作成日
:2023.03.29
2023.03.29 16:00
スパンモデルはFXで主に使われるテクニカルインジケーターの1つです。一目均衡表をベースに日本人投資家によって考案されたインジケーターであり、今もなお多くの利用者に支持されています。しかしスパンモデルには「勝てない」という噂が存在するのも事実です。
この記事では、スパンモデルを検証するために、実際のチャート画像を用いて、スパンモデルの基本的な使い方や設定方法、具体的なトレード手法について解説します。
スパンモデルは、元証券ディーラーである「マーフィー」こと、柾木利彦さんが考案したテクニカルインジケーターです。スパンモデルは一目均衡表をベースに作られたインジケーターであり、その見た目は一目均衡表に似ています。
スパンモデルは以下の3つのラインで構成されており、それぞれのラインとロウソク足の位置の関係性を使ってトレード指標にします。
スパンモデルで表示されている3つのラインでは、以下のようなトレンドや特徴を読み取ることができます。
線の名称 | 読み取れるトレンドの時間軸 | 特徴 |
---|---|---|
青色スパン | 短期トレンド | ローソク足との関わりで相場の方向性が分かる |
赤色スパン | 長期トレンド | 線の向きで上昇、下落いずれかのトレンド発生を察知する |
遅行スパン | 中期トレンド | ゾーンの上なら上昇トレンド、下なら下落トレンド、それ以外はレンジ相場を表す |
青色スパン
読み取れるトレンドの時間軸 | 短期トレンド |
---|---|
特徴 | ローソク足との関わりで相場の方向性が分かる |
赤色スパン
読み取れるトレンドの時間軸 | 長期トレンド |
---|---|
特徴 | 線の向きで上昇、下落いずれかのトレンド発生を察知する |
遅行スパン
読み取れるトレンドの時間軸 | 中期トレンド |
---|---|
特徴 | ゾーンの上なら上昇トレンド、下なら下落トレンド、それ以外はレンジ相場を表す |
青色スパンと赤色スパンに挟まれた、一目均衡表での雲のような部分は、スパンモデルでは「ゾーン」と呼ばれます。スパンモデルをFXで利用する際は、ゾーンとローソク足、遅行スパンの位置を利用してトレード戦略を立てていきます。
スパンモデルは一目均衡表をアレンジして考案されたものであるため、見た目は似ていますが、インジケーターを構成する要素が異なります。スパンモデルと一目均衡表の違いを以下の表でまとめています。
構成要素 | |
スパンモデル |
・青色スパン
・赤色スパン
・遅行スパン
|
一目均衡表 |
・転換線
・基準線
・先行スパン1
・先行スパン2
・遅行スパン
|
スパンモデルは、インジケーターで表示される要素が一目均衡表よりも少なく、シンプルなテクニカルインジケーターです。スパンモデルの青色スパンが一目均衡表での先行スパン1、赤色スパンが先行スパン2、遅行スパンが遅行スパンに該当すると考えると分かりやすいでしょう。
スパンモデルと一目均衡表の違いは、インジケーターが重視している時間軸にあります。
一目均衡表は、先行スパンという未来の値動きを予測するラインを使っていることからも、今後の相場を予測することを重視しています。一方でスパンモデルは現在の相場価格を重視しているという点で異なります。
したがって、スパンモデルは、一目均衡表よりも現在価格への反応性が高いことで知られており、スキャルピングなどの短期トレードにも適しています。
スパンモデルは、MT4/MT5に標準で搭載されていないインジケーターであるため、別途ダウンロードする必要があります。スパンモデルは、GogoJungle(ゴゴジャン)などのEAやインジケーターを提供、販売しているサイトでダウンロード可能です。
ダウンロード後、以下の手順でスパンモデルをMT4/MT5で利用できるようになります。
詳しくは以下のインジケーターのインストール方法の手順を参考にしてください。
価格への反応性の高さがスパンモデルの強みであるため、スパンモデルを利用する際は、デフォルトで設定されている数値を変えないことがオススメです。スパンモデルでは、「Tenkan」が9、「Kijun」が26、「Senkou」が52がデフォルトの設定となっています。
なお、チャートツールによっては色の変更も可能ですが、スパンモデルでは「青色スパン」「赤色スパン」といったように、スパンモデルを構成する要素の名称に色の名前が使われています。そのため、使い方を間違わないためにも、使い方に慣れるまでは描画色も変更しないようにしましょう。
スパンモデルを実際に取引でどのように使えばよいのか、チャート画像を用いてみていきましょう。
2022年7月28日頃からローソク足は右肩上がりの形状になり、それとともに青色スパンもローソク足の下に位置しながら右肩上がりになっています。また同時期の遅行スパンが、ローソク足よりも上で推移していることから、上昇トレンドであると判断できます。
実際に相場はゾーンの上を推移しながら上昇し、10月26日に天井をつけるまでほとんどゾーンの中に入ることなく上昇を続けました。そして10月4日頃に遅行スパンが雲の中に入った後で上昇トレンドが終了しています。
ローソク足と遅行スパンが共にゾーン上抜けていることを確認してエントリーし、遅行スパンがゾーンを下回った際に、決済をすればトレードがうまくいっていたことがわかります。
10月後半に天井をつけた後、相場は下落トレンドに転じ、今度はローソク足と遅行スパンがゾーンの下で推移しています。遅行スパンがゾーンを突き抜けるまでローソク足はほとんど雲に入ることなく、青色スパンに上値を押さえつけられる形で下落しているのが分かります。
この場合、ゾーンの反転で下落トレンドを察知してから遅行スパンがゾーンに突入するまで売りシグナルが点灯していました。したがってシグナルにしたがって売りのエントリーをしていれば勝てていたことになります。
このように2つのトレンド相場でいずれもスパンモデルは機能しており、正しく利用すれば「勝てない」わけではないことが検証によって明らかになりました。もっともこれは一部の例であってすべての相場で通用するわけではありませんが、トレンド相場での優位性はあるといえます。
スパンモデルは、トレンドの発生や転換を察知することに優れたテクニカルインジケーターであり、以下の2つのトレード手法が可能です。
スパンモデルでは、ローソク足と遅行スパンがゾーンの上で推移していると、上昇トレンドが発生していると判断できます。その場合はゾーンの上限(青色スパン)にローソク足がタッチしたところで押し目買いをする戦略が有効です。
上昇トレンドが継続している中で、一度だけ雲の上限(青色スパン)にタッチしている場面があります。ゾーンでの反発、ローソク足と遅行スパンがいずれもゾーンの上にあることを確認して、買いエントリーをします。実際に、相場は再びゾーンの上に戻り、上昇トレンドが継続しました。
下落トレンドでも、同じ手法が機能します。ゾーンの下限(青色スパン)で上値を抑えられている場面で反発を確認し、売りエントリーをすることで、下降トレンドに乗ることができます。
スパンモデルで押し目買い、戻り売りをした場合、利益確定の目安は、遅行スパンがローソク足と交差した場所、または遅行スパンがゾーンを抜けた場所になります。
スパンモデルでは、ゾーンがねじれて色が変わった時がトレンド転換のシグナルとなります。ゾーンのねじれを使うことで、トレンド転換を狙ったエントリーが可能です。
2022年8月19日頃、ゾーンがねじれて赤色から青色に変化し、トレンド転換のシグナルが発生しました。また遅行スパンがゾーンの上にあることから上昇トレンドに転換する可能性が高いと判断できるため、トレンド転換を狙った買いエントリーができます。
また10月後半に一度天井をつけた後、青色だったゾーンが赤色に転じました。さらに遅行スパンがゾーンの下に位置していることから、上昇トレンドが下落トレンドに転じていると判断できるため、トレンド転換を狙った売りエントリーができます。
このようにゾーンのねじれをトレンド転換のシグナルとして利用する際は、ゾーンがねじれて色が変わった場所がエントリーポイントになります。
トレンド転換を狙ったトレードで大きな値幅を狙うのであれば、再びゾーンがねじれた時が利食いの目安になります。しかし大きな値幅を狙いすぎるのはリスクも高くなるため、ローソク足がゾーンにタッチしたところで細かく利食いしてもよいでしょう。
スパンモデルは、トレンド相場やトレンドの転換で機能するインジケーターです。スパンモデルをFXに活用する2つのメリットを紹介します。
スパンモデルは、インジケーターの構成要素がシンプルで視覚的に分かりやすく、チャート上に表れているシグナルを簡単に売買戦略として利用できます。売買シグナルを理解するのにあまり時間を要しないため、初心者にも使いやすいというメリットがあります。
またチャート上に現れたシグナルに従って、忠実にトレードができるため、曖昧な部分が少なく、人間の主観が入りにくいこともメリットといえます。
トレンドの転換点でエントリーすることができれば、狙える利幅も大きくなります。スパンモデルは、トレンドの順張りだけでなく、トレンドの転換の察知にも優れているインジケーターであるため、大きな利益を狙えるチャンスは多くなるでしょう。
スパンモデルは、視覚的に分かりやすくトレンドや相場の転換点を把握できるインジケーターですが、利用する際には2つの点に注意する必要があります。
スパンモデルは、トレンドの発生や転換を察知することに長けていますが、その逆にトレンドが発生していないレンジ相場では機能しないことが多々あります。
上記のポンド円のチャートでは、スパンモデルの各要素が絡み合って、スパンモデルのメリットである「視覚的な分かりやすさ」が発揮されていません。このようにレンジ相場では、売買シグナルを見つけるのが難しいだけでなく、不正確なシグナルも多いため、スパンモデルはトレンド相場でのみ通用するものであることは覚えておきましょう。
スパンモデルでは、遅行スパンとゾーンの位置関係から、新規エントリーや決済のシグナルを読み取ります。しかしシグナルの発生が必ずしも相場の動きと一致していないことがあります。特に利食いの部分で、スパンモデルは早めにシグナルを発する傾向にあるため、実際には決済後もトレンドが継続することがあるのです。
上昇トレンド中に遅行スパンがゾーンと交差する部分、下落トレンド中に遅行スパンがゾーンと交差している部分が利食いポイントであると解説してきました。しかし、決済シグナル発生後も両トレンドは継続しています。
このようにスパンモデルは、早めに利食いのシグナルを発してしまうため、利幅が少なくなってしまいます。しかし利幅が減ってしまうことは、デメリットであるとは考えないほうが賢明です。「頭と尻尾はくれてやれ」という相場格言があるように、欲張りすぎず確実に利益を取っていくことが重要です。
スパンモデルは「勝てない」という噂がネット上では見られます。しかし実際のチャートで確認した結果、スパンモデルは、特にトレンド相場で押し目買いや戻り売りをしたり、相場転換を見極める際に有効であることがわかりました。
しかしレンジ相場では機能しない場面が多いため、相場環境を正確に把握する必要があります。そのためスパンモデルを利用する際は、上位足を確認したり、トレンド相場が把握できる他のインジケーターを利用してみるとよいでしょう。
スパンモデルは、相場環境の把握に役立つスーパーボリンジャーバンドというインジケーターと共に利用することが推奨されています。スーパーボリンジャーは、ボリンジャーバンドに一目均衡表の「遅行スパン」を加えて作られたインジケーターです。ボリンジャーバンドの偏差を1、2、3に変えて3回表示、加えて期間1、-21シフトさせた移動平均線を表示することで自作可能です。
作成日
:2023.03.29
最終更新
:2023.03.29
FXトレード歴7年で、海外FX業者の利用経験が豊富。テクニカル分析を用いた短期トレードが得意で、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA)を取得。テクニカル分析からFX業者比較まで、FX関連の幅広い記事の執筆を行う。
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