、4万5,171ドルの平均購入価格で合計2,301BTCを保有しています。また、ビットコイン価格が下落すると追加で購入しており、直近では2022年5月10日に500BTCを購入するなど、依然として積極的に買う姿勢です。
しかし、エルサルバドルの期待とは裏腹に、ビットコイン価格は大きく下落しています。ビットコイン価格は、2021年11月に史上最高値を記録して以降、継続的に下げ続けており、当記事執筆時点(2022年6月)で2万ドル付近まで下落しています。これに伴って、エルサルバドル保有のビットコインの資産価値も大きく目減りし、約1億ドルあった評価額が概ね半減しました。
画像引用:CoinMarketCap
この事態を受け、エルサルバドルの財政の健全性を損ないかねないとの懸念が持ち上がっています。しかし、アレハンドロ・ゼラヤ財務大臣は、「そのリスクは極めて小さい」と一蹴しました。加えて、資産価値減少分の4,000万ドルは国家予算の0.5%に満たないことを示しつつ、今後もビットコインを売却する意思がないことを明示しました。
2023年1月、約8億ドルの国債が償還を迎えます。市場では、50%程度の確率で債務不履行に陥るとの見方が広がっています。この点に関して、ゼラヤ財務大臣は、絶対に返済を続けると主張し、債務不履行リスクはゼロだと強調しています。ところが、エルサルバドルは外貨準備が乏しく、財政赤字は拡大、経済成長は低調です。これに関して、エコノミストのリカルド・カスタネダ氏は、「現時点で、償還に必要な資金を準備できる保証はない」とコメントしています。
また、大手格付会社は、こぞってエルサルバドルの信用格付けを下げています。例えば、S&P Global Ratingsは、エルサルバドルの国債を「CCC+」としました。Fitch Ratingsは、「CCC」としました。その理由として、エルサルバドルがビットコインを法定通貨に採用し、国際機関からの資金調達が難しくなったことを挙げています。その他、ムーディーズは「Caa1」に格下げしています。
金融市場には格付会社が存在し、国債や社債などの信用を評価しています。格付の基準は格付会社によってまちまちですが、基本的にA、B、Cのアルファベットでランク分けして信用度を表現します。一般的に、BBB以上が投資対象として適しているとされています。すなわち、BB+以下はリスクが高いことを意味します。
下のグラフは、Fitch Ratingsによる各年末時点の格付の推移を示したものです。グラフの左端の格付は「BB+」であり、これはBBBよりも2段階低い格付です。すなわち、ビットコイン購入が低格付の直接的な理由でないことが分かります。
一方、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究員フランク・ムチ氏は、2023年中に債務不履行に陥らないだろうと予想しています。ブケレ大統領は議会や国民から圧倒的な支持を得ており、債務残高を減らす姿勢を見せれば、IMF(国際通貨基金)から資金を受けて返済できるかもしれないからです。しかし、ブケレ大統領が政権を握ってから大量の国債が発行されていることを指摘し、約8億ドルが償還となる2025年の債務不履行を警告しました。
下のグラフは、エルサルバドルの一般政府債務の対GDP比を示しています。1990年代から一貫して、債務比率が上昇している様子が分かります。また、2020年に角度が大きくなっていることも分かります。新型コロナウイルス問題や急激な物価上昇がどのように影響するか、予断を許さない状況です。
画像引用:IMF
エルサルバドルは、2022年中に最初のビットコイン債発行を予定していました。ビットコイン債とは、年利6.5%の配当に加えて、ビットコイン価格上昇による利益の50%還元を約束した10年債です。ビットコイン債で10億ドルを調達後、「ビットコイン・シティ」の建設費用とビットコインの追加購入に投入する予定でした。しかし、仮想通貨市場の低迷やロシアとウクライナの紛争を理由に、見送りを決定しています。
国債の格付が引き下げられる中、より低い金利で効率的に資金調達できる可能性があっただけに、エルサルバドルにとっては残念な結果となりました。
ビットコイン・シティとは、ブケレ大統領が考案した都市です。地熱発電で電力を供給すると同時に、都市の維持費の一部をビットコインマイニングの利益で賄うことが特徴です。
エルサルバドルのエコノミストであるアルバロ・トリゲロス・アルゲロ氏は、「政府が念頭に置いているのは、最初のビットコイン債が成功した場合、同様の債券を追加発行して国家予算の不足を解消できるということだ」と推測しています。これに関してゼラヤ財務大臣は明言を避けましたが、IMFとの交渉が決裂して更に資金調達が難しくなる場合には、ビットコイン債発行が現実的な選択肢になるかもしれません。
エルサルバドルは、海外の出稼ぎ者からの国際送金受け入れが多く、その金額はGDPの15%から20%を占めます。国際送金をするには、銀行に支払う手数料が必要です。ビットコインを法定通貨とした理由の一つには、この手数料の削減もあります。しかし、価格変動の激しさやインフラ整備の問題などから、法定通貨としての普及はあまり進んでいない模様です。
Hamilton Investment ManagementでCEOを務めるウィリアム・ジェ氏は、エルサルバドルのビットコイン法定通貨化に関して「例外的で将来のモデルにはなり得ない」と否定的です。過去、エルサルバドルには独自の法定通貨がありました。「コロン」です。しかし、現在では事実上使用されておらず、米ドルが流通しています。米ドルの方が安定しているためです。ビットコインも、同じ運命を辿るでしょうか。今後の推移に注目しましょう。
作成日
:2022.06.17
最終更新
:2022.06.23
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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