作成日
:2022.05.30
2023.04.01 20:34
2022年4月20日、Bybit(バイビット)がレバレッジトークンのサービスを開始しました。このサービスを利用すると、「レバレッジのかかった金融商品を現物取引で購入する」という形でレバレッジ利用が可能になります。
現物取引の形式で購入するため、強制決済のリスクがなく、シンプルでわかりやすいというメリットがあります。一方、「リバランス」という仕組みにより値動きは複雑になります。
Binance(バイナンス)などがすでにサービスを提供しており、Bybitは後を追う形となったこのサービス。仕組みやリスク、取引方法などを紹介します。
レバレッジトークンとは金融商品の一種で、その名の通り、レバレッジを効かせたトークンです。最大の特徴は、現物取引の形式で保有する点です。
例えば、レバレッジ3倍のトークンの場合、ビットコイン(BTC)価格が1%値上がりすると、トークンの価格は3%値上がりします。そして、逆も同様です。これを図で確認しますと、下の通りです。BTC/USDTの値動きの3倍になっている様子が分かります。
Bybitでは、このトークンの名称はBTC3Lとなっています。すなわち、BTC/USDTの値動きが3倍になるトークンです。名称の最後にあるLは、買い(=long)を意味します。
なお、レバレッジトークンには、BTC/USDTの価格が下がると上昇する金融商品もあります。そのイメージは下の図の通りです。BTC/USDT価格が下落すると、その3倍の上昇になっている様子が分かります。
Bybitでは、このトークンの名称はBTC3Sとなっています。すなわち、BTC/USDTの値動きの逆方向に3倍になるトークンです。名称の最後にあるSは、売り(=short)を意味します。
トークン名称 | BTC上昇時 | BTC下落時 |
BTC3L | 上昇 | 下落 |
BTC3S | 下落 | 上昇 |
BTC3L
BTC上昇時 | 上昇 |
BTC下落時 | 下落 |
BTC3S
BTC上昇時 | 下落 |
BTC下落時 | 上昇 |
一般的な現物取引では、取引対象のトークン価格が上昇すると利益になり、逆に価格が下落すると損になります。しかし、レバレッジトークンの場合は、BTC/USDTが下落すると利益になる取引も可能です。
さらに、レバレッジトークンは現物資産ですから、無期限契約取引のように証拠金を用意する必要もなければ、強制決済に遭うリスクもありません。現物取引に似た手軽さで、積極的に利益を狙える金融商品です。
レバレッジトークンと無期限契約取引の違いは、以下の通りです。
レバレッジトークン | 無期限契約取引 | |
証拠金 | 不要 | 必要 |
---|---|---|
レバレッジの倍率 | 2倍〜4倍に収まるよう 自動調整 |
自分で設定 |
強制決済 | なし | あり |
取引の種類 | 現物取引 | デリバティブ取引 |
適している相場 | 一方向に強く動く相場 | ボラティリティの高い相場 |
証拠金
レバレッジトークン | 不要 |
無期限契約取引 | 必要 |
レバレッジの倍率
レバレッジトークン | 2倍〜4倍に収まるよう自動調整 |
無期限契約取引 | 自分で設定 |
強制決済
レバレッジトークン | なし |
無期限契約取引 | あり |
取引の種類
レバレッジトークン | 現物取引 |
無期限契約取引 | デリバティブ取引 |
適している相場
レバレッジトークン | 一方向に強く動く相場 |
無期限契約取引 | ボラティリティの高い相場 |
レバレッジトークンは証拠金が不要なため、デリバティブ取引が難しいと感じる人にとって選択肢になります。
レバレッジトークンの取引では、通常の現物取引と同様に購入価格が決まっており、その価格で購入すると、現物ウォレットから購入額が差し引かれます。デリバティブ取引で発生する可能性のある損失リスクを、取引開始時にあらかじめウォレットから差し引く仕組みなので、強制決済が発生しないのです。
もしレバレッジ3倍でデリバティブ取引を行う場合、価格が33%下落すると強制決済されて、証拠金が0になります。しかし、レバレッジトークンは強制決済がないため基本的には0にならず、再度値上がりした際には利益を得ることも可能です。
さらに、相場が期待通りに動いた場合は、デリバティブ取引をしたときよりも高い利益を出すこともできます。
レバレッジトークンの基本のレバレッジ倍率は、3倍です。そして、2倍~4倍の範囲を外れると、3倍に戻るように調整されます。この調整をリバランス機能と呼びます。
例えば、自分が買い持ちしているレバレッジトークン価格が上昇すると、含み益が増えて投資元本が増加します。すると、レバレッジが小さくなりますので、ポジションを追加してレバレッジを3倍に戻します。含み益になるとポジションを追加、すなわちピラミッディングを自動で実行します。
逆に、自分が買い持ちしているレバレッジトークン価格が下落する場合、含み損が増えて投資元本が減少します。すると、レバレッジが高くなりますので、ポジションを減らしてレバレッジを引き下げます。その後に価格が反転上昇すれば、含み益になる可能性があります。
ユーザーは現物取引でレバレッジトークンを買います。そして、そのレバレッジトークンは、Bybitが別途実行しているデリバティブ取引の値動きを反映します。この2段階の仕組みにより、現物取引でレバレッジの利用が可能となります。
レバレッジトークンには、レートを参照している仮想通貨そのものとは異なる独自の価格が設定されています。ビットコインのレバレッジトークンの場合、値動きはビットコイン価格と概ね連動しますが、上記のリバランス機能のため、完全には一致しません。
2022年5月時点では、ビットコインのレバレッジトークンは1枚数ドル~数十ドル(USDT)の価格帯で推移しています。
どのような金融商品にも、メリットとデメリットがありますので、確認しましょう。
リバランス機能を踏まえますと、レバレッジトークンは一方向に強く動く相場で有効だといえます。リバランスの際にポジションを追加しますので、通常のデリバティブ取引よりも大きな利幅を得られます。
逆に、荒れた相場には向いていません。
例えば、価格が大きな上昇や下落を繰り返し、数日後に購入時の価格に戻る場合、通常のデリバティブ取引の収支はゼロです。しかし、レバレッジトークンにはリバランス機能があります。相場が乱高下する中でリバランスが発生した場合、トークンと紐づいているポジションの量が購入時から増減します。これにより、仮に価格が購入時と同じ水準に戻ったとしても、レバレッジトークンを買っていた場合は損失が出る可能性があります。
急激な価格変動が起こった場合にはリバランスが間に合わず、純資産が0になる可能性もあります。レバレッジトークンを購入する際は、これらの特徴をよく理解しておく必要があります。
リバランス機能により、価格が不利になったときはトークンと紐づいているポジションの量が減り、有利になったときは増えます。
これは、自動で損切りや買い増しをしていることになります。このため、デリバティブ取引のリスク管理が苦手な人には向いている商品といえるでしょう。
レバレッジトークンの購入価格以上のリスクが発生する可能性もありません。
一般的に、フロントランニングとは「取引所等が顧客から注文を受けた際、顧客の注文を執行する前に、先回りして自社の取引をすること」を指します。今回の場合は少々意味が異なり、「アルゴリズムがリバランスを利用して稼ぐこと」を指します。
例えば、BTC/USDT価格が大きく上昇し、レバレッジトークンで大幅なリバランスが起きるとします。すなわち、レバレッジ調整のためにポジション数量が大きく動きます。アルゴリズムがその瞬間を狙って先に売買すれば、利食いを狙えるかもしれません。これがフロントランニングです。
フロントランニングが大規模に起こると、リバランスする際に不利な価格で約定させられます。このため、Bybitは、フロントランニングが起きる場合にレバレッジトークンの取扱いを停止する可能性がある旨を告知しています。
フロントランニングはレバレッジトークン特有のリスクとなっています。
以下、レバレッジトークンを購入する手順を解説します。
画面上部のバナーにある「現物」にカーソルを合わせます。プルダウンメニューが表示されますので、「現物取引」にある「レバレッジトークン」をクリックし、銘柄を選択します。ここでは、例としてBTC3Lを選択します。
初めてレバレッジトークンの取引画面を開く場合は、リスクを知らせるポップアップが表示されます。「レバレッジトークンのリスクを受け入れて、利用を始める」をクリックします。
トークンの購入手順は、他の現物資産を購入するときと同じです。画面右の注文画面で買いを選択し、指値注文か成行注文かを選びます。指値注文の場合は購入する価格と数量を、成行注文の場合は数量を入力し、「BTC3Lを買う」をクリックします。なお、レバレッジトークンの最小購入数は10枚です。
最後に注文の確認画面が現れるので、「BTC3Lを買う」をクリックすれば取引完了です。
レバレッジトークンは、現物取引の形式でありながらレバレッジをかけた状態で取引ができる金融商品です。証拠金や強制決済を気にすることなく取引できるため、仕組みはシンプルです。
しかし、仮想通貨の値動きにある程度連動はしますが、リバランスの影響により値動きの予想がしづらい傾向があります。
レバレッジトークンの恩恵を受けられるのは、主に短期のトレンド相場です。長期保有すると、レバレッジトークンはクセがありますので、取引前に仕組みを理解することが大切です。
作成日
:2022.05.30
最終更新
:2023.04.01
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